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第 7 章 蜘蛛の糸の SHG 顕微像観察 125

7.3 蜘蛛の糸の SHG 顕微鏡観察

7.3.3 蜘蛛の糸における SHG の考察

Fig. 7.87.6に示した三つのSHGスポットA, B, CにおけるSHG強度の入射光偏光依存性の極 グラフ。0-180は実測値で、180-360における偏光は0-180と等価なので、0-180のコピー である。

うに配向している。蜘蛛の糸におけるβ-シートの非線形感受率χ(2)の異方性の情報 は過去に報告がないが、今度の入射光偏光依存性の結果をみて、仮に以下のモデル を考える。図7.9(b)に示すようにβ-シートの試料座標x, y, zを定義した。ここで、

β-シートにおける非線形感受率χ(2)xxxχ(2)yyyχ(2)zzz( χ(2)xxxχ(2)yyy )の三つの成分が0 でない値をもつと仮定する。図7.9(a)に示すように、β-シートは繊維軸にほぼ平行 にβ-シートが配向しているが、繊維軸と垂直な方向に進む入射光の波面に対して、

β-シートのx成分が大きくなったり、y成分が大きくなったりする。一方、χ(2)zzzは β-シートがどの方向を向いても一定である。従って、χ(2)xxxχ(2)yyyの値が異なれば、

β-シートが回転することによって、繊維軸と直角方向の実質χ(2)が変化する。つま り、χ(2)xxx、χ(2)yyy、χ(2)zzzの和の効果をとると、偏光依存性のパターンは図7.7のよう になる。また、図7.7をみると、SHG強度や偏光依存性は場所にも依存している。

その原因は、β-シート配向の秩序性によるものだと考えている。

Fig. 7.9 (a)予想した牽引糸におけるβ-シートの配向。(b)β-シートの試料座標x, y, zの定義。(c) 予想したβ-シートにおける非線形感受率の三つ成分とその和。Reprinted with permission from ref [112]. Copyright 2017 by the Springer-Verlag GmbH Germany.

 また、図7.6の区間IIIおいて、スポット状のSHGが観察された。同様に、白色 光照明による顕微像にも牽引糸の上にスポット状なものが観察された(図7.5(a)の

黒色矢印)。この牽引糸におけるスポットの起源は以下のように考えている。牽引糸 を強制採取したとき、金属の枠で蜘蛛を吊って、ぶら下がらせる状態で枠をロール しながら牽引糸を採取した。ロールするスピードはほぼ一定に保っているが、蜘蛛 が一時糸を出すのを停止し、空中に止まることがある。そのとき、糸疣付近で分泌 物が一つの塊になり、糸の上にスポット状なものができたと考えている。その牽引 糸におけるSHGスポットの偏光依存性極グラフのパターンは牽引糸全体のパター ンと類似するが、糸の長さ方向に関連する異方性をもっていないと考えている。

 また、蜘蛛の巣作りを観察すると、図7.10に示すように、蜘蛛は巣を作るとき、

まず縦糸で骨格を構築し、そのベースの糸に沿って螺旋状に体を進めながら補強す る糸を分泌した。第一本目の base line は引っ張られている状態に対して、二本 目の reinforcement line は螺旋状で base line のまわりに巻き付いた。ここで、

この reinforcement line がある角度を向いたときにSHGが最も効率よく発生し、

周期的SHGが増強している(図7.4(b)の白色矢印)と推測できる。

Fig. 7.10 蜘蛛は縦糸を補強するときの様子。縦糸におけるSHGスポットの箇所(赤色矢印)と補

強用糸における試料座標の変化。 reinforcement line の接線方向をz軸と定義すると、PQ 二箇所において、x, y軸はちょうど90回転している。Reprinted with permission from ref [112].

Copyright 2017 by the Springer-Verlag GmbH Germany.

 また、蜘蛛は縦糸と横糸の接着点において梨状腺から分泌した接着セメント(

at-tachment cement)で接着し固定した。そこからもSHGが出ているようであり、接

着セメントによるものと推定する。

 最後に、SHG像と2PEF像において、粘球からの強い信号が観察された。その原 因は粘球自身の蛍光特性によるものと考えている。