第 6 章 球状シリカ粒子および液体ガラスを用いたガラス基板上へ の凹凸構造形成
6.5 凹凸構造を形成した液体ガラス層上への AZO 膜製膜
6.4にて作製した球状シリカ粒子を内包するLG層上に導電層としてAZO膜を製膜し、
凹凸構造を有するTCO基板の作製を試みた。本研究において、LG層中に内包させるシリ カ粒子の粒径としては、LG層塗布後において近赤外領域の光に対し高い散乱性を示す粒
径2000 [nm]のシリカ粒子を用いた。表6.2に本節において評価を行った球状シリカ粒子を
内包したLG層を有するAZO基板(以下、AZO-SSP基板)の形成条件を示す。球状シリ 0
500 1000 1500 2000 2500 3000
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500
Maximum scattering wavelength [nm]
Particle diameter [nm]
w/o LG layer
w/ LG layer
99
カ粒子は、2-プロパノールを主成分とする分散溶媒中へと質量濃度30 [wt%]で分散させ た。作製した分散溶媒はガラス基板上にスピンコーティング速度8000 [rpm] の条件で塗布 した。ガラス基板上へのシリカ粒子被覆後、液体ガラスをスピンコーティング速度8000
[rpm] の条件で塗布し、凹凸構造を有するLG層を形成した。形成した凹凸構造を有する
LG層上へは導電層として膜厚約1000 [nm]のAZO膜を製膜し、近赤外領域において高い 光散乱性を有するAZO-SSP基板を作製した。
図6.6(a-c) はAZO-SSP 基板における各形成行程での表面 SEM画像の比較である。それ
ぞれ (a) ガラス基板上へ被覆された球状シリカ粒子、(b) シリカ粒子上へと形成したLG層 および (c) 形成した凹凸基板上に製膜したAZO膜を示す。図6.6(a) より、ガラス基板表面 が高い真球性を有するシリカ粒子によって被覆されていることが確認できる。また、図
6.6(b) から、シリカ粒子上へ液体ガラスの塗布および固化を行うことにより、半球状の凹凸
構造を有する滑らかな LG 層がガラス基板表面に形成されていることがわかる。さらに、
AZO膜の製膜後、その凹凸構造の形状に大きな変化がみられないことが図6.6(c) において 確認された。AFM 測定によって試料表面のRMS 値を評価したところ、図6.6(c) に示した 試料より約612 [nm] の値が得られ、ガラス基板上に直接製膜したAZO膜のRMS値(約7
[nm] )と比較して非常に高い値を示した。この結果は、LG層中に球状シリカ粒子を内包さ
せることにより、試料表面の粗さを大幅に向上可能であることを示す。一方、図6.6(b) に示 した下地のLG層におけるRMS値は713 [nm] であり、AZO膜の製膜によりRMS
表6.2 シリカ粒子を内包したLG層を有するAZO基板(AZO-SSP基板)の作製条件
シリカ粒子の塗布
シリカ粒子:ハイプレシカ 粒径:2000 [nm]
質量比:30 [wt%]
分散溶媒:2-プロパノール 分散媒:アセチルアセトン 回転速度:8000 [rpm]
LG層の形成
溶媒:Liquid glass G-type 回転速度:8000 [rpm]
乾燥:70 [C] 2時間 焼成:450 [C] 2時間 AZO膜の製膜
膜厚:1000 [nm]
製膜条件:表4.1(1)を参照
100
図6.6 AZO-SSP基板形成行程における (a) ガラス基板上に塗布した球状シリカ粒子、(b)
シリカ粒子の上から塗布したLG層および (c) 凹凸構造を有するLG層上へと製 膜したAZO膜の表面SEM画像の比較. また、(d) に形成したAZO-SSP基板の断 面SEM画像を示した.
値の減少がみられた。このRMS値の減少は、AZO膜の製膜によりシリカ粒子間に存在する 隙間が充填され、基板表面に形成された凹凸構造の高低差が減少したために生じたものと 考えられる。図6.6(d) は作製したAZO-SSP基板における断面SEM画像を示す。図から、
ガラス基板上に形成されたLG層およびAZO膜により、ガラス基板とシリカ粒子との間に 存在する隙間が充填され、丸みを帯びた滑らかな凹凸構造がその表面に形成されているこ とを確認できる。
ホール効果測定の結果、キャリア密度およびホール移動度の値としてそれぞれ3.0 1020 [cm-3] および9.13 [cm2/Vs] が得られた。このAZO-SSP基板における電気的特性は、ガラス 基板上に直接形成したAZO単層膜の値(3.4 1020 [cm-3] および28.7 [cm2/Vs] )に比べて 低いキャリア移動度を示した。その結果、AZO単層膜における抵抗率の値が6.5 10-4 [Ωcm]
であるのに対して、AZO-SSP基板の抵抗率は2.3 10-3 [Ωcm] と高い値を示した。この AZO-SSP基板におけるキャリア移動度の低下は、半球状の凹凸構造上に製膜したAZO膜の膜厚 にムラが存在し、内部におけるキャリア移動の阻害が発生したために生じたものと考えら れる。
101
次に、形成したAZO-SSP基板における光学特性を評価した。図6.7(a) に液浸法によって
得たAZO-SSP基板の透過率スペクトルを示す。また、比較としてガラス基板上に直接製膜
したAZO 単層膜の透過率スペクトルを併せて示した。図より、作製したAZO-SSP 基板は
波長400-1200 [nm] において80 [%] 以上の高い光透過性を示すことが確認できる。また、
AZO単層膜における光透過性と比較した場合、波長300-1000 [nm] において1-3 [%] 程度の 透過率の減少がみられた。この光透過性の減少は、強く散乱の影響を受けた光の一部が基板 端より離脱することによって生じたものと考えられる。次に、AZO-SSP 基板における光散 乱性について評価した。AZO製膜前後におけるヘイズ率スペクトルの比較を図6.7(b) に示
図6.7 シリカ塗布時におけるスピンコーティング速度を8000 [rpm] とした場合における
AZO-SSP基板の光学特性:(a)液浸法を用いて測定したAZO-SSP基板およびAZO
単層膜における透過率スペクトルの比較、(b)AZO膜製膜前後における球状シリカ 粒子を内包したLG層のヘイズ率スペクトルの比較.
0 20 40 60 80 100
400 500 600 700 800 900 1000 1100 1200
Transmittance [%]
Wavelength [nm]
Flat
AZO-SSP
(a)
0 20 40 60 80 100
400 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 w/o AZO film w/ AZO film
Haze value [%]
Wavelength [nm]
(b)
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す。図より、作製したAZO-SSP基板は、波長400-1200 [nm] においてヘイズ率50 [%] 以上 の高い光散乱性を示し、特に、波長1000 [nm]以降においてヘイズ率70 [%] 以上の非常に高 い光散乱性を示していることを確認した。また、LG層のヘイズ率スペクトルとの比較から、
そのヘイズ率スペクトルはAZO製膜前後において大きな差がみられないことを示した。こ れらの結果より、本研究において形成したAZO-SSP基板が高い光透過性および散乱性を有 しており、その光散乱性はAZO膜の下地であるシリカ粒子を内包したLG層により決定さ れていることを示した。