第 4 章 試料の作製および評価手法
4.9 太陽電池の発電特性評価
作製した太陽電池の発電特性評価を行うため、ソーラーシミュレーターを用いた光照射 時における電流電圧測定、および各波長における量子効率測定を行った。以下で、それぞれ の評価手法について簡潔に述べる。
4.9.1 ソーラーシミュレーターによる光照射時における電流電圧特性評価
疑似太陽光を用いて、作製した太陽電池の光照射時における電流電圧特性の評価を行っ た。太陽電池の電流電圧特性については第2章にて述べたため、詳しい説明は省略し、本節 では測定条件についてのみ述べる。
本研究では、評価に用いる疑似太陽光として、Xeを光源としたソーラーシミュレーター
(YSS-50A、山下電装株式会社)を用いた。光照射時における太陽電池の電流電圧は、プロ グラミングソフトLabVIEWにより構築された自動計測プログラムを用いて、コンピュータ
55
ー制御下にて測定を行った。このとき、太陽電池に印加する電圧源および光照射によって発 生した電流の測定装置としてADVANTEST製のDC Voltage Current Source/Monitor(R6243)
を用いた。本研究における太陽電池の電極面積は 4 mmとし、標準条件下(AM-1.5、100
[mW/cm2]、25 [C] )において太陽電池の電流電圧特性を評価した。
4.9.2 太陽電池の量子効率測定[19]
太陽電池の発電特性を評価する際、ある波長の光に対してどれだけの吸収感度があるか を知ることは、太陽電池の高効率化の観点から非常に重要である。一般的に、一定のパワー の単波長光に対し、発電して得られた電流の割合を分光感度と呼ぶ。一方、照射した光子(フ ォトン)数に対する、発電して得られたキャリア数の割合を量子効率と呼ぶ。分光感度SR (λ)は以下の式にて求められる。
𝑆𝑅(𝜆) =𝐼𝑆𝐶(𝜆)
𝑃(𝜆) (4 − 23)
ここで、ISC (λ)は単波長照射時に得られ短絡電流密度、P (λ)は照射した波長におけるフォト ンエネルギーを示す。また、量子効率の値は分光感度を換算することにより求めることが可 能であり、次の式にて表される。
𝑄𝑂𝑈𝑇=ℎ𝑐
𝑞𝜆× 𝑆𝑅(𝜆) × 100 (4 − 24)
ここで、hはプランク定数、c は真空中における光の速さ、q は電気素量をそれぞれ示す。
基本的には、入射したフォトン1つに対して電子・正孔対が一つ生成されるため、量子効率 では励起したキャリア数に対する回収したキャリア数を表す。なお、(4-23)式にて導出さ れる量子効率の値は、太陽電池の反射による光学ロスを考慮しておらず、外部量子効率と呼 ばれる。そのため、照射したフォトン数と太陽電池内部へと入射したフォトン数が異なり、
光によって生成したキャリアのうち、どの程度が回収できているのかという情報を得るこ とができない。そこで、入射光から表面反射分を差し引いて求めた量子効率を新たに内部量 子効率として定義する。内部量子効率は太陽電池表面における各波長における反射率を R (λ)としたとき、以下の式で表される。
𝑄𝐼𝑁= 𝑄𝑂𝑈𝑇(𝜆)
{1 − 𝑅(𝜆)} (4 − 25)
56
通常、光の吸収感度の違いより、短波長領域の光は吸収されやすく、長波長領域の光は吸 収されにくい。短波長の光は、太陽電池の比較的浅い領域においてキャリアを励起させるた め、p/i 界面における再結合の影響を受けやすい。一方、長波長の光では、その吸収係数の 低さから、太陽電池内部においてキャリアを励起させるために長い移動距離を必要とする。
そのため、電極表面に形成された凹凸構造における光閉じ込め効果の影響を大きく受ける。
よって、光閉じ込め効果の評価を行う場合では、太陽電池表面における反射率および長波長 領域における量子効率の値が着目される。本研究においても、作製したTCO基板上に形成 された太陽電池内部における光閉じ込め効果を評価するため、量子効率測定装置(SRM-006、
英弘精機)による量子効率測定を行った。
参照文献
[1] 粉体工学の基礎編集委員会(編):粉体工学の基礎、pp.241-278、日刊工業新聞 (1992).
[2] 小島啓安(著):現場のスパッタリング薄膜 Q&A、日刊工業新聞 (2012) [3] 小長井誠(編著):薄膜太陽電池の基礎と応用、pp.63-109、オーム社 (2001).
[4] Y. Mishima, Jpn. J. Appl. Phys., 22, L46 (1983).
[5] T. Saito, Appl. Phys. Lett., 42, 678 (1983).
[6] H. Matsumura, J. Non-Cryst. Solids, 97/98, 1379 (1987).
[7] W. E. Spear, P. G. LeComber, Solid State Commun., 17 1193 (1975).
[8] S. Y. Myong, S. S. Kim, K. S. Lim, J. Appl. Phys., 95, 1525-1530 (2004).
[9] V-670型分光光度計―取扱説明書―、日本分光 (2010).
[10] K. C. Krogman, T. Druffel and M. K. Sunkara, Nanotechnology 16 (2005) S338-S343.
[11] P. Tao, Y. Li, A. Rungta, A. Viswanath, J. Gao, B. C. Benicewicz, R. W. Siegel and L. S. Schadler, J. Mater. Chem. 21(2011) 18623-18629.
[12] M. Bass, Handbook of Optics, Vol. 2. (McGraw-Hill 1994)
[13] S. Tanemura, L. Miao, P. Jin, K. Kaneko, A. Terai and N. N. Gabain, Appl. Surf. Sci. 212-213 (2003) 654-660.
[14] M. Mizuhashi, Y. Gotho, K. Adachi, Jpn. J. Appl. Phys., 27, 2053-2061 (1988).
[15] 日本学術振興会 透明酸化物光・電子材料第 166 委員会(編):透明導電膜の技術、
pp.320-321、オーム社 (2008).
[16] 高橋清(著):半導体工学、pp.240-246、森北出版 (1999).
[17] V. D. Cullity: Elements of X-ray Diffraction, Addison-Wesley, Reading, MA (1978).
[18] 出典:制御PC装置内部資料 “SmartLab axis motion”.
[19] 小長井誠(編著):薄膜太陽電池の基礎と応用、pp.43-46、オーム社 (2001).
57