第 7 章 液体ガラスを用いたガラス基板上への反射防止膜形成
7.3 光学モデルおよび反射率スペクトルを用いた反射防止膜の物性値評価
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以上の結果より、空気/ガラス界面におけるAR膜としては、屈折率1.23を有する物質が最 適であり、膜厚が122 [nm] の場合において波長600 [nm] における光の反射率を0にできる ことがわかる。しかし、実際のガラス基板上におけるAR膜では、完全反射防止となるn = 1.23ほどの低屈折率材料が存在しない。そのため、屈折率1.23に次ぐ低い屈折率を有する MgF2 (n = 1.38 @600 [nm] )が用いられている[3,4]。その結果、ガラス表面の反射率を約4
[%]から1 [%] 程度にまで低減することが可能となる[1]。
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図7.2 本研究で構築した光学モデル
また、実際に測定された反射率スペクトルには試料裏面におけるガラス/大気界面の反射が 存在する。光学モデルを用いて反射率スペクトルのフィッティングを行う場合、この試料裏 面における反射率RGAの影響を併せて考慮する必要がある。いま、LG層を透過してガラス 基板内部へと入射した光の透過率TALGは次のように表される。
𝑇𝐴𝐿𝐺= 1 − |𝑟𝐴𝐿𝐺|2= 1 − 𝑅𝐴𝐿𝐺 (7 − 14)
LG層を透過した光はガラス基板中を直進し、その後ガラス/大気界面へと到達する。ガラス
/大気界面に到達した光は反射率 RGAの割合で反射される。反射された光は再度ガラス基板
中を直進し、LG層中にて多重干渉の影響を受けたのちその大部分が大気中へと放出される。
本光学モデルでは、計算の簡略化のため、裏面反射光におけるLG膜中での多重干渉を考慮 せず、その光のすべてが試料における全反射率に寄与するとし、試料全体の反射率スペクト
ルR (λ)を以下の式で定義した。
𝑅(𝜆) = 𝑅𝐴𝐿𝐺(𝜆) + (1 − 𝑅𝐴𝐿𝐺(𝜆))𝑅𝐺𝐴 (𝜆) (7 − 15)
なお、ガラス基板の厚みが測定波長に対して十分に厚いことから、(7-15)式を定義するに あたりガラス基板内部における光の位相の変化は考慮しないものとした。
反射防止膜の物性評価は、(7-15)式より導出された反射率スペクトルを用いて、光学モ デルにおけるLG層の膜厚dおよび空隙率(void ratio)xを調整し、実測値とフィッティン グさせることにより行う。図7.3(a,b) は構築した光学モデルにおいて、それぞれLG層の膜
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図7.3 反射防止膜における反射率スペクトルの実測値および光学モデルを用いて算出した
反射率スペクトルのフィッティング例. 光学モデルにおいてLG層の(a)膜厚およ び(b)空隙率を変えた場合における反射率スペクトルの変化をそれぞれ図示した.
厚および空隙率を変えた場合において算出された反射率スペクトルおよびその実測値のフ ィッティング結果の例を示す。横軸に測定波長、縦軸に反射率の値を用いた。また、反射率 スペクトルの実測値をドットで示し、光学モデルから算出された値を実線および破線を用 いて表記した。図7.3(a) より、光学モデルにおけるLG膜の膜厚を変えた場合、算出された 反射率の波形が波長方向に横移動し、膜厚を厚くするほど長波長領域に反射率の極小値が 移動することを確認した。一方、図7.3(b) より、LG層の空隙率が反射率における極小値の 値に大きく影響を与えていることが確認でき、空隙の割合が高いほど算出された反射率の 値が低下する傾向がみられた。また、LG層の膜厚および空隙率の最適化後、光学モデルよ り得た反射率スペクトルの値は実測値と高い一致を示した。以上の結果より、本研究にて構
5 6 7 8 9 10
400 500 600 700 800
実測値
Reflectance [%]
Wavelength [nm]
光学モデル (a) 最適値
d:大 d:小
5 6 7 8 9 10
400 500 600 700 800
実測値
Reflectance [%]
Wavelength [nm]
光学モデル (b)
最適値 Void ratio:小
Void ratio:大
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築した光学モデルおよび計算式が LG 膜により形成された反射防止膜の物性評価に有効で あると考えられる。本節以降では、本研究で作製した反射防止膜の光学物性値の同定に、本 節で構築した光学モデルを用いた。