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第 2 章 非線形光学の基本理論 11

3.2 非線形光学顕微鏡システム

3.2.5 光学顕微鏡の分解能

平面波が障害物(例えば、スリット)にぶつかったとき、幾何学的には到達でき ないスリットの背後に回り込み、平面波は球面波になって伝わっていく現象を回折 という。図3.28に示すように、スリットからスクリーンまでの距離が十分に離れて いる場合の回折をフラウンホーファー回折、比較的近いの場合フレネル回折という。

また、近すぎる領域ではフレネルの近似も適用できず、近接領域と呼ばれる。例え ば、ピンホールの中心にレーザービームを入射して、後ろ側にスクリーンをおけば、

フラウンホーファー回折パターンが見える。このフラウンホーファー回折パターン はエアリーパターンであり、中心の明るい領域はエアリーディスク(Airy Disk)と 呼ばれる。

 平行光線(平面波)をスリットに当てると、直進する光(0次回折光)と回折す

Fig. 3.28回折

る光(± 1次回折光)に分かれ、この3つの光が中間像位置で干渉して結像する。

光学顕微鏡の対物レンズの場合はフラウンホーファー回折になると考える。観察対 象からやってきた球面波になった光をレンズで集光させて結像される。そのとき、

観察対象は複数の幅が狭いスリットから構成されると考えればよい。そのスリット の径が小さいほど、またスリットの径に対して波長が大きいほど回折角(回り込む 角度)は大きくなり、レンズで捉えられなくなる。結果として細かい構造が見えな くなってしまう。逆に、平面波をレンズで集光すると、焦点の位置の光は、本当の 意味での点ではなく、大きさを持っているスポットになる。このスポットの大きさ は光の波長より小さくすることができない。これを、レンズの回折限界という。

 図3.29に示すように、光が進む方向に平行な成分は0次回折、角度θ(回折角)

だけ振れた成分は1次回折である。この場合はエアリーパターンである。波長λの 光が幅がδのスリットにあたって発生した回折において、隣接する二つの1次回折 光の強めあう条件は1波長分ずれることである。よって、

δ = λ

sinθ (3.16)

Fig. 3.29回折限界

となる。また、スリットとレンズの間が満たされている媒質の屈折率はnであれば、

波長はλ/nとなる。したがって、式(3.16)は δ= λ

nsinθ (3.17)

となる。

 ここで、nは物体と対物レンズの間の媒質の屈折率,αは図3.30に示すように、対 物レンズの焦点から入射する光線の光軸に対する最大角度とする。このとき、対物 レンズはその最大角度αより小さな回折角をもつ回折光しか捉えらてない。

 レンズの直径はD、焦点距離がfのとき、D≪fにおいて sinα= sin

(

arctan D 2f

)

sin D

2f (3.18)

となる。

 19世紀後半に、Ernst Abbe (1840-1905)は、結像可能か否かはレンズで回折光 が捉えられるかどうかで決まることから、レンズによって捉えられる最小のサイズ δAbbeとして空間分解能を定義した。Abbeを記念するために、その回折限界による

空間分解能を表す式(3.19)は、ドイツ・イェーナ大学の生理学棟の建物の前にある

Ernst Abbeの記念碑に刻印されている。

d= λ

2nsinα (3.19)

ここで、dは結像した輝点の直径、すなわち、空間分解能である。λは光の波長、n はサンプルとレンズの間に存在する物質における屈折率、αはレンズの光軸に対し て入る光線の最大角度である。

Fig. 3.30開口数

また、レンズはどれだけ大きく回折した光を捉えることができるかを表す量は開 口数(Numerical Aperture, NA)といい、以下のように定義されている。

NA =nsinα (3.20)

ここでは、レンズの収差などの影響は考慮していない。

 改めて開口数を用いてAbbeが定義した空間分解能は以下のように書ける。

δAbbe = λ

2NA (3.21)

前述したように、極めて小さい丸い輝点から出た光をレンズにより結像させると 円形に広がった回折像となる。図3.31に示すように、この輝点の位置をdだけずら と、2つの輝点が2つの円形像になるように判別でき始める。この2つの円形像を 判別できる最小の距離が、ちょうど2つの円形像の中心が相互のエアリーディスク の半径上にくるときと定義されている。これは、Lord Rayleigh (1842-1919)が定義

されたレンズの分解能である。同様に、レンズの収差などを無視することを前提と している。

 レイリーの空間分解能は次の式で表される。

δRayleigh = 0.61λ

NA (3.22)

同様に、λは光の波長、NAはレンズの開口数である。

Fig. 3.31レイリーの空間分解能

本研究で用いた対物レンズの開口数NAは0.15である。空気中で測定するので、

物体と対物レンズの間の媒質の屈折率nは1をとる。観察するSHG光の波長λは 400 nmである。式(3.22)に代入すると分解能δは1.6 μmとなる。