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スピンコート法によるガラス基板上への光学構造形成

第 4 章 試料の作製および評価手法

4.1 スピンコート法によるガラス基板上への光学構造形成

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4.1 溶媒中に存在する粒子が形成する拡散電気二重層

の雲が圧縮され、電気二重層の厚みが薄くなる。このようなイオン雰囲気を伴った粒子が互 いに接近した場合、イオン雰囲気が重なり合い、粒子間において反発力が発生する。そのた め、電解質濃度が濃いほど、近接粒子同士における反発力は強くなることが知られている。

一方で、電気二重層の厚みが薄くなるため、遠距離領域における粒子間の反発力は非常に小 さくなる。電気二重層による粒子間の単位面積あたりにおけるポテンシャルエネルギーVp

は次の式で表される。

𝑉𝑝=64𝑛0𝑘𝑇

𝜅 𝛾2𝑒−2𝜅𝑑 (4 − 1)

ただし、

γ =𝑒𝑌 2 − 1

𝑒𝑌 2 + 1 , 𝑌 =𝑧𝑒𝛹0 𝑘𝑇

である。ここで、n0は分散初期の粒子個数濃度、κは電気二重層の厚さの逆数、dは粒子間

距離の1/2、zは対イオンの原子価、Ψ0は粒子表面の電位を示す。

次にvan der Waals力について説明する。粒子同士が近距離まで接近した場合において影

響が強くなる力がvan der Waals力である。そのため、そのポテンシャルエネルギーは粒子 間の距離が近いほど高くなる。粒子の大きさに対して十分近距離程度まで接近した場合に おける平板粒子間に作用するvan der Waals力の単位面積当たりでのポテンシャルエネルギ ーVAは次の式で表される。

32 𝑉𝐴= −𝐴

48𝜋𝑑2 (4 − 2)

ここで、AはHamaker定数であり、巨視的物体間のvan der Waals力を与える定数である。

この(4-2)式より、粒子間に働くvan der Waals力は粒子間距離が近いほど急激に強くなり、

粒子同士に対して互いに引き合う力が発生しているということが示唆される。

互いに接近した粒子間における相互作用の全ポテンシャルエネルギーVtVpVAの和 として次のように与えられる。

𝑉𝑡 = 𝑉𝑝+ 𝑉𝐴 (4 − 3)

図4.2にVtdの関係を模式的に示す。粒子間のポテンシャルエネルギーはVpVAにより 形作られるポテンシャル障壁Vmを挟んで、粒子近傍の深い谷(第1極小)と粒子遠方の浅 い谷(第2極小)を有している。このことから、熱運動などによりある粒子近傍まで接近し た他粒子は深いポテンシャルの谷にとらわれ凝集する。一方、遠方の浅いポテンシャルの谷 にとらわれた粒子に関しても凝集が発生するが、ポテンシャルの谷が浅いために外部から の振動等によって容易に分散させることが可能となる。ポテンシャル障壁の高さは粒子の 径と相関性があり、一般的に粒径が小さいほど障壁が小さく、容易に第1極小へと粒子が到 達可能であるため凝集が発生しやすい。また、溶液中に存在するイオン濃度や粒子表面に存 在する電荷量もポテンシャル障壁の高さに影響を与えるため、通常の分散処理では溶媒中 へイオンや界面活性剤等の分散剤を添加することにより、ポテンシャル障壁の高さ等を調 整し、粒子の分散が行われる。

4.2 粒子間距離と全ポテンシャルエネルギーの模式図

33 (b) 超音波破砕機による分散処理

通常、大気中に粉末状態で保管されている微粒子同士は空気中の水蒸気や、van der Waals 力等により凝集した状態にある。そのため、このまま微粒子粉末を溶媒中へと混合したとし ても、凝集粒子はほとんど解離することはなく、良質な分散溶媒を作製することは困難とな る。よって、粉末試料から分散溶媒を作製する場合、凝集粒子の解離・分散処理が必要とな る。凝集粒子の解離処理としては、粒子同士がこすれ合った際に生じる剪断力を用いる手法 や、超音波振動により生じた衝撃を用いる手法等がある。特に、超音波を用いる手法では、

少量の試料においても高い分散性を持たせることが可能である。本研究においても、超音波 破砕機を用いて分散溶媒の作製を試みた。以下では超音波破砕機の装置構成および原理に ついて簡単に紹介する。

図4.3(a)に実験に使用した超音波破砕機(Qsonica Q500、ワケンビーテック)の概略図を

示す。超音波破砕機は超音波の発信器、コントロールボックス、および超音波を出力するホ ーンにより構成される。ホーンの先端は分散処理を行う微粒子混合溶媒中へと挿入されて おり、ホーンを通して溶液中へと超音波振動を与えることによって、溶媒内部に圧力差を発 生させる。この際、圧力差によってキャビテーションと呼ばれる微小な気泡が溶媒内部にお いて発生する(図 4.3(b))。これらの気泡が破裂する際に衝撃波が発生し、溶媒中に存在す る粒子に繰り返し激しい衝撃を与える。この衝撃により、凝集していた粒子の一部が解離し、

その後、その表面を溶媒および分散剤が覆うことによって粒子の分散が行われる。そのため、

超音波を繰り返し溶媒中へと印加することにより、凝集していた粒子を単一粒子にまで分 離・分散させることが可能となる。

4.3 (a)超音波破砕機の概略図、および(b)溶媒中に発生するキャビテーション

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なお、本研究においては、均一な微粒子の分散処理を行うために、撹拌子を用いた分散溶 媒の撹拌を行った。また、超音波破砕時において発生する熱によって溶媒が揮発してしまう ことを防ぐため、溶媒の入っている容器は氷水により常に冷却されている状態とした。すべ ての破砕処理は防音ボックス内にて行い、周囲への騒音被害および分散溶媒の周囲への飛 散を防止した。

4.1.2 スピンコーティング法による薄膜形成

本研究では、支持基板上における微粒子分散溶媒や液体ガラス等の液体試料の塗布手法 としてスピンコーティング法を用いた。スピンコーティング法とは、薄膜の形成が行われる 支持基板を回転させ、基板上へと滴下した液体試料を回転の遠心力によって基板全面へと 塗布する手法である。スピンコーティング法の特徴としては、装置構成が単純であり、液体 試料を再現性高く基板上に塗布できることから、小~中面積試料の作製に有効であるとい う点が挙げられる。図4.4にスピンコーティング法の概略図を示す。本研究にて使用したス ピンコーティング装置の構成は、装置本体および基板の吸着に使用するダイアフラムポン プからなる。装置中央部には試料を載せる試料台が配置されており、試料台の中央部にはダ イアフラムポンプに直結した吸気口が設けられている。基板の回転時、この吸気口からポン プを用いて基板の吸引を行うことにより、回転時に発生する遠心力による基板の位置ずれ を防止する。基板の回転速度および回転時間は装置前面に設けられた操作パネルにて設定

でき、0–8000 [rpm] の回転速度にて液体試料の塗布・製膜を行うことが可能となる。基板回

転時、基板上へと滴下された液体試料は基板の外周へと向けた遠心力の影響を受ける。この 遠心力により、液体試料は基板上に広がっていき、試料の塗布が行われる。また、遠心力は 回転速度により大きく変化するため、回転速度が速いほど液体試料にかかる遠心力は強く なり、基板上に形成される層の厚みは薄くなる。そのため、基板の回転速度を変えることに よって比較的任意な膜厚を有する薄膜層を基板上へと形成することが可能となる。

4.4 スピンコーティング法の概略図

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基板上へと塗布された試料は、内部に存在する溶媒の除去、および形成された光学層の膜 質向上を行うため、大気中における塗布基板の乾燥および焼成処理を行う。乾燥処理には高 温乾燥装置を用い、70 [C] の雰囲気下において任意の時間乾燥処理を行った。その後、セ ラミックス板上に試料を載せ、電気炉により 200–650 [C] の高温条件にて任意の時間焼成 処理を行った。