第 5 章 窰洞四合院の雑院化とその現代的意味
5.3 空間利用の実態
5.3.3 都市部賃貸住宅との比較
第 3 章では、中庭を中心として、周囲に 4 つの棟を配置する四合院は建設当初にも、中庭 を家族団らん、夏の食事を行う場所とし、観賞用の植栽なども置いてあったを指摘した。昔 では、中庭を介して各棟を繋がり、南より北に配置する棟を上位とし、西より東に配置する
図 5-19 米脂四合院空間利用のモデル図 私 私 私 私 私
中庭 (家族団らん、物干し、
夏の食事)
(物干し、コミュニケーシ ョン、子供遊び、水道) 寝室
便所
便所 厨 ・・・
房 物 置 接
客
大門
中庭(共) 共
大門
私 私 私 私 私
便所 水道 大門
北京市多世帯利用 米脂県多世帯利用
建設当初の使われ方
寝室 寝 室 寝
室 寝 室 寝
室
リビングルーム 厨房、便所、シャワー室
入口 シェアハウス模式図
棟を上位とする居室の上位下位関係があるものの、中庭は住民共用で利用しており、コミュ ニケーションが行う場所とされていた。そういう空間利用の特徴は北京四合院でも同様であ るが、現在多くの増改築により中庭がなくなり、四合院の秩序も失ってしまった。
米脂四合院では、31 院うちの 4 院では、中庭が分割される事例もみられるが、中庭型式 が保存してきた住居はまた多数である。各院において、各部屋はプライベートな生活空間で あり、中庭は居住者が共同で利用しており、洗濯、物干し、便所の利用、会話、子供のゲー ムなどが行われている。利用が重なることによる不便が起きているものの、掃除と維持のルー ルがある程度決められ、互助により院ごとのコミュニティが形成されている。その居住様式 は偶然にも核家族化と個別化が進んできた現代社会に適合している ( 図 5-19)。
clinic
②北大街25号 ③市口巷18号 ④華厳寺湾73号
⑰西大街19号 ⑱西大街74号 ⑲北大街34号 ⑳儒学巷2号
㉕北大街38,40号 ㉖西大街55号 ㉗市口巷19号 ㉘市口巷20号
⑨西大街45号 ⑩東大街20号 ⑪東大街35号 ⑫安巷子1号
① 北大街51号
凡例 入口
共用トイレ 個人トイレ 共用水道 私用水道 私用キッチン
新入口 居住パターン(Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ) 1 3 5 10m
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅳ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅰ
Ⅲ
Ⅱ
Ⅴ
Ⅴ
shop 保存建築
1世帯の利用範囲
増築建築 建て替え 空き室
Ⅳ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅲ
Ⅱ
Ⅱ
Ⅴ
Ⅴ
Ⅰ
⑤石坡8号 ⑥西大街49号
⑬安巷子5号 ⑭西大街47号 ⑮市口巷1号 ⑯西大街41号
㉑儒学巷19号 ㉒馬号圪台9号 ㉓華厳寺巷13号 ㉔石坡7号
㉙北大街41号 ㉚新民巷4号 ㉛新民巷1号
⑦西大街51号 ⑧西大街43号
住 戸
NO. 建設年代
利用実態 ( 世帯数 )
宅地 面積 ( ㎡ )
居住 面積 ( ㎡ )
増改築過程
世帯数 水道利用 便所 厨房 院子
の分 割
建て 替え
増築 厨房と水
洗便所 ( 世帯数 ) 所有 賃貸 個人 公用 個
人 共
用 ガス IH 住戸 物置 a b c
① 明 · 成化 1 5 0 6 0 6 0 1 647 167 - - - 〇 1
② 明 · 正德 3 3 6 0 6 0 6 0 664 413 - 〇 - 〇 1
③ 清・崇德 0 11 5 6 0 11 0 2 913 295 - 〇 - 〇 1
④ 清・康熙 1 0 0 1 0 1 0 0 557 23 - - -
-⑤ 清 · 雍正 2 14 4 12 0 16 0 1 890 300 〇 〇 - 〇 1
⑥ 清 · 雍正 3 13 16 0 3 13 3 0 1107 506 - 〇 - 〇
⑦ 清・乾隆 1 5 6 0 0 6 0 1 591 78 - - - 〇 1
⑧ 清・乾隆 0 6 0 6 0 6 0 0 561 168 - - - 〇
⑨ 清・乾隆 2 7 9 0 0 9 0 2 1009 292 - 〇 - 〇 1 1
⑩ 清・乾隆 2 10 12 0 0 12 2 0 902 331 - 〇 - 〇 1
⑪ 清・乾隆 0 6 0 6 0 6 0 0 860 166 - - -
-⑫ 清・乾隆 2 5 4 3 0 7 1 1 484 142 - - - 〇 2
⑬ 清・乾隆 3 4 6 1 2 5 3 0 617 225 〇 〇 - - 1
⑭ 清・道光 1 10 9 2 0 11 1 0 834 313 - - 〇 〇
⑮ 清・道光 0 2 0 2 0 2 0 0 423 77 - - - 〇
⑯ 清・光緒 2 7 3 6 0 9 0 2 557 230 - 〇 - - 2
⑰ 清・光緒 6 0 6 0 4 2 5 1 704 168 - - - - 2 1 3
⑱ 清 · 同治 1 7 8 0 0 8 2 0 676 218 - - 〇
-⑲
清末 ( 具体 的年代 不詳 )
2 3 5 0 2 3 2 3 545 149 - - - 〇 4 1
⑳ 5 9 10 4 4 10 3 1 1184 388 - 〇 - 〇 1 3
㉑ 3 2 5 0 0 5 0 0 736 201 - - - 〇
㉒ 2 9 11 0 2 9 2 1 1052 298 - - 〇 - 3
㉓ 2 5 7 0 0 7 2 0 660 272 - 〇 -
-㉔ 2 4 6 0 2 4 2 1 485 317 - 〇 -
-㉕ 3 11 8 6 2 12 2 0 995 406 〇 〇 - - 1
㉖ 中華民国 2 3 4 1 1 4 3 0 441 157 〇 〇 - - 2
㉗ 中華民国 0 3 0 3 0 3 0 0 327 54 - - -
-㉘ 1920 前後 2 12 0 14 0 14 0 2 697 344 - 〇 〇 - 1
㉙ 1920 前後 2 4 6 0 2 4 2 0 438 201 - 〇 - - 1
㉚ 1920 前後 1 3 1 3 1 3 1 0 714 239 - - - - 1
㉛ 1930 前後 1 0 1 0 1 0 1 0 570 138 - 〇 - - 1
合
計 57 183 158 82 32 208 43 19 21840 7276 4 院 16 院 4 院 15
院 19 14 5 凡例:〇あり - なし
表 5-8 米脂古城四合院利用実態まとめ
5.4 まとめ
調査した 31 院の状況を表 5-8 と図 5-21 にまとめた。
本章では、歴史地区である中国米脂県古城において、窰洞四合院の雑院化の実態を明らか にし、現代においても伝統住居が新たな社会的意味を持っていることが確認できた。
①主に清時代と中華民国時代に建設された富裕層の住居であった窰洞四合院は、1948 年 に行った土地改革を機に、所有権が分割され、1 家族の住居を数家族共同で利用するように なってきた。家族人数の減少に伴い住居の賃貸化が始まり、現在では居住者の約 3/4 が賃貸 世帯であり、その多くは子供を県立学校に通わせるために居住している。
②所有と利用の関係によって、四合院の利用形式を 5 つに分けられる。8 割以上の院にお いては、所有権が分割され、多世帯が共同で所有している。5 割以上の院では複数の所有世 帯と複数の賃貸世帯が共同で居住している。所有世帯の約 8 割が厨房を持ち、約 5 割が水洗 便所を持つのに対して、賃貸世帯の 9 割以上は 1 室の居室を利用している。
1 院当たりの平均居住世帯数は 7.74 世帯であり、各部屋をプライベートな空間とし、便所、
水道、中庭を共用するシェアハウスのような使われ方をしている住居が 9 割に見られた。共 用部の利用、掃除やメンテナンスへの協力を通して、コミュニティが形成されている。
③米脂四合院では、全ての住戸は個人所有となっており、房産証により所有権が認定され ている。北京四合院と比べ、米脂四合院の中庭型式がよく保存されており、共用空間として 利用され、共用空間と私用空間の境界線が明確している。
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2)
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