2月25日
被災地の状況と挑戦( 2 日目)
るのではないかと立ち上がったのがこの石巻2.0という組織です。今では、マスコ ミやニュースなど様々な所で、もう復旧ではなく復興なのだと言われています。復 旧というのは生きるための最低限のもの、例えば明日食べる食料等を確保すること です。復興というのは、自立した生活を営めて、経済的も循環するようにして元の 街の当たり前の機能を取り戻すことです。今はもう復旧ではなく復興だと言われて いますが、我々は復興ですら嫌なのです。元に戻したくありません。こういう大変 な被害を乗り越えて、多くの問題を抱えていた以前の街に戻してどうするのだとい うのが我々の想いです。全てがなくなった状態を生かして、石巻を新しく作る。そ れが我々石巻2.0の思いです。
小泉:
先ほど松村の方から説明がありました が、石巻2.0は民間主体というか、行政 からの指示を待つのではなくて、先に行 きましょうということでいくつかのプロ ジェクトをやっています。
最初に、石巻ボイスというフリーペー パーを作りました。ボイスという名前の とおり、石巻の人達の声を集めて、日本 中そして世界へ発信しようというもので す。最初に石巻の人達が何を考え、どう いう街にしたいと思っていて、これから どうしようとしているかということを1 つ1つヒアリングして、それを目に見え
る形にしたのがこのボイスというフリーペーパーです。
次に、夏に石巻であった川開き祭りに合わせて10日間のワークショップを含め たイベントを行いました。それは野外映画上映会であったり、まちづくりを考える シンポジウムであったり、音楽ライブであったり、自然エネルギーでカフェを作る 試みでした。僕達がそういうイベントを行ったのは、例えば映画上映会であれば、
被災して白い壁だけが残った状態にプロジェクターで映画を投影すれば、そこは映 画館になりますし、ライブイベントをするのに、すごくお金をかけ会場を用意しな くてもトラックの荷台をステージにすることはできます。またシンポジウムに関し
ては、自分たちで街を考えるという企画を実践してみせるというのが目的でした。
そして今、例えばみなさんが座っているベンチやテーブルといった家具を作る石巻 工房、石巻ラボラトリーというものをやっています。
また、復興民泊という名前でゲストハウスのようなものをやっています。それは、
もともと空室になっていた部屋を活用して、人が滞在する仕組みを作ること、外か ら来る人達が泊まり、そこに滞在して経済効果を生むことを目的としています。そ して部屋自体もシェアオフィスとして、いろいろな人が今回のような会にも使うこ とができ、将来のための話し合いをするスペースにすることも出来ます。ものづく りの場所や、人の集まる仕組みを作るというのが、今石巻2.0がやっていることです。
さらにこれから先、企業や地元の人、いろいろな人を巻き込んで新しい商品を作る ために活動し、石巻や日本の地方都市をバージョンアップさせようとしているのが 石巻2.0の取り組みです。
〜質疑応答〜
司会:
石巻2.0の活動を聞いて、なにか質問があればお願いします。
Fawwaz:
貴重なご説明ありがとうございました。私はヨルダンの出身で、観光業につい ていろいろな関心を持っております。日本で、あるいはこの地域でボランティアツー リズムといったものが発生しているか、あるいは具体的に石巻2.0で何か取り組み をされていますか。またもう1つの質問として、被災を機に、被災観光、つまり 被災したところをそのまま残して自然災害の怖さを人々に伝えるための一種の教訓 のための施設として作りあげていく、さらには観光資源の一種として立ち上げてい く、そういうアイデアがあればお聞かせいただけますか。また今後、この被災地に おける観光分野の再興について皆様方で何か取り組みをされるのであれば、何らか のチャンネルを使って交流を深めていきたいと思います。
松村:
ボランティアツーリズムは実際に行われています。2チームが行なっていますが、
例えばオンザロードという団体は東京の大手旅行代理店と組んで月に1回か2回く らいのペースで30〜40人くらいの規模で東京から石巻にボランティア体験をコン
テンツとしたバスツアーを組んでいます。そのツアーの名前は、元気トリップといっ て、今日はまさにそのツアーの参加者が偶然後ろの方にいらっしゃいます。
現地的な話をしますと、ボランティアツーリズムはやはり体を動かすことで満 足が得られると思います。当初はたくさんある瓦礫や汚れた漁網を片付ける大変な 作業でしたが、汗を流せるからこそ満足が得られるのだと思います。しかし今では、
多くの方の活躍で瓦礫類はなくなっています。ボランティアツーリズムのコンテン ツ自体がなくなってきている状態ですが、ボランティアツーリズムがもたらした交 流人口の増加や経済効果、そして何よりも出会いは素晴らしいものです。これはずっ と継続しなければなりません。これを継続するために我々や他の団体が考えている のは、単なる瓦礫を片付けるというところから、石巻の水産業、農業といった1次 産業の体験ツアーや、この石巻工房で一緒に家具を2セット作って1つはまだたく さんの方が暮らされている仮設住宅に送って、もう1つは記念に持ち帰っていただ くとか、そういったコンテンツはまだまだ工夫のしようがあると思います。ボラン ティツーリズムは日本だけではなく海外からの受け入れも含めてもっともっと充実 させるべきだと思います。
2つ目の質問に対する回答ですが、津波の被害によってもたらされた地形の変化 や建物の変化などを観光資源として残すのはどうかという提言でした。それに対し ては今問題を抱えています。未曾有の被害を後世に伝えるためには壊れた像や倒れ た建物は残すべきだと我々は思っていま
す。一方で、当時を思いだしてしまう、
自分の子供や家族、恋人、友人など亡く なった方たちを思い出してしまう、もの すごくつらい体験を思い出してしまうか ら、そういうものは片付けてほしいとい う声もあります。
最近、象徴的な出来事がありました。
石巻の中に雄勝という地域があって、そ この病院は5階まで津波が到達しました。
その結果、建物の上に漁船が屋上に残り ました。まさに津波の被害や恐ろしさ を伝えることができるものが残った訳で
す。それを津波の恐ろしさを残す観光資源として残すべきか撤去すべきか、という ことで意見が分かれていたのですが、つい先日、その船を片付けるという方向に決 定しました。それはやはりこういうものを見たくないという地元の声が強かったた めです。
3つ目の質問ですね。新しい産業を生み出すのはどうかということでしたが、従来、
石巻には様々な歴史的資源、水産業などたくさんのポテンシャルがありました。今こ うやって石巻の名前が知られたことで、新しく価値付けをして推進していくというこ とは多くの方が考えていることですし、行政や商業者たちも考えていることです。
従来あった資源の再提案以外にも今日いらしている鈴木さんの牡鹿のジュエ リーであったり、大漁旗という日本の伝統的な船に掲げる日本的デザインの旗だっ たり、新しいものがあります。大漁旗を再利用して帽子やジャケットにして新しい 産業、新しいコンテンツ、新しいものを作って世界に発信するということも始めら れています。大漁旗を利用した帽子やジャケットは、フランスのパリで展覧会をし た所、大変好評でした。
そういったコンテンツ以外にも、ライフスタイルとしても石巻から提案できる ものが生まれてきていると思います。たくさん来たボランティアの方の中には、ま だまだやり残したことがある、石巻で暮らしたい、石巻のファンになったという方 たちや、ボランティアの活動を離れても石巻に住み続けることを選択した若者が多 数いるのです。そういう若者たちの中では、海の近くにあまり綺麗でない状態で残っ ている一軒家を5〜6人でシェアして暮らすというライフスタイルが生まれていま す。今までのように、用意された賃貸住宅に設定された家賃で住むという消費する だけのライフスタイルではなくて、自分たちで建物にペンキを塗ったりしてDIY で改装してしまう。そういう暮らし自体が今まで日本の中でなかったもので、こう いうライフスタイルも発信して、石巻だとこういうこともできると提案できるもの だと思います。
以上が3つの質問に対する回答です。
司会:
次は、参加者各国の状況についての発表を始めたいと思います。チュニジア、ヨ ルダン、エジプトの順でお願いします。
Tarek:
今日は私どもを歓迎していただき、誠にありがとうございます。今回の日本に