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第 6 章 球状シリカ粒子および液体ガラスを用いたガラス基板上へ の凹凸構造形成

6.7 液体ガラス層の厚みを変えた電極基板の作製

6.7.2 薄膜 μc-Si:H 太陽電池の形成

LG 層の形成膜厚を変えて作製した AZO-SSP 基板を電極として薄膜 μc-Si:H 太陽電池の 形成を行った。以下ではその発電特性について記述する。なお、電極基板上におけるμc-Si:H 太陽電池の形成は6.4.1の太陽電池と同様の作製条件にて行った。

図6.21(a) にLG層形成時における液体ガラスのスピンコーティング速度を2000、4000

および8000 [rpm] と変えた場合における、AZO-SSP基板上に形成したμc-Si:H太陽電池の

J-V特性の比較を示す。参考として、AZO単層膜基板上に形成した太陽電池のJ-V特性を併 せて示した。また、各電極基板を用いて形成したμc-Si:H太陽電池における発電特性の推移

を図6.21(b) に示した。J-V特性の比較より、図6.15においてみられた太陽電池における並

列抵抗成分の減少が、LG 層形成時における液体ガラスのスピンコーティング速度を 4000

[rpm] および2000 [rpm] としたAZO-SSP基板を太陽電池の電極とした場合では発生してい

ないことが確認できる。この結果は、LG層形成膜厚を増加させたことにより、AZO-SSP基 板表面の凹凸形状がなだらかになり、その凹凸構造上に形成されたμc-Si:H薄膜内部におけ る粒界の発生が低減されたために生じたものと考えられる。また、LG層形成時におけるス ピンコーティング速度減少に伴い、太陽電池のJ-V特性において直列抵抗成分のわずかな減 少がみられた。この太陽電池における直列抵抗成分の減少は、図6.12に示したように、LG 層形成膜厚の増加に伴いAZO膜の膜質が向上し、AZO膜における抵抗率の値が低下したこ とに起因すると考えられる。この太陽電池における並列抵抗成分の増加および直列抵抗成 分の減少により、LG層のスピンコーティング速度を8000 [rpm] から2000 [rpm] へと変え た場合における太陽電池のFFの値は0.69から0.75へと大幅に向上した。また、そのFFの 値はAZO単層膜上に形成された太陽電池のFF(0.76)と同様の値を示した。

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6.21 LG層形成時におけるスピンコーティング速度を変えたAZO-SSP基板を電極とし

たμc-Si:H太陽電池における(a)J-V特性および(b)各発電特性の比較. 参考とし

て、AZO単層膜基板上に形成した太陽電池におけるJ-V特性および各発電特性の 値を併せて表記した.

0 5 10 15 20

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

8000 rpm 4000 rpm 2000 rpm Flat AZO Current density [mA/cm2 ]

Voltage [V]

(a)

5.0 5.5 6.0 6.5 7.0

Flat AZO 2000 4000 6000 8000

Effciency [%]

Rotating speed [rpm]

FF

0.60 0.65 0.70 0.75 0.80 V OC [V]

0.45 0.50

0.55 14.0

15.0 16.0 17.0 18.0

J SC[mA/cm2 ]

(b)

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AZO-SSP基板を電極として用いた太陽電池におけるVOCの値は、LG層形成時におけるス

ピンコーティング速度の減少とともにわずかに低下する傾向を示した。その結果、LG層の スピンコーティング速度を8000 [rpm] から2000 [rpm] に変えた場合において、太陽電池の VOCの値は0.51 [V]から0.49 [V] に減少した。この太陽電池におけるVOCの減少はAZO-SSP 基板表面におけるRMS値の減少と相関がみられることから、基板表面に形成した凹凸構造 がLG層の形成膜厚の増加に伴ってなだらかとなり、太陽電池を構成するμc-Si:H薄膜の結 晶性が向上した結果生じたものと考えられる。

太陽電池における JSCの変化に着目したところ、LG層形成時における液体ガラスのスピ ンコーティング速度を減少させた結果、その値は大きく低下する傾向を示した。その結果、

LG層形成時におけるスピンコーティング速度を8000 [rpm] から2000 [rpm] へと減少させ た場合において、AZO-SSP基板上に形成した太陽電池におけるJSCの値は17.2 [mA/cm2]か ら15.0 [mA/cm2] へと低下した。また、2000 [rpm] のスピンコーティング速度において形成

したAZO-SSP基板を用いた太陽電池のJSCの値は、AZO単層膜基板を用いた場合における

JSCの値14.9 [mA/cm2] とほぼ同じ値を示した。この太陽電池におけるJSCの減少は、LG層 の形成膜厚を増加させたことにより、AZO-SSP 基板表面に形成される凹凸構造の高低差が 減少し、太陽電池内部における光閉じ込め性能が大きく低下した結果生じたものと考えら れる。

AZO-SSP 基板上に形成した太陽電池の発電効率の値は、上述した各発電特性の変化に伴

い、LG 層形成時における液体ガラスのスピンコーティング速度に対して依存性を示した。

その結果、LG層形成時におけるスピンコーティング速度の値が4000 [rpm]において、太陽 電池における変換効率の最大値約6.0 [%] (JSC: 16.2 [mA/cm2]、VOC: 0.50 [V] およびFF: 0.74)

が得られた。また、この変換効率の値はAZO単層膜基板を用いた太陽電池における変換効 率(5.5 [%]、JSC: 14.9 [mA/cm2]、VOC: 0.49 [V] およびFF: 0.75)の値に比べて約10 [%] 増加 した。

次に、LG層の形成膜厚を変えた場合における太陽電池構造での反射損失の変化を評価し た。図 6.22にLG 層形成時での液体ガラスのスピンコーティング速度を変えた場合におけ る太陽電池の反射率スペクトルの比較を示す。また、参考としてAZO単層膜基板上に形成 した太陽電池の反射率スペクトルを併せて示した。図より、AZO-SSP 基板におけるLG 層 の形成膜厚を増加させた場合において、近赤外領域の光に対する反射率スペクトルの増加 が確認でき、反射率スペクトルにおける光学干渉の高低差が増加する傾向を示した。その結 果、可視光領域においても、太陽電池における反射損失の増加がみられた。近赤外領域の光 に対する反射損失増加の主な要因としては、図6.20(b) に示した近赤外領域におけるヘイズ 率スペクトルの低下が挙げられる。電極基板における光の散乱性が低下した結果、太陽電池 内部における光の閉じ込め効果が減少し、反射損失の増加がみられたものと考えられる。一 方、反射率スペクトルの光学干渉における高低差の変化は、AZO膜とSi薄膜界面における 反射がLG層の形成膜厚とともに増加したため生じたものと考えられる。一般的に、

120

6.22 LG層形成時のスピンコーティング速度を変えた場合でのAZO-SSP基板上に形成

したμc-Si:H太陽電池における反射率スペクトルの比較. 参考としてAZO単層膜

基板上に形成された太陽電池の反射率スペクトルを併せて示す.

TCO 基板上における微細な凹凸構造形成は、太陽電池内部へと光を散乱させるためだけで はなく、Si薄膜とTCO膜の界面における反射損失を低減させるためにも用いられる。TCO 基板表面凹凸構造を形成していない場合、その構造はTCO / Si薄膜となり、界面に入射意 した光はそれぞれの屈折率差に応じた反射の影響を受ける。なお、異なる屈折率を有する物 質界面間における光の反射に関しては第7章において詳しく記述する。一方、TCO表面に 凹凸構造を形成した場合、その構造はTCO / (TCO + Si) / Si となり、凹凸上においてTCO とSi薄膜の混在した中間層が形成された形をとる。薄膜Si系太陽電池では、この中間層を 形成することにより、界面における屈折率の値を徐々に変化させ、TCO / Si薄膜界面におけ る反射損失の低減を図っている。図6.22に見られる反射率スペクトルの光学干渉の変化は、

凹凸構造によるTCOとSi薄膜界面における反射損失低減効果が、LG層の形成膜厚の増加 に伴い減少したため生じたものと考えられる。しかし、このTCO界面における反射ロスの 低減は、TCO 膜表面における可視光波長程度の凹凸形成により実現が可能である。そのた め、LG層形成時のスピンコーティング速度を8000 [rpm] 以下とした場合においても、TCO 表面に微細な凹凸形成による反射率スペクトルの低減が期待できる。

最後に、量子効率測定の結果より得られた太陽電池における光の吸収性について評価す る。図6.23(a) にLG層の形成膜厚を変えたAZO-SSP基板を電極として用いたμc-Si:H太陽 電池における外部量子効率スペクトルの比較を示す。また、参考としてAZO単層膜基板の 外部量子効率を併せて示した。図より、AZO-SSP 基板における LG層の形成膜厚を増加さ せた場合において、波長700 [nm] 以上における太陽電池の外部量子効率の減少を確認した。

また、その外部量子効率の値は、LG層のスピンコーティング速度を2000 [rpm] とした場合 において、AZO-SSP基板と同程度の値を示した。図6.20(b) に示したヘイズ率スペクトルの

0 20 40 60 80 100

400 600 800 1000 1200

8000 rpm 4000 rpm 2000 rpm Flat AZO

Reflectance [%]

Wavelength [nm]

121

変化より、この近赤外領域における外部量子効率の減少は波長700 [nm] 以上におけるヘイ ズ率の低下により生じたものと考えられる。またこの結果から、図6.21に示したμc-Si:H太 陽電池における電流密度減少の主な要因が、太陽電における近赤外領域の光閉じ込め効果 の低下にあることを示した。一方、LG層の形成膜厚を増加に伴い、波長500-700 [nm]にお ける外部量子効率の向上を確認した。しかし、図6.20(b) のヘイズ率スペクトルの推移より、

この波長領域における光散乱性の変化は確認できなかった。また、図6.22に示した反射率 スペクトルの比較より、太陽電池のLG層の形成膜厚の増加とともに可視光領域における反

6.23 LG層形成時のスピンコーティング速度を変えたAZO-SSP基板を電極基板として

用いたμc-Si:H太陽電池の(a)外部量子効率スペクトルおよび(b)内部量子効率

スペクトルの比較. 参考としてAZO単層膜基板上に形成した太陽電池の結果を 併せて示す.

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8

400 600 800 1000 1200

8000 rpm 4000 rpm 2000 rpm Flat AZO

EQE

Wavelength [nm]

(a)

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

400 600 800 1000 1200

8000 rpm 4000 rpm 2000 rpm Flat AZO

IQE

Wavelength [nm]

(b)

122

射損失の増加を確認した。これらの結果から、この波長500-700 [nm] における太陽電池の 外部量子効率の向上が、太陽電池内部に取り込まれる光の量が増加したことによるもので はなく、内部におけるキャリアの再結合損失が減少したために生じたものと推測できる。次

に、図6.22および図6.23(a)の結果から、μc-Si:H太陽電池における内部量子効率の変化を調

べた。AZO-SSP基板におけるLG層の形成膜厚を変えた場合におけるμc-Si:H太陽電池の内

部量子効率の変化を図 6.23(b) に示す。LG 層の形成膜厚を増加させた結果、波長 500-700

[nm] における太陽電池の内部量子効率が明らかに向上していることを確認した。この結果

より、μc-Si:H太陽電池における波長500-700 [nm] での外部量子効率の向上が、太陽電池内 部におけるキャリアの再結合損失の減少に起因していることを示した。また、AZO-SSP 基 板形成時におけるLG層の塗布膜厚を調整することにより、μc-Si:H 薄膜内部における欠陥 領域形成を抑制可能であることを示した。

以上の結果より、LG層の形成膜厚を調整することによってμc-Si:H 薄膜内部における粒 界の生成を抑制し、太陽電池の高効率化が可能であることを示した。一方、内部量子効率の 増加に伴う外部量子効率の向上は確認できていないことより、本研究において作製した

AZO-SSP 基板上の μc-Si:H 太陽電池が可視光領域において高い光閉じ込め性能を有してい

ないことがわかる。しかし、可視光領域における光閉じ込め性能は、TCO 膜表面に可視光 波長程度の凹凸構造を形成することによって向上可能であり[7]、AZO-SSP基板表面上への 微細な凹凸形成により、太陽電池の更なる変換効率向上を期待できる。

まとめ

本章では、薄膜Si系太陽電池における近赤外領域での光の吸収損失低減を目的として、

ガラス基板表面への近赤外領域の光に対して高い散乱性を有する凹凸構造の形成について 議論を行った。ガラス基板表面における凹凸構造は、液体ガラス溶媒および球状シリカ粒子 を用いることにより形成した。形成した凹凸構造上へはマグネトロンスパッタリング法を 用いてAZO膜の製膜を行い、近赤外領域において高い光散乱性を示す電極基板の作製を試 みた。

LG層上へAZO膜を製膜し、LG層の有無におけるAZO膜の電気的特性および光学特性 を比較することにより、下地としてのLG層がAZO膜の物理的特性に大きく影響しないこ とを確認した。また、シリカ粒子上にLG層を形成した場合において、形成された凹凸によ り強く散乱の影響を受ける光の波長域が、LG層内部に取り込まれたシリカ粒子の粒径に比 例して増加する傾向にあることを示し、その散乱波長域がシリカ粒子の粒径に対してわず かに低い値をとることを確認した。凹凸構造上にAZO膜を製膜した場合において、作製し

たAZO-SSP基板のヘイズ率スペクトルは下地として使用したLG層のヘイズ率スペクトル

と良い一致を示した。