第 4 章 住棟型式の分類
4.1 棟の型式
4.1.1 窰洞棟
住民に対するヒアリング調査から、窰洞についての評価を以下のようにまとめた。
①土、石で壁を厚く建設された窰洞は恒温性がよく、より快適な室内熱環境ができる。
冬に寒い米脂県の気候に適合しおり、暖房と冷房を使わなくでもよい。②家族の協力で建 てられ、丈夫で耐久性が高く、数百年にも続けて利用できる。四合院は職人の指導と協力 のもとに建設された住居であるが、靠山式窰洞と地上式排窰洞のほどんどは家族メンバー の力で建設したものである。調査では一番古い窰洞は明時代の末に建設したものであり、
現在まで約 400 年の歴史がある。③昔から窰洞で居住してきた米脂県県民に対して、窰洞 に関する伝説や歴史的な事件も多く、地域の伝統と文化を伝える意識されている。
調査では約 1/3 の房が建て替えられ、その多くは R C 造・煉瓦壁の部屋にしたが、窰洞に 建て替えた事例が 31 院中の 2 院に見られた。その理由として、窰洞が「冬暖夏涼」である ことと地域の伝統を表すアーチの形が持つ安心感が挙げられていた。それに対して、窰洞 を建て替えた事例は 1 例も見られなかった。以上のように、窰洞は住民にとって快適的な 物理環境を持つ型式であるだけでなく、精神的な面でも重要であると考えられる。
同じく窰洞の場合、平遥四合院では斗拱、煉瓦の彫刻などの装飾がより多く施され、月 台にほとんど屋根をかけている。古城の降水量と山西四合院とは大違いがないため、屋根 をかけない理由として、値段の高い木材は経済の負担となるだろうかと考えられる。
窰洞棟の細分類
窰洞は内部空間の形から、孔 (Kong) を単位として空間が独立している「独立孔型」と内 部空間が連続する「交差孔型」がある。独立孔型では、1 孔の空間を居室、厨房、倉庫など 特定の機能で利用できる。それに対して、交差孔型はより開放的で広いスペースができる ため、主に行事や宴会に利用されていた。
窰洞 1 孔の間口と奥行きの関係を図 4-2、壁の厚みと孔の高さの関係を図 4-3、孔の高さ と奥行きの関係を図 4-4 に示す。両端の壁は孔の間にある壁より厚く作られているが、図 4-3 では中間の壁の厚みについて見ている。
①独立孔型
独立孔型は陸屋根であり、屋上に煉瓦を敷き、石壁の表面も煉瓦で保護している。1 孔ず つ独立して利用することができるが、孔と孔の間に扉を付けて「一明両暗」で利用する事 例もある。また、正面に木の柱と斗拱を用い、月台に木構造屋根をかける事例も 31 院中 4 院に見られる。
図 4-2 間口と奥行き 図 4-3 壁の厚みと孔の高さ
図 4-4 孔の高さと奥行き 図 4-5 独立孔型と交差孔型写真
8500 8000 7500 7000 6500 6000 5500 0
y=1.7216X+1267.1
図14事例
図14事例 孔の奥行き(mm)
700 900 1100 1300 1500 1700 1900 2100 2300 2600 2800 3000 3200 3400 3600 3800 4000 孔の高さ(mm) 壁の厚み(mm)
独立孔型 1列3孔
凡例 独立孔型 1列5孔
交差孔型(大) 交差孔型(小) 8500
8000 7500 7000 6500 6000 5500
0 1500 2000 2500 3000 3500 孔の奥行き(mm)
独立孔型 間口a=3110.27 標準偏差184.61
標準偏差130.80 図14事例
図14事例
孔の間口(mm)
独立孔型 1列3孔
凡例 独立孔型 1列5孔 交差孔型(大) 交差孔型(小) 4000
3800 3600 3400 3200 3000 2800 2600
0 700 900 1100 1300 1500 1700 1900 2100 2300 孔の高さ(mm)
壁の厚み(mm) 独立孔型
壁厚みb=857.30
独立孔型
交差孔型 ( 小 )
図 4-6 大交差孔型事例
2700 2200 2200 2200 2200 2700
1560 1560 1560 1560 1560
1800
1800 360
360 6870
1280 450 1020 4350 2700
独立孔型には 1 列 3 孔と 5 孔のものがあるが、孔の大きさに有意な差は見られない。孔 の間口は 3110mm 前後、壁の厚みは 857mm 前後に集中している。一方、孔の奥行きは 5700mm から 8250m m までに見られ、孔の高さは 3000m m から 3900m m と巾がある。孔の奥行きが深く なるとともに、孔も高くなる傾向にあることから、奥側の採光と換気の確保が影響してい ると考えられる。
②交差孔型
交差孔型の正面からは「独立孔型」と同じように一列に 3 孔あるいは 5 孔が見えるが、
直交方向に大きな孔が貫通している。独立孔型と比べて広い室内空間が実現され、室内で は天井に包絡線が見える。屋根は土の切り妻屋根であり、保護として瓦を使用している。
交差孔型は棟の規模によって「交差孔型 ( 大 )」と「交差孔型 ( 小 )」に分けられる。
大差孔型 ( 大 ) は調査した 31 院中 3 例に見られた。2 例では庁窰として使われ、棟の規 模は独立孔型と大差がない。他の 1 例は明時代の末に建設された正窰である。孔の開口が
図 4-7 交差孔型写真
参考文献 11 注 2)
非常に狭く、初期の特別な事例である ( 図 4-6)。交差孔型 ( 小 ) の規模は小さく、2 院に 見られた。2 例とも孔の間口が 1750m m 前後、壁の厚みが 900m m 前後であり、廂房棟として 使われる。
平遥の研究では交差孔に関する記録は見られないが、米脂県から 130k m の距離にある子 長県で中華民国 13 年 (1924 年 ) に建設された県庁には同じような構造を持つ交差孔型が見 られる注 2)。当地では「十字拱」と呼ばれ、拱はアーチを意味している。
4.1.2 房
中国建国後 (1949 年 ) に煉瓦のサイズが統一され、240mm × 120mm × 60mm の赤煉瓦となっ てきたが、四合院で使われた煉瓦は青煉瓦であり、より大きいサイズの 333m m × 166.6m m
× 50m m である。「米脂県誌」の内容によれば、漢時代から煉瓦の利用が見られ、最初は高 い材料として官衙あるいは寺にしか使えなかった。明時代から煉瓦の生産量が多くなって から、住居や店舗の建設に使えるようになった。古城と近い「棟瓦窰村」は清時代に有名 な煉瓦の生産地であったとの記録がある。
①小窰+煉瓦造型
その型式では、奥に 3 つの「小窰ショウヨウ」と呼ばれる規模が小さい窰洞があり、手 前の部分は煉瓦造であり、入口と窓には小窰と同じ形のアーチが作られている。この型式 は「窰」と「房」の特徴を融合した中間型式であり、31 院中の 7 院しか見られていないが 清時代の末に流行ったとのことだ。断熱性能の優れた窰洞に主に就寝を行い、収納も利用 している。それ以外の部分は切り妻型の木造屋根・煉瓦壁であり、主に活動スペースとし
図 4-8 小窰+煉瓦造
て利用されていた ( 図 4-8)。ヒアリング調査では、昔は子供の寝室して利用され、2 孔あ るいは 3 孔の小窰にカンを設置し、就寝する場所とされ、煉瓦造の部分に机を置き、勉強 する場所とされる。それで、ある程度子供のプライバシーを保護することができるように なり、より広い活動の場所も確保したため、機能から合理的である。
小窰の間口は 1600m m から 1950 ㎜までに見られ、平均 1792.5m m であり、独立孔型窰洞の 約 1/2 ~ 2/3 となっている。奥行きは 1000mm から 2000 ㎜、平均 1704mm である。
②煉瓦造型
屋根は木構造の切り妻屋根であり、壁は厚み 330m m ~ 500m m の煉瓦壁である。他地域に おいても多く見られる型式であり、正面は煉瓦壁と木造建具で構成され、1 間当たり 4 枚の 木製建具からなる彫花門も見られる。他地域に比べると木の彫刻や斗拱などの事例が少な く、木材の使用部位も限られていたようだ ( 図 4-9)。
図 4-9 煉瓦造写真
表 4-1 各型式の位置
独立孔型 交差孔型 小窰+煉瓦造型 煉瓦造型
正窰棟 30 院 1 院 ( 大 ) -
-枕頭窰 3 院 - -
-廂房 / 窰棟 5 院 2 院 ( 小 ) 7 院 18 院
庁房 / 窰棟 8 院 2 院 ( 大 ) 1 院 22 院
注:上院に廂窰を設置し、下院に廂房を設置する事例が 1 院。西院と東院が庁房と庁窰を 1 棟ずつを設置するのは 2 院と見られる。