第 6 章 雑院化の増改築過程
6.1 米脂四合院の増改築過程
6.1.2 棟の建て替え
ヒアリング調査によって、31 院の四合院において、建設当初は 56 棟の窰洞と 93 棟の木造・
煉瓦壁の房が建てられたことがわかった。地上式窰洞棟は全部維持されたが、房は 34.4% の 32 棟が木構造や瓦屋根の老朽化に伴って建て替えられた。そのうち、4 棟は地上式窰洞、28 棟は R C 造の平房となった。窰洞に建て替えたのは、全て高齢者の所有世帯であった。幼い 頃から窰洞生活をしてきた彼らにとって、窰洞は「冬暖夏涼」の物理的な環境を持つだけで なく、地域の伝統を表すという精神的な意味も持つとのことである。
建て替えの多くは 1990 年から 2008 までに行われた。部屋の平面構成は、「居室のみ」が 64.41%、「寝室+厨房」が 8.47% で、「寝室+厨房+水洗便所」が 27.12% である ( 表 6-1)。
図 6-4 棟の建て替えのイメージ図 地上式窰洞4棟
4棟 28棟
One room 32 世帯
Bedroom + Kitchen 5 世帯
Bedroom + Kitchen+toilet 15 世帯
木造・煉瓦壁 32棟 (四合院15院において)
RC造煉瓦壁 26棟
One room 6 世帯
Bedroom + Kitchen+toilet 1 世帯
庁房棟が院子から独立し、入口も変えて、現在はクリニックとして利用されている。
②院子は分割せず、鉄柵を設置して、もともと住民が共同で利用していた中庭の一部を個 人専用とした例は 5 院に見られ、全て 1990 年以後に設置されたものである ( 図 6-1,6-3)。
それは、住戸の安全性と個人使用の屋外空間を確保するためであった。
図 4-21 左側の事例では、窰洞の前面に入口のある鉄柵が設置されており、鉄柵と窰洞の 間に荷物や不要な家具が置いてある。右側の事例では、主窰の前面に壁が増築され、西側か ら 2 孔の窰洞を独立させた。それにより、月台の一部が専用空間となった。
建て替えにより、所有世帯は厨房と水洗便所が設置された部屋に居住するようになり、住環 境がよくなった。
ここでは具体的な事例で説明していく。
ヒアリング調査によれば、図 6-5 の事例は、清時代・同治年に建設された住居であり、昔 も高氏家族が持っていたが、兄弟の分家や土地改革があったため、現在 2 世帯が所有してい る。建設当初では、主窰、小窰+煉瓦造型の廂房と木造・煉瓦壁の庁房による構成されてい た四合院であった。庁房の老朽化と伴い、使えなくなり、1980 年前後に煉瓦造の窰洞に建 て替えされた。平房ではなく、窰洞にした理由は以下の 2 点にある。①生まれてからずっと 窰洞に生活してきたため、房に住むのは考えたこともなかった。②北に向く棟であり、窰洞 棟の蓄熱性がよく、より快適な室内空間ができる。現在窰洞は賃貸に利用されており、1 孔 の窰洞に 1 世帯が住んでいる。
また、図 6-6 の事例は清時代の末に建設された住居であり、現在院子が分割され、1 院か ら 3 院となっており、各院は 1 世帯に所有している。西院にある西廂房が 2008 年に賃貸世 帯が利用するワンルームの棟が建て替えられ、2 階建ての R C 造のものである。現在 6 世帯
図 6-5 房から窰洞に建て替えた事例
建設当初 4 木造・煉瓦壁 28 木造・煉瓦壁
建て替え 合計
4 地上式窰洞 26 RC 造・煉瓦壁
ワンルーム 寝室+厨房 寝室+厨房+水洗 便所
ワンルーム 寝室+厨房 寝室+厨房+水洗 便所
所有世帯 1 - 1 - 3 12 17
賃貸世帯 5 - - 32 2 3 42
表 6-1 住棟の建て替え
が居住している。1 部屋の間口は 2785mm、奥行きは 6760mm であり、細長いの形は窰洞と似っ ている。室内は伝統的な暖房方式であるカンが見られなく、全てベッドを使い、冬では練炭 ストーブを利用している。
西院と東院が共用している廂房が R C 造・煉瓦壁の建物に建て替えられ、子供が新城に居 住しているため、現在所有世帯 50 代夫婦が居住している。平面構成から見れば、リビングルー ムが設置しており、接客や家族団らんに利用している。ベッドルームではカンを利用しない ため、ガスを燃料とする暖房が見られる。厨房とシャワー室も見られ、水洗便所と洗面台も ある。
図 6-6 房から平房に建て替えた事例
400
2F
5350 6760
2900 400 4802785480