第 7 章 液体ガラスを用いたガラス基板上への反射防止膜形成
7.5 焼成温度を変えて形成した液体ガラス層における反射防止効果
7.5.3 透明導電膜基板に対する反射防止膜効果の検証
本項では、7.5.2 にて評価した LG 層を透明電極基板における反射防止膜として応用し、
その反射防止効果の検討を行う。
図7.19(a) に作製したVULG基板および下地として用いたAsahi-VU基板の反射率スペク
トルの比較を示す。なお、LG層は焼成温度300 [C] および回転速度4000 [rpm] の作製条 件を用いて形成した。図の反射率スペクトルの比較から、反射防止膜としてLG層の形成を 行うことにより、波長350 [nm] 以降における反射の低下がみられ、その低下量は基板にGLG 基板に入射した光の波長とともに増加する傾向がみられた。
次に、LG層を形成したことによる Asahi-VU基板における反射率低減量を評価した。図
7.19 (b) にLG層形成前後におけるAsahi-VU基板およびガラス基板における反射率低減量
の比較を示す。焼成温度300 [C] において、LG層を形成する下地基板としてAsahi-VU基 板を用いた場合とガラス基板を用いた場合では、反射防止効果が最も強く表れる波長域お よびその反射率低減量に違いがみられた。ガラス基板を下地として用いた場合、その反射率 の低減効果は波長300-800 [nm] のすべての波長域において生じ、波長550 [nm] 近傍におい て最も高い反射防止効果を示した。またその反射率低減量の値としては、波長約 570 [nm]
において最大値約3.2 [%] を得た。一方、Asahi-VU基板を下地としてLG層の形成を行った 場合、最も強い反射防止効果が得られる波長域は長波長側へと移動し、その反射低減量の最 大値は波長約650 [nm] において約2.9 [%] となった。この反射率低減量の値は、焼成温度
3 4 5 6 7 8 9 10
400 500 600 700 800
Reflectance [%]
Wavelength [nm]
MgF2 (n = 1.38, 109 nm) GLG (n = 1.34, 104 nm)
Ideal AR layer (n = 1.23, 122 nm) Eagle XG (n = 1.51)
149
250 [C] で形成したLG層における反射率低減量の最大値約2.4 [%] と比べて高い値を示し
たが、一方で、GLG 基板における反射率低減量の最大値約 3.2 [%] に比べてわずかに低い 値となった。この下地基板の違いによる反射防止効果の差は、液体ガラス溶媒に対する基板 の濡れ性の違いにより、LG 層の膜厚に変化が生じたためだと考えられる。図 7.8(b) より、
Asahi-VU基板上に形成したLG層の膜厚はEagle XG基板に形成した場合に比べて厚くなる
図7.19 (a)LG層形成の有無におけるAsahi-VU基板の反射率スペクトルの比較および
(b)LG層形成前後におけるAsahi-VUおよびEagle XG基板の反射率低減量の波 長依存性. すべての試料におけるLG層の形成は回転速度4000 [rpm]、焼成温度 300 [C] にて行った.
0 5 10 15
400 500 600 700 800
Reflectance [%]
Wavelength [nm]
w/o LG layer
w/ LG layer
(a)
-5 -4 -3 -2 -1 0 1
400 500 600 700 800
Difference in reflectance [%]
Wavelength [nm]
w/ Eagle XG w/ Asahi-VU
(b)
150
傾向を示す。また図7.16(b) より、焼成温度300 [C] において形成したLG層の屈折率の値 は、LG層の膜厚が104 [nm] 以上において大きく増加する結果を示す。これらの結果から、
液体ガラスに対する濡れ製の違いにより、Asahi-VU基板上における LG 層の膜厚および屈 折率の値が増加し、反射防止効果の変化が生じたと考えられる。しかし、この反射防止効果 の低下は LG 層塗布時におけるスピンコーティング速度を調整することによって低下可能 であり、更なる反射率低減効果の向上を期待できる。
まとめ
本章では低コストかつ大面積基板上への応用が容易であることから、液体ガラスを用い たガラス基板上の反射防止膜形成に関する研究を行った。ガラス基板上への反射防止膜形
成は 2-プロパノールによって希釈した液体ガラスをスピンコーティング法によりガラス基
板上へと塗布し、大気中において 70-500 [C]の温度で焼成処理を施すことにより行った。
光学モデルの構築を行い、反射率測定より得た反射率スペクトルの実測値および光学モデ ルから算出した計算値のフィッティングを行うことによって、形成したLG層の屈折率およ び膜厚を同定した。
焼成温度250 [C]において、形成したLG層の反射率スペクトルの値はガラス基板単体の
反射率スペクトルに比べて低い値を示すことを確認した。光学モデルから算出した反射率 スペクトルとのフィッティングを行った結果、実測値の値と良い一致を示す屈折率および 膜厚の値を得た。スピンコーティング速度を2000-8000 [rpm] の範囲で変化させてLG層の 形成を行ったところ、光学モデルから算出したLG層の膜厚の値がスピンコーティング速度 の減少に伴い増加する傾向にあることを確認した。また、LG層の屈折率の値は膜厚に対し て依存性を示さず、波長600 [nm] において約1.40の屈折率を得た。スピンコーティング速
度6000 [rpm] においてLG層をAsahi-VU基板のガラス面側に形成した場合において、波長
600 [nm] 付近における約 2.4 [%] の反射損失低減を図ることが可能であることを示した。
また、作製した電極上にi層膜厚450 [nm] の薄膜a-Si:H太陽電池を形成した場合において、
LG 層の形成を行っていない電極基板上に形成された太陽電池に比べて約 1.5 [mA/cm2] の JSC向上を図ることに成功し、発電効率の値を約8.0 [%] から8.9 [%] に増加させた。
焼成温度を 70-500 [C]の範囲で変化させてガラス基板上に LG 層を形成した場合におい て、光学モデルより算出した膜厚および屈折率の値に変化がみられた。結果、算出したLG 層の膜厚が焼成温度150-500 [C]の範囲において焼成温度の増加とともに減少する傾向にあ ることを示した。また、焼成温度300 [C] において一般的な反射防止膜であるMgF2の屈折 率1.38よりも低い約1.36の屈折率を有するLG層を形成することに成功した。焼成温度300
[C] にて膜厚を変えた LG 層の形成した場合において、光学モデルとのフィッティングに
より導出した屈折率の値がLG層の膜厚に対して依存性を示すことを確認した。結果、算出
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したLG膜厚の値が104 [nm] の場合において、波長600 [nm] における屈折率1.34を有す るLG層が得られ、ガラス基板表面において約3.2 [%] の反射率低減効果を得ることに成功 した。Asahi-VU基板上においても LG層を形成したことによる反射低減効果がみられ、最
大で約2.9 [%]の反射率低減を得た。また、LG層の膜厚を調整することによる、更なる反射
防止効果の実現に向けた可能性を示した。
以上の結果より、液体ガラスを用いて形成したガラス基板上の低屈折率ガラス層が可視 光領域の光に対して高い反射防止効果を有しており、太陽電池のみならず既存の光学デバ イスの高効率化および低コスト化に対して有効であることを示した。
参照文献
1. 大津元一、田所利康(著):光学入門 1、pp.140-150、朝倉書店 (2013) 2. 文献1、pp.80-110.
3. Filmetrics Inc. Refractive index data base:
http://www.filmetrics.com/refractive-index-database/MgF2/Magnesium-Fluoride 4. M. Dodge et al. Applied Optics 23 (1984).
5. 文献3: http://www.filmetrics.com/refractive-index-database/BK7/Float-Glass
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