株式会社ざおうハーブ 代表取締役 平間拓也氏
司会:
今日は、ざおうハーブの平間さんのところにお邪魔しています。私たちは初日に 農家のこせがれネットワークの宮治さんから、農業全体のことについてレクチャー をいただきました。今日はその「こせがれ」である平間さんが実際にどういうこと を考えてお仕事をされているのか、お聞きしたいと思います。平間さんは、この蔵 王の地域で、蔵王を愛し、蔵王に人がきてくれるように自分の農業以外にもいろい ろな活動をされているので、人と人とのネットワークを作るという意味でも勉強に なると思います。今日はこの素敵なビニールハウスカフェでお話を聞かせていただ けるということで、よろしくお願い致します。
平間:
こんにちは。蔵王ハーブの平間拓也と申します。私は農家のこせがれというこ とで、農家の長男として、子供の頃から農業を継ごうと思って暮らしてきました。
農業を継ぐために大学で農業を学んで、逆算して現在に至るという形で農業をやっ ています。
うちの会社はハーブの苗を販売 するのが仕事です。ホームセンター などを通して販売して、お客さんが そこで買って家で植えて楽しむ素材 を作っています。今は販路が全国に ありまして、全国でも5本の指に入 るハーブの生産量を誇っています。
最近は、全国にこういうものを一生 懸命売るということよりも、もっと
近くの人、にいろいろな商品を提案したり、育てたフレッシュハーブを野菜として 販売したり、乾燥させてお茶にしてパッキングしたり、そういうものを作っています。
私は、仙台の高校に通っている時から寮生活で、大学は千葉だったので7年間 家に居なかったのですが、いつの間にか会社がすごく大規模になっていました。そ の状態で私が帰農するという形になりました。帰ってきた頃には、会社が急激に大 きくなったために、いろいろと効率の悪い部分がありました。ある程度成熟した頃、
今までのダメだった部分が経営に表面化して、いろいろな弊害が出てくるようにな りました。その中で、もう1回会社を作りなおすという意味で、これまでやりたく てもやれなかったたくさんのことを形にしながら、もう一度事業を作りなおしてい るという状態です。
建てなおす時に意識したのが、自分はどの部分で役に立てるかということと、も ともと私は蔵王が好きで帰ってきたので、蔵王の良いものをつなぎあわせるという ことです。会社に入って間もなく、いろいろな活動に参加しました。例えば、農業 体験を受け入れる事業の任意団体をやったり、観光協会と観光をどう推進するかと いうお仕事をやったり、いろいろな活動をしました。その中で、自分の力を地域と うまく結びつけながらどう役に立てるか、自分ならではのことはできないかという ことを考えて、そこであちこち歩いているうちに元々の付き合いの部分が膨らんで いって、また新しい形が出来上がってきているといったところです。
会社の紹介は以上にして、本題である農業を継ぐ理由について話をしたいと思 います。まず、小さい頃から家の手伝いをしていたこともあって、農業という仕事 が大事だということは子供の頃から刷り込まれていました。そういった部分から意 義のある仕事をできたらと考えたのがまず1つの理由です。それから、たいてい農 業というのはとりあえず物を出して、それに値段が付けられるという面があります が、親のやっていることを見ていて、うちが違っているのは子供ながらに思ってい ました。契約した販売先に自分たちで値段を決めて届けるという仕組みだったので、
そういうやり方でやっていけば何とかなるんだと思っていました。僕が中学生や高 校生の頃から、人口増加に対する食料不足というのは随分と言われていて、周りを 見ても農業をやる人は居ないので、きっと自分が生きているうちに農業という仕事 が必要になる時代が来るのではないかと思っています。あとはやはり、ふるさとが 好きだということ。そして家族が好きなので、みんな一緒に仕事ができたらそれが 1番いいなと思っています。
実際に農家を継いでみて思ったこと、特にギャップは、思った以上に負債があ るということでした。それから先ほど契約して価格を決めていると言いましたが、
結局のところは力関係があり、その影響があってこちらから見積りを出しても、結 局は向こうで値段が決められてしまう部分があります。力を持たないといけないと 痛感することがあります。コツコツいい商品を作って出荷するだけではこの現状は 変えられない部分が大きくて、実際には農作業よりも経営や事務作業といったいろ いろなつじつまを合わせる仕事に携わることが多くて、ほとんど農作業をしていな いというのが1番のギャップです。
次に、親子でやることのいい部分と悪い部分ということに関して、まずはいい部 分についてお話しします。まずは、おやじの知り合いはみんな知り合いなので、人 のつながりをそのまま継承することができるということ。事業の歴史や流れを知っ ているので、成功したことや失敗したことも子供ながらにある程度知っていたとい うこと。多くのことは、いちいち言わなくても各々が判断して動くことができると いうこと。困ったときに何とかするという底力。そういう部分です。
悪いところは、けじめがないというか、ルールがうやむやになることが多いと いうことと、各々の考え方がぶつかることがよくあります。親から継承するとある 程度既に形になっていることがあるので、そのことを守る方に行ってしまう部分が あり、やはり時代とともに変えなければならない部分があっても、それを継承して しまいがちなところが悪い点ですね。
若者の帰農や就農についてですが、基本的に農業というのはヒエラルキーが低 いというようなネガティブなイメージがついていて、中学や高校、大学で勉強した のにわざわざ農業をやるのはもったいないということをよく言われます。大学を卒 業して町に帰ってきた時も、もったいないということをいう人もいました。そんな に悪いことでもないと思うのですが、そんなイメージがあるようです。それがなぜ なのかと考えると、収入が少ないということ以上に何となくイメージがダサい、カッ コ悪いということがあり、農業をやっている親の世代でも「農業なんて儲からない」
という話をし、愚痴っぽいところがあります。それが照れなのかは分かりませんが、
そういうことをついつい言いがちなのです。それこそもったいないというか、「で はなぜあなたは仕事をしているのですか」ということになってしまいます。よそに 行けなかったから仕方なくやっているのではなく、あえてやっている人もいると思 うので、もう少し照れずに発信してもらえれば、農業をやってくれる人ももう少し
増えるのではないかと思います。
最後に、僕が考える農業の魅力、何故農業をやるのかという部分について簡単 にお話ししたいと思います。基本的に農業は成長産業だからビジネス論的にやりま せんかという話がよくマスコミで言われていますが、そのように農業を考えると苦 労することが多いと思います。ではなぜやるのかというと、職業というより、より 幸せな生き方の選択という意味だと思います。そして、職業の楽しさというのをも うちょっと意識して暮らせればいいのかなと思うからです。日本に関しては、もう 物質的には満たされていて、それほど何がないという時代でもなくなっていて、もっ と精神的な部分が必要になっているのだと思います。起きている時間の半分以上は 仕事に費やすのは、お金を稼ぐためには必要ですが、好きでもない仕事を一生懸命 やるよりは、好きな職業をどう選んでいくかということと、今いる職業をどう楽し くするかということを意識した方が、より幸せな生き方ができるのではないか思い ます。ここは観光地や別荘地で、割といろいろな人が集まりやすので、溜まれる場 所を作って、「農業で何ができるか」といった話をしながらお互いにできることを 共有していけば、すごく楽しい郷土の形というのができるのではないかと思ってい ます。それを磨き上げていくのが僕の当面の目標というかテーマです。
ありがとうございました。