第 6 章 雑院化の増改築過程
6.1 米脂四合院の増改築過程
6.1.3 住戸と物置の増築
a. 小屋を増築する b. 増設 c. 一部増築一部改修
Owner K: 3 Tenant K: 3
Owner K: 10 K+T: 2 Tenant K: 1
Owner K: 1 K+T: 1
Tenant K: 3 Owner K: 1 K+T: 4
Owner K+T: 8 T: 1 Yao dong
K = kitchen K+T = Kitchen+Toilet T = Toilet 窰洞
Fang 房
図 6-8 厨房と水洗便所の増築及び増設
増築 増設 L 型増築
a. 小屋を増築 b. 増設 c. 増築と改修
厨房 厨房+水洗便所 厨房 厨房+水洗便所 水洗便所 厨房 厨房+水洗便所 合計
所有世帯 13 2 1 9 1 1 4 31
賃貸世帯 4 - 3 - - - - 7
表 6-3 厨房と水洗便所の増築及び増設
は 2002 年から始まり、2005 年から全エリアが利用できるようになったため、ガス厨房と水 洗トイレの増築及び増設は主に 2000 年以降に見られる。しかし、窰洞は換気上の問題があ るため、小屋を増築して利用するあるいは裏壁に窓を増設して利用することとなる。厨房の 増築と増設は以下 3 つのケースがある ( 図 6-8)。
a . 厨房と水洗便所の小屋を中庭あるいは月台に増築する (50% )。住戸の入口は別なので不 便だが、窰洞にも房にも適用できる。厨房だけを増築したのは所有 13 世帯と賃貸 4 世帯で あり、厨房と水洗トイレを同時に増築したのは所有 2 世帯である。
b . 部屋の改修により、厨房と便所を室内に増設する (36.84% )。窰洞の場合は換気が悪い ため、ガス厨房を利用する場合、裏壁に窓を開ける必要がある。厨房だけを増設したのは所 有 1 世帯と賃貸 3 世帯であり、厨房と水洗トイレを同時に増設したのは所有 9 世帯 , 水洗便 所だけを増設したのは所有 1 世帯である。
c . 房の増築と改修を同時に行い、「L」字型の平面とする (13.16% )。それにより、厨房だ けを設置したのは所有 1 世帯、厨房と水洗便所を設置したの所有 4 世帯である。
増築と増設により、昔居室で行われてきた炊事が厨房に移行し、より便利な水洗便所が使 えるようになった。増築及び増設の結果を表 6-3 に示す。厨房のみは 22 世帯であり、所有 15 世帯と賃貸 7 世帯となっている。厨房と水洗便所は 15 世帯、すべてが所有世帯である。
厨房と水洗便所の増築及び増設は主に所有世帯が生活環境を改善するためまたは賃料を得る ため行ったと言える。また、厨房に関する事例が 37 例が、水洗便所は 16 例だった。ヒアリ ング調査では、住民達は便所より、独立空間を持つ厨房への関心が高い。それは、室内の換 気が悪いため、調理の煙に気になるとのことである。
6.2 北京四合院増改築過程との比較
米脂県の住居では、木造・煉瓦壁の房を対象として改修や建て替えが行われてきた。結果 として、全世帯の 12.50% が近代的な 1DK または 1LKD の間取りに改修されている。北京四合 院においても、改修により間取りが大幅に変更された。
①院子の分割
北京四合院は単位が所有する公房と個人所有する私房が混雑しているが、壁の増築と入口 の増設により、1 院から 2、3 院となる院子の分割が見られていない。
②棟の建て替え
米脂県古城では、部屋を木造から R C 造に建て替えた事例が多くみられる。それに対して、
北京四合院では増築がとし、米脂四合院と同じように R C 造・煉瓦壁へ建て替えた事例が少 ない。
③棟の増築
院子での増築率は平均 45% ( 最大 61%、最小 16% ) であり、前面の軒下部分に煉瓦造の小屋 を増築する事例が多く見られ、主に厨房、収納室として利用している。小屋の多くは 1 階建 ての物であるが、規模がより大きいな 2 階建てのものも見られる。また、室内面積を大きく するため、壁の一部を立て直し、共用の土地を私用にする事例も見られる。
④厨房と水洗便所について
米脂県と同様に、各院では共用の上水道が整備されており、料理と洗濯をすることができ る。しかし、下水道は街路に何箇所しか設置されておらず、住民たちは下水運び出してから 集中的に出している。下水道がないため、厨房の増築と増設が多いが、水洗便所の増築と増 設も見られてなく、住民達は胡同にある公用トイレを利用している。
⑤事例の説明
また、1 世帯に着目して居住空間の経年変化を説明していく。図 6-9 事例の四合院は清時 代文学者龔自珍が居住した家屋であり、近代から一般の民居となった。中庭での増築率は 64.2%ほど高い。事例の住戸では 40 代の男性が 1 人で暮らしている。1975 年から家族と一 緒に当時単位所有の公房で居住し始め、最初は 16.5 ㎡の 1 室であったが、月台で厨房の増
図 6-9 北京雑院増改築事例注 13)
1975年以前 1975 1976 1986 2006 1 3 5 m
事例
16.5㎡ 20.8㎡ 20.8㎡+5㎡
20.8㎡+12.3㎡ 20.8㎡+39.2㎡
築により 20.8 ㎡の部屋となり、また 1 年後にさらに面積を増やした。1986 年になると、家 族メンバが増えてきて、住棟の後ろにベッドルームの 1 部屋を増築した。2006 年に北京市 の公房から個人への払い下げの政策により、安い値段で居住していた部屋の所有権を購入し た。その後、中庭に収納室、ベッドルームなどを増築し、現在の様子となった。
北京四合院の事例から見れば、中庭の増築率は平均 45% ほど高く、それは小屋を多く増築 したことではなく、元の住棟の面積を増やすための増築が多かった。それは、煉瓦造の房は 構造的には増改築しやすいと考えられる。一方、米脂県の場合、1 孔の窰洞を 1 つ独立して いる空間単位とされ、一部屋の増築や、空間をさらに分けることができなかったため、現在 でも孔別で利用されている。
注 13) 参考文献 16 の著者から図面の使用が許可されている。
6.3 まとめ
本章では、米脂県窰洞四合院の増改築過程を考察した。増改築は 1990 年から 2008 年まで の間に主に所有世帯が行ったものであり、設備の近代化による賃貸収入向上のためだと考え られる。
①窰洞を他の建築形式に建て替えた事例は見られないが、木造・煉瓦壁の房の約 1/3 が R C 造・煉瓦壁の平房に建て替えられた。また、少数だが中庭を含めて院子を分割した事例 が見られた。壁や入口の増設により、院子の一部が独立し、窰洞四合院という伝統住居の型 式が崩れつつある。増改築により、所有世帯の多くは厨房と水洗便所が整備された部屋に居 住するようになったが、依然多くの賃貸世帯は 1 室を利用している。
②北京四合院では、約 7 割の住棟は単位が管理している公房である。増築率が 60% ~ 70%
であり、1 院に居住している住民も米脂県古城より多い。木造煉瓦壁の房は構造的に改築し やすいため、1 室の増築や個室に分けるのは多く見られる。
窰洞では空間をさらに細かく分けることができず、1 孔の窰洞は生活空間の最小単位とし て使われてきた。寒冷地である米脂県において、土、石で壁を厚く建設された窰洞は恒温性 がよく、独立性が高いため、ワンルームマンションのような使い方に適合している。窰洞の 強固で安定した構造と明確な空間単位は、偶然にも核家族化と個別化が進んできた現代社会 に適合しているようだ。
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