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スパッタリング装置を用いた透明導電膜の製膜 [2]

第 4 章 試料の作製および評価手法

4.2 スパッタリング装置を用いた透明導電膜の製膜 [2]

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基板上へと塗布された試料は、内部に存在する溶媒の除去、および形成された光学層の膜 質向上を行うため、大気中における塗布基板の乾燥および焼成処理を行う。乾燥処理には高 温乾燥装置を用い、70 [C] の雰囲気下において任意の時間乾燥処理を行った。その後、セ ラミックス板上に試料を載せ、電気炉により 200–650 [C] の高温条件にて任意の時間焼成 処理を行った。

36 4.2.2 装置構成および製膜手順

以下では、本研究で使用した実験装置および実験条件について説明する。図4.5にRFマ グネトロンスパッタリング装置の概略図を示す。本研究で使用したスパッタリング装置

(AV293-000、株式会社シンク)は、チャンバー底部には膜材料となるターゲット(直径:

71 [mm])および永久磁石を内蔵した金属電極が、上部には膜の付着を行う支持基板をセッ トすることが可能なヒーター兼電極がそれぞれ設置された構造をとる。電極間の距離は 75

[mm] となっており、その中ほどにはシャッターが取り付けられている。また、上部電極は

アースにより接地されている。ターゲット側の電極には高周波電源であるRF電源が接続さ れており、ダイヤルにより出力および位相の調整を行う。チャンバー内の排気にはロータリ ーポンプ(RP)およびターボ分子ポンプ(TMP)を使用し、ヒーターによる基板の加熱が終 了後、8.0  10-4 [Pa] 以下の背圧となるまで真空引きが行われている。製膜時に用いるスパ ッタリングガスとしてはAr (99.99 [%])ガスを使用し、マスフローコントローラー(MFC)

を用いてガス流量を20 [sccm] に統一してチャンバー内へと導入する。ガス導入中の排気に はTMP を使用し、チャンバー内におけるガス圧力の調整はTMPとチャンバーとを隔てる メインバルブにより行う。ガス導入後、ガス圧力1.0 [Pa]および投入電力50 [W] にて10分 間のプレスパッタを行い、ターゲット表面に付着した表面酸化膜等の不純物除去を行う。そ の後、任意の製膜条件にあわせて投入電力および製膜圧力を調整し、シャッターを開放する ことで製膜を行う。表4.1に本研究にて使用した基本的な電極形成条件を示す。

4.5 RFマグネトロンスパッタリング装置の概略図

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4.1 各電極薄膜の基本的な製膜条件

ターゲット 主物質 不純物 圧力 出力 ヒーター温度 製膜速度

[wt%] [Pa] [W] [C] [nm/min]

(1) AZO ZnO Al2O3 (1.0) 0.5 100 400 20.0

(2) ITO In2O3 SnO2 (10.0) 0.5 100 150 10.0

(3) ITO In2O3 SnO2 (10.0) 0.7 100 RT 7.0

(4) Ag Ag - 1.0 50 RT 16.0

4.3 薄膜 Si 系太陽電池の製膜[3]

本研究では、光学層を形成した透明電極基板の最終的な評価を行うため、電極基板上へ

とa-Si:Hもしくはμc-Si:H 太陽電池を形成し、その発電特性に与える影響の調査を行った。

a-Si:H太陽電池の作製には本研究室にて所有する四室分離型薄膜 Si製膜装置(株式会社シ

ンク製)を用いた。μc-Si:H 太陽電池に関しては茨城県つくば市にある産業技術総合研究所 に協力していただき、作製および評価を行った。本節では、主に本研究室の四室分離型薄膜 Si製膜装置の装置構成、およびa-Si:H太陽電池の製膜条件について述べる。なお、μc-Si:H 太陽電池に関する装置構成等の詳しい説明は省略する。

4.3.1 四室分離型薄膜Si製膜装置

現在、薄膜Si系太陽電池の製造技術の一つとして化学気相堆積(Chemical Vapor Deposition:

CVD)法が用いられている。CVD法では SiH4および H2を原料ガスとして用いることによ

り、a-Si:H中に発生するダングリングボンドが終端され、スパッタリング法や真空蒸着法等

の他の製膜手法に比べて欠陥密度の値が大幅に低い膜を作製することが可能となる。また、

SiH4やH2に加えて、B2H6やPH3といったガスを不純物ガスとして混合させることにより、

Si薄膜中へのドーピングも容易である。CVD法には原料ガスを真空紫外光により励起分解 する直接光CVD法[4]、水銀原子の長寿命励起状態と原料ガスとの衝突励起解離利用した水 銀増感光CVD法[5]、タングステン等の熱触媒効果を利用するHot-Wire CVD法[6]、および プラズマ中の電子による原料ガスとの非弾性衝突を利用したプラズマ励起 CVD(Plasma Enhanced CVD: PECVD)法等があるが[7]、本研究では特にHot-Wire CVD法およびPECVD 法を用いてa-Si:H太陽電池の形成を行った。

本研究に用いた四室分離型薄膜Si製膜装置の概略図を図4.6に示す。本装置は薄膜Siの 製膜を行うそれぞれ2つのPECVDチャンバーとHot-Wire CVDチャンバー、そしてそれら を繋ぐ搬送室から構成される。搬送室および各製膜チャンバーの真空引きには RP および TMPが用いられる。各チャンバーはゲートバルブによって完全に分離されており、薄膜Si 系太陽電池のp、i、nの各層製膜時において膜中に他の不純物ガスが混入することを防いで

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4.6 (a)四室分離型薄膜Si製膜製膜装置、(b)PECVD装置、および(c)Hot-Wire CVD 装置の概略図

いる。また、搬送室により各チャンバーがつながっているため、大気暴露することなく、各 チャンバー間において試料を搬送することが可能である。搬送室から各チャンバー内へと 移送された基板は、基板ホルダーごとリフトによって上部電極へと持ち上げられる。上部電 極はヒーターの役割も兼ねており、基板ホルダーを上部へと押し付けることにより基板の 加熱を行う。基板の加熱および真空引きが終了後、原料ガスをチャンバー内へと導入し、製 膜を開始する。

(a)

(b) (c)

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4.3.2および4.3.3では、Si薄膜の製膜に用いたPECVD法およびHot-Wire CVD法の簡単 な原理について説明する。

4.3.2 PECVD

PECVD法によるSi薄膜の体積過程は、原料ガスプラズマ中に存在する高エネルギー電子

お原料ガス分子であるSiH4との非弾性衝突から開始される。この高エネルギー電子との衝 突により、SiH4の分子軌道における基底状態にある電子が分子軌道の電子励起状態へと励 起される。SiH4の分子軌道における電子励起状態は分解励起状態であり、励起状態の順位に 依存して様々な種類の分解を引き起こす。その結果、SiH2やSiH3といった各種反応種が形 成される。このようにして生成された反応種はさらに親分子であるSiH4と二次反応を引き 起こし、定常状態となる。中でもSiH3は定常状態時における密度が高く、a-Si:H 製膜時に おける主たる反応種であると考えられている。

Si薄膜堆積過程ついて説明する。Si薄膜製膜時においては上述したSiH3の挙動が重要と なる。図4.7はSi薄膜における成長の様子を示す。SiH3ラジカルはSiH4分子から水素原子 を受け取るSiH3 + SiH4 = SiH4 + SiH3という反応を引き起こす。膜成長表面に到達し、表面 を拡散中のSiH3ラジカルは膜表面に存在する他のSi-H結合より、水素を引き抜き、自らは SiH4となって表面から離脱する。この時、水素を引き抜かれた膜表面のSiにはダングリン グボンドサイトが形成される。このサイトに他のSiH3ラジカルが表面拡散により到達し、

Si-Si結合を形成することによりSi系薄膜の成長が進行する。そのため、表面に形成される

ダングリングボンドの消滅にはSiH3の拡散係数が重要となり、エネルギーの低い室温程度 の製膜温度ではSiH3の表面拡散係数が小さいため、欠陥の多い膜が形成される。一方、300C 以上の製膜温度では膜表面からの水素離脱が生じるため、膜中における欠陥密度が増加す ることになる。そのため、Si薄膜の形成時には200C程度の基板温度が用いられる。

PECVD装置の電源としては高周波電源が用いられる。本研究ではRF電源に比べて電源

周波数が高いVHF(60 MHz)電源を用いた。VHFプラズマの利点としては、RFプラズマ

4.7 Si系薄膜の体積過程

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に比べて電源周波数が高いことから、電子の衝突回数が増加し、高電子密度なプラズマが形 成可能な点が挙げられる。そのため、多量のH2ガスを分化することが可能となり、高い原 子上水素密度化においてSi 薄膜の製膜が可能となるため、緻密で高品質な膜の形成が可能 となる。また、電子の加速時間が短いためにプラズマ中における電子温度が低く、基板に堆 積したSiへのイオンダメージ低減が期待できる。本研究ではa-Si:H太陽電池のp-a-SiC:H、

buffer-a-SiC:H、およびi-a-Si:H層の製膜にPECVD法を用いた。

4.3.3 Hot-Wire CVD

Hot-Wire CVD法ではプラズマの代わりに、金属フィラメントなどを2000 [C] 程度まで

加熱し、そのフィラメント表面に衝突したガス分子をフィラメントの持つ熱エネルギーを 用いて熱分解あるいは触媒分解させることで反応種の生成を行う。また、反応過程において 触媒作用が働くという理由から、Catalytic CVD(Cat-CVD)法とも呼ばれる。膜の成長過程 に関してはPECVDと同様であるが、フィラメントにおけるガスの分解効率が高いため、原 料ガスの利用効率が高く、Si膜を結晶化させやすいという利点がある。

Hot-Wire CVD法における触媒効果によるガスの分解効率は使用するフィラメントの材料

によって異なる。また、加熱温度や使用する金属の種類によってはSiと金属の化合物であ るシリサイドを形成し、フィラメントの寿命やガスの分解効率等の劣化を引き起こすため、

使用するフィラメントの選択が重要となる。本研究では、高い高温耐性を有し、高温下にお いてシリサイドを生成しづらいTa(幅:1.0 [mm]、長さ:90 [mm]、厚み:0.1 [mm]、放射 率:0.36)をフィラメントとして用いてn-μc-Si:Hの製膜を行った。

4.3.4 a-Si:H太陽電池の構造および製膜条件

本研究にて形成したa-Si:H太陽電池の構造およびその基本的な製膜条件について述べる。

本 研 究 に お い て 作 製 し た 太 陽 電 池 の 基 本 構 造 は TCO/p-a-SiC:H/buffer/i-a-Si:H/

n-μc-Si:H/ITO/Agのスーパーストレート型pin構造である。p層およびn層へのドーピングガス

にはそれぞれB2H6およびPH3を用いた。また、光吸収ロスを低減するため、CH4の導入を 行うことでワイドギャップ半導体であるa-SiC:Hを作製し、p層として用いた。しかし、ワ イドギャップ半導体であるa-SiC:Hとa-Si:Hとの界面ではヘテロ接合が形成され、多くの欠 陥準位が発生し、界面付近において励起されたキャリアの再結合センターとして働く。よっ て、B2H6によるドーピングを行っていないi-a-SiC:H をバッファー層として界面に製膜し、

キャリアの追い返しによる再結合損失の低減を行った[8]。また、Si/裏面金属電極界面には ITO膜を製膜し、表面プラズモンによる吸収ロスの低減を図った。

表4.2に作製したa-Si:H太陽電池の各Si層における製膜条件および設計膜厚を示す。な お、太陽電池製膜時においてp層、buffer層、およびi層におけるガスの排気にはTMPを 用いた。一方、n層製膜時におけるガス排気にはRPを用いた。各種ガスの導入量は、個別 にチャンバー内へとガスを導入し、その分圧を測定することにより行った。また、p、