第 7 章 蜘蛛の糸の SHG 顕微像観察 125
7.3 蜘蛛の糸の SHG 顕微鏡観察
7.3.2 蜘蛛の牽引糸の SHG 顕微鏡観察
肉眼で一本に見える牽引糸は一対の糸疣から分泌されるので、光学顕微鏡で観察 すると二本に見える(図7.5)。図7.5(a)の白色光照明顕微像は上下の二本が平行で、
(b)はねじれていることがわかる。この牽引糸からも初めてSHGが観測された。こ のSHG信号の入射光偏光依存性を調べた結果を図7.6と図7.7に示す。図7.6で400 nmのSHG信号の入射光偏光依存性を調べるとき、図7.5(a)のようなねじれのない 試料を対象として観察した。牽引糸からの波長438 nmの2PEF信号は弱く、画像 はとれなかったので、図7.6で観察されるシグナルはすべてSHGである。観察側は 偏光は選んでいない。
Fig. 7.5 COMSカメラで撮られた白色光照明における二組の牽引糸の透過光明視野光学顕微像。肉 眼で一本に見える糸は実はペアとなる糸疣から分泌され、顕微鏡観察において二本に見える。(a)上 下に平行な二本。(b)ねじれている二本。Reprinted with permission from ref [112]. Copyright 2017 by the Springer-Verlag GmbH Germany.
Fig. 7.6牽引糸におけるSHG像の入射光偏光依存性。励起光パワーは80 mW,照射面積6 mm2で、
400 nmのバンドパスフィルターでSHGを選択した。対物レンズは20倍で、NA = 0.46. 入射光の 偏光は1/2波長板で時計回りで15◦ずつまわした。II-CCDカメラで各偏光角度におけるSHG像を とった。観察側は偏光は選んでいない。入射光の偏光は繊維軸と垂直な方向は0◦と定義した。SHG 顕微像は偏光の回転の順序(0◦-180◦)で、左側に回転角と図表示を示した。また、偏光依存性の場所 依存性を分析するために繊維軸方向で6つの区間I-VIに分けた。Reprinted with permission from ref [112]. Copyright 2017 by the Springer-Verlag GmbH Germany.
Fig. 7.7図7.6で分けられた区間におけるSHG強度の入射光偏光依存性の極グラフ。上段の極グラ
フは上の一本、下段の極グラフは下の一本の偏光依存性である。0◦-180◦は実測値で、180◦-360◦に おける偏光は0◦-180◦と等価なので、0◦-180◦のコピーである。Reprinted with permission from ref [112]. Copyright 2017 by the Springer-Verlag GmbH Germany.
図7.6は、入射光の偏光は1/2波長板で時計回りで15◦ずつまわして、II-CCDカ メラで各偏光角度における牽引糸のSHG像である。入射光の偏光は繊維軸と垂直 な方向は0◦と定義した。SHG顕微像は偏光の回転の順序(0◦-180◦)で、左側に回転 角と図表示を示した。また、偏光依存性の場所依存性を分析するために繊維軸方向 で6つの区間I-VIに分けた。図7.6を見ると、上下の二本のSHG強度は場所に依 存することがわかる。例えば、90◦の像に注目する。左の区間Iから右の区間VIに いくにつれ、上の一本のSHG像は徐々に現れることがわかる。一方、下のSHG強 度は区間Iから区間VIに行くにつれ、徐々に強くなって、中央の区間IIIと区間IV において一番強くなり、中央を過ぎてまた徐々に弱くなる。つまり、上下二本の糸 において、場所によって、SHGの平均強度が変化する。
次に、入射光偏光の関数で見る。区間VIを0◦から180◦への順でみると、上の 一本のSHG像は0◦においてほぼ現れていないが、偏光角度を増やしていくと徐々 に現れてきて、90◦において一番あかるくなる。90◦をすぎてまた徐々に弱くなり、
180◦で消える。一方、下の一本のSHG強度は、0◦から180◦に行くにつれて、だん だん弱くなり、90◦で一番暗くなる。90◦をすぎてまた徐々に強くなり、180◦で強く なる。
図7.7は、サンプリングした区間Iから区間VIにわたって、上下二本それぞれに おけるSHG強度の入射光偏光依存性を極グラフで示したものである。まず上段の 上の一本については、極グラフのパターンは左の区間Iから右の区間VIにいくに つれ、パターンがだんだん丸くなって、最後の区間VIにおいて、ちょうど区間Iを 90◦回転したようになっていることがわかる。次に下段の下の一本については、極 グラフのパターンは左の区間Iから右の区間VIにいくにつれ、区間IIIまで上下が 伸びていき、区間IVからまた縮んでいた。一方、区間IVや区間Vにおいて、横方 向が太くなったことがわかる。
また、図7.6の区間IIIとIVおいて、数マイクロメートルサイズのSHGスポッ トが上の一本に観察された。それらのSHGスポットの強度も入射光偏光に依存し た。その三つのスポットのSHG強度における極グラフを図7.8に示す。
Fig. 7.8図7.6に示した三つのSHGスポットA, B, CにおけるSHG強度の入射光偏光依存性の極 グラフ。0◦-180◦は実測値で、180◦-360◦における偏光は0◦-180◦と等価なので、0◦-180◦のコピー である。