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第 5 章  窰洞四合院の雑院化とその現代的意味

5.2 四合院所有と利用関係

5.2.2 所有と利用の関係

 所有と利用の関係から 31 院の四合院をⅠ所有世帯のみが居住している、Ⅱ所有世帯 1 世 帯戸賃貸世帯が一緒に居住している、Ⅲ多所有世帯と多賃貸世帯が一緒に居住している、Ⅳ 賃貸世帯のみが居住している、Ⅴ院子の分割により各小院子の所有と使用関係が異なると 5 つの種類に分類した ( 図 5-8)。そのうち、ⅠとⅡは 1 世帯所有であり、合計で 5 院があり、

住居の 16.13% を占める。それ以外は所有権が分割された多世帯が所有する事例であり、調 査した四合院の 83.87% を占める。

 Ⅰ . 所有 1 世帯のみが居住している (2 院 )。建物と中庭の所有権は房産証で確認できる。

うち 1 院は普段居住しておらず、不要の家具などが置かれている。他の1院事例 1 であり、

家族 3 人で居住しており、棟の建て替え、ガス厨房や水洗便所の増設により、住環境がよく 整備されている。

図 5-9 事例図面凡例 質問1:居住した経緯

A.子供を県立学校に行かせるため B.払下げした頃に買った C.仕事をしている息子あるいは娘の近くに住みたい D.子供の頃からずっと住んでいる E.仕事  F.その他

質問2:居住期間

A.10年以上    B.5~10年    C.1~5年     D.1年以内 質問:引っ越しの予定

A.引っ越しの予定がない   B.子供が高校から卒業まで住みたいです     C.新市街地に引っ越すつもり

入口(大門)    新入口       保存建築      増築      空き室       建て替え

公用トイレ    個人所有トイレ   共用水道      個人利用水道    個人使用IHキッチン    個人使用ガスキッチン 男性       女性       普段住まない方         1世帯利用する範囲

Ⅰ Used by the owner

所有者のみが居住している

For private use

Enterance

居住者=所有者 居住者=賃貸者(所有者も 同じ宅地内に居住する) 居住者=賃貸者(所有者は 同じ宅地内に居住しない) プライベートの庭 共用の庭

Enterance Enterance

Enterance Enterance Enterance

ⅡOwned by one family and used  by the owner and tenants  所有者1世帯と賃貸者が一緒に居  住している

Courtyard Courtyard Courtyard

Courtyard Courtyard

Ⅲ Owned by several families and  used by owners and tenants  多所有者、多賃貸者が一緒に居   住している

Ⅳ Used by tenants

  賃貸者のみが居住している Ⅴ By the division of the courtyard, the use is different in each part.

院子の分割により、各小院子の所有と 使用関係が異なる

2 Yuan(院) 3 Yuan(院) 17 Yuan(院)

5 Yuan(院) 4 Yuan(院)

図 5-8 所有と利用関係

図 5-10 事例 1 図面

ガス厨房

建て替えた廂房 1 3 5m

N

Q 1: D Q 2: A Q 3: A

70 46 48

便

事例 1

 中華民国時代 (1930 年前後 ) 現所有者 (70 歳 ) の祖父が結婚した頃に建設した住居である。

土地改革の時も、土地が少なく、家族人数が多かったため、改造の対象とされてなかった。

調査時点まで数回の改修が行われたが、平面構成は建設当時のまま維持され、現在息子夫婦 と三人で暮らしている。父親が 2 孔の窰洞を連続で利用しており、息子夫婦が 1 孔に居住し、

後ろにある枕頭窰も収納室として利用している。

 建設当初には、主窰は 3 孔を連続的に利用していたが、息子が結婚を機に、窰洞の間に壁 を増築した。その後の 2000 年に窰洞建具を木製品からアルミ製品と更新した。2005 年にガ ス厨房を利用するため、窰洞の月台にガス厨房の小屋を増築した。また、東廂房を水洗便所 のある平房に建て替え、現在リビングルームとして利用し、家族団欒や接客が行われている。

息子と娘達の結婚とともに、家族人数が少なくなり、西廂房と庁房棟は使わないままで放置 されている。部屋を修繕して、賃貸に出すのを考えたこともあるが、いいきっかけがなかっ たようだ。

Ⅱ . 所有 1 世帯と賃貸世帯が一緒に居住している (3 院 )。Ⅰと同じように、建物と中庭の 情報が「房産証」に記入されている。ほとんどの賃貸世帯が 1 室に住んでいるのに対し、所 有世帯が 2 室以上を利用している。中庭いある共用水道や共用便所が賃貸者共同で利用して いるが、所有世帯のみが利用できる増築した厨房と水洗便所も見られる。

事例 2

中華民国元年 (1912 年 ) に建設した住居であり、現在所有 1 世帯と賃貸 3 世帯が共同で居 住している。1990 年前後に「下院」にある木造・煉瓦壁の房を解体し、野菜と果物を栽培 できる庭にした。庭にあるナツメとリンゴの木は所有世帯のものであるが、余った土地は賃 貸世帯が自由に使っている。所有者が高齢者であるため、便所と中庭の掃除は基本的に賃貸 世帯が順番に行っているが、その代わりに、収穫した果物は居住者みんなで食べている。

 所有世帯は 3 孔の窰洞を利用しており、2000 年前後に、窰洞棟全室のタイル床を更新し、

右から 1 番目の窰洞に厨房と水洗便所を増設、2 番目の窰洞のカンを取り外してベッドを設 置した。また、厨房の増設によって、カマドでの炊事から電気鍋に変わり、さらに 2009 年

物干し

所有者トイレとガス厨房

図 5-11 事例 2 図面

N

1 3 5m 賃貸者

賃貸者

賃貸者

95 85

所有者

75 65 38

47 46

16 23

Q 1: A Q 2: C Q 3: B

Q 1: A Q 2: C Q 3: B

Q 1: A Q 2: C Q 3: C Q 1: D Q 2: A Q 3: A

27 26

9 10

10

解体された建物

の改修によって都市ガスが使えるようになった。賃貸 2 世帯が 1 つずつの房を利用し、1世 帯が 2 孔の窰洞を利用している。賃貸世帯は正房棟月台にある共用上下水道と庭にある共用 便所を使い、炊事は各部屋で I H あるいは電気鍋で行っている。3 世帯とも子育て世帯であ るため、子供が中庭で遊んだり、勉強したりしている。洗濯は主に手洗いであり、中庭にあ るロープを物干しとして使っている。

 事例 2 以外の 2 院において、所有世帯が増築や建て替えにより、現在コンクリート・煉瓦 壁の住棟に住んでおり、厨房と水道が整備されている。1 院において、より近代的な平面構 成と空間機能が見られ、ガス厨房、水洗便所とシャワー室やリビングルームが見られている ( 図 5-12)。それは木造・煉瓦壁の廂房が老朽化され、使えなくなったため、2000 年に建て 替えを行った。現在 1 階の半分が賃貸に利用され、残った半分では祖母と祖父が住んでおり、

2 階では息子夫婦と子供 4 人で利用している。

図 5-12 所有世帯が居住している RC 造住居

厨房 水洗便所とシャワー室 リビングルーム

1F平面図 2F平面図 立面図

1 3 5m

 Ⅲ . 複数の世帯が共同で所有しており、賃貸世帯と一緒に居住している (17 院 )。棟別で なく部屋毎に所有世帯が違うところが多く、賃貸部屋の所有世帯が同じ敷地内に住んでない 場合もある。共用部の掃除や水道の利用と料金の支払いなどについて意見の相違が見られ、

中庭では世帯ごとに利用できる範囲が明確ではないため、不使用の家具などの粗大ゴミを放 置していたり、小屋の増築も多い。

事例 3

清時代の末に建設された「常氏」注 8)家族の住居であったが、土地改革の時に棟各に土地を 持っていない人に分配された。調査時点では 5 世帯が共同で所有し、そのうちの 2 世帯が居 住しており、3 世帯が新市街地に引っ越し、部屋を賃貸に出している。 

 所有 2 世帯とも 2 孔の窰洞を連続で利用している。主窰を利用している所有世帯は子供の 頃から居住しており、現在息子は西安で仕事をしているため、年末にしか帰らない。夫婦と も公務員であり、退職後に西安に移住する予定である。2009 年に裏壁の窓を開けて、ガス 厨房と水洗便所を室内に増設した。

 2005 年中庭に 1 住戸を増築して、賃貸している。賃貸 9 世帯とも子供の入学をきっかけ に引っ越してきた家族であり、主に一室の窰あるいは房を利用している。水道を各部屋に引 いたため、洗濯は主に各部屋で行い、中庭にあるロープを利用して洗濯物干しを行う。中庭 と便所の掃除は世帯順に週 1 回ほど行っている。

 西廂窰を例として、所有世帯と賃貸世帯の居住状況を具体的に説明する。所有世帯は 2012 年に転職を機に 2 孔の窰洞を買い、孔の間の壁に扉を付け、ガス厨房と水洗便所も増 設した。現在高校 2 年生の長男はベッドで寝るが、長女は夫婦と一緒にカンで就寝する。ソ ファーとテレビが設置しており、食事もよくテレビを見ながら行い、リビングルームのよう な空間とされている。それに対して、賃貸世帯は炊事、食事と就寝が 1 部屋で行い、空間が より混乱している。

 居住者で決めた居住のルールが入口に書いてある。その主な内容は、①勉強する学生のた めに、平日昼寝の時間と放課後、土日の午前中には大きな声で話してはいけない、②昼寝の 時間には、中庭で遊ばない、③掃除は週 1 回行うといったことである。居住者が多いものの、

よりいい環境を作るため、お互いに協力している。

注 8) 文化局にある記録によれば、常氏家族は明時代永楽年 (1360 ~ 1424 年 ) に安徽省から米脂県へ移住し、

図 5-13 事例 3 図面

水洗便所 ガス厨房

1 3 5m

1 3 5m

N

西廂窰図面

便

Q 1: A Q 2: B Q 3: B

Q 1: A Q 2: A Q 3: B Q 1: A Q 2: A Q 3: B

Q 1: A Q 2: C Q 3: B

Q 1: A Q 2: C Q 3: B Q 1: D

Q 2: A Q 3: C

Q 1: A Q 2: C Q 3: B

Q 1: E Q 2: B Q 3: A

Q 1: A Q 2: A Q 3: C

For rent 48 46

25

38 37

62

8

33 32

12 8 35 32

8 14

37 35 8

39 38 10 45 44

22 15

40 39 12 17

38 36

8 賃貸者

賃貸者

賃貸者 賃貸者 賃貸者 賃貸者 賃貸者 所有者

所有者

洗濯ものと物置

二門と増築した居室 IH での炊事

 Ⅳ . 賃貸世帯のみが居住している (5 院 )。住居についての増改築が少なく、使わないま ま放置されている部屋が多く、水道と便所はほぼ全世帯が共用部のものを使っている。

事例 4

 清嘉慶 24 年 (1820 年 ) に建てられた住居であり、共同所有の 3 世帯が新城に引っ越した ため、現在賃貸 6 世帯が居住している。西南にある庭はかつてラバの飼育や倉庫に使われた が、現在は共用便所が設置されている。住居のメンテナンスは所有世帯が行い、2005 年に 2 つ目の落下式便所を増築した。

 居住者は 1 部屋を利用しながら、上下水道と便所を共用している。炊事は主に各部屋で行っ ているが、庁房棟の居住世帯は室内が狭いため、月台に置いた練炭コンロで炊事している。

中庭は共用空間であり、皆で喋ったり、子供が遊んだりしている。洗濯は主に中庭で手洗い しているが、洗濯機を使うときも中庭に運び出して行う。中庭掃除の順番は特に決まってお らず、住棟の周辺を掃除するついでに、行っているようだ。

図 5-14 事例 4 図面

軒下での炊事 共用水道 石磨

1 3 5m

N

77 Q 1: C Q 2: B Q 3: A 17 19

38 38

6 14

Q 1: A Q 2: B Q 3: B

37 34

6 1

52 46 Q 1: A Q 2: C Q 3: B

6 18

48 47 Q 1: A Q 2: B Q 3: B Q 1: A

Q 2: D Q 3: A 賃貸者

賃貸者

賃貸者

賃貸者

賃貸者