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第 4 章 フェムト秒パルスレーザー SHG 顕微鏡システムの性能評価 61

5.1 サクラン

5.1.3 サクランの金属吸着性

サクランにおけるウロン酸や硫酸基はアニオン性を示し、1分子鎖には10万個 のマイナス電荷が存在していることから、金属イオン、特に3価の金属イオンを効 率よく吸収できる[53, 57]。濃度が0.5 wt%のサクラン水溶液をインジウムイオン の水溶液(0.01 M)中に滴下すると、一瞬で液滴が固まりゲルビーズが形成された

[59]。アルギン酸水溶液をカルシウム水溶液中に滴下すると、似たようなゲルビー ズ化現象が起こる。したがって、この現象は金属イオンがサクランの多糖鎖に吸着 したときに生じる現象である。しかし、サクランはカルシウムイオン水溶液中では ゲルビーズは形成しなかった[59]。逆に、0.5%のアルギン酸を103 Mのインジウ ム水溶液中に滴下してもゲルビーズは形成しなかった[59]。

 サクラン水溶液をNd3+やIn3+などの3価の金属イオン水溶液に滴下すると、非 常に低いイオン濃度の溶液中で強固なゲルを形成した。サクランと同じアニオン性 多糖類であるアルギン酸において、同じ条件でゲルの形成は見られなかった。一方、

同じ条件でサクラン水溶液をCa2+やFe(II)2+などの2価の金属イオン水溶液に滴 下したら、ゲルの形成は見られなかった。したがって、金属とサクランの組み合わ せには相性があり、原子番号の大きな金属イオンを効率よく吸着し、特に3価の金 属イオンに対し吸着特異性を有することがわかった。

Fig. 5.5各濃度のサクラン水溶液から得られたゲルビーズ. Reprinted with permission from ref [59].

Copyright 2009 by the American Chemical Society.

 さらに、サクランの濃度とゲルビーズ形成の関係を調べるため、サクラン濃度と しては0.05%、0.075%、0.10%、0.33%、0.50%、0.75%、1.00%のものを102 Mの 塩化インジウム水溶液中に滴下した結果が図5.5である。Normalは偏光を特定しな

い可視画像であり、CLは直交ニコル(光路に偏光子を加え、偏光子を直交するよう に検光子を挿入し、サンプルを偏光子と検光子の間に置いて観察をすること)下に おける像である。0.33%以上の濃度のサクラン水溶液を滴下したときのみ瞬時にゲ ルビーズが形成された。0.10%以下の濃度の時には滴下後の10分後に目視としては 完全に均一になったように見えたが、二日後に観察すると小さい粒が形成された。

ゲル化を示すサクランの臨界濃度は0.10% - 0.33%の間にあることがわかった。これ は液晶発現における臨界濃度に近い値である。図5.5の中段の濃度が0.50%、0.75%

の写真における模様は、液晶による透過光の位相変化によるものである。これはゲ ルビーズの中でサクランが液晶状態のまま瞬時に形成し、その配向性は保たれるこ とを示している。一方、下段の低濃度のときの不定型な沈殿の写真には、透過光の 位相変化を観察されなかったので、液晶構造は一度崩壊し、その後ゆっくりと凝集 し、沈殿物となって現れたものと考えられる。したがって、ゲルビーズ形成はサク ラン水溶液の濃度に依存し、高い濃度においては液晶状態のまま瞬時に形成する。

以上により、金属イオンの吸着におけるゲルビーズ化はサクランの液晶構造と密接 に関係すると考えられる。

 図5.6に示すように、サクラン液晶構造中で整列したサクラン分子鎖の隙間に金 属イオンが入り込む形で、液晶の螺旋構造はポケットとなって、金属イオンを捕獲 する。液滴が架橋されてゲルビーズが形成されたと考えられる[59]。

Fig. 5.6液晶の螺旋構造よりできた金属イオンをキャッチするポケット. Reprinted with permission from ref [59]. Copyright 2009 by the American Chemical Society.

三価イオンは一価イオンよりも静電気力が高い。一方、原子番号でサイズが違う ので表面電位はそれぞれ異なる。したがって、三価の中でも付着しやすいものとそ うでないものがある。例えば、文献[60]では希土類の4ツ組効果を見出している。元 素の種類によってサクランに吸着の効率の差が出る詳細なメカニズムはまだ分かっ ていないが。三価イオンは一価イオンよりも静電気力が高いことが関係すると考え られている。また、二価以上では分子鎖を架橋するので分子鎖が集まる。これによ りサクランのマイナス電荷が集まることで負電荷のポテンシャルが下がり、そこに、

プラスの電荷がより集まりやすくなることももう一つのメカニズムとして挙げるこ とができる。

5.2 スイゼンジノリ (Aphanothece sacrum) からのサクラ