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輸入産品に対する差別的措置論への批判論に対する再批判

ドキュメント内 タイトル (ページ 88-94)

B. 差別的措置と制限的措置

2. 輸入産品に対する差別的措置論への批判論に対する再批判

産品に対して異なった形式の法的要件を適用してよい。他方で、形式的に同一の法 規の適用が実際には輸入産品に対して不利な待遇を与えることになり、よって締約 国が、輸入産品に与えられる待遇が実際に不利でないことを確保するために、輸入 産品に対して異なる法規を適用しなければならなくなるという場合がありうると いうことも認められなければならない。以上の理由から、輸入産品が337条に基づ いて国内原産の産品に適用される法規とは異なった法規に服するという単なる事 実のみでは、GATT3 条 4項不適合の立証において決定的ではない。かかる場合に は、適用法規における国内原産品と輸入産品との相違が輸入産品に対して不利な待 遇を与えているかいないかどうかが審査されなければならないのである。待遇の平 等を保障するという基本的目的に鑑みて、かかる差異があるにもかかわらず3条の 不利でない待遇の基準がみたされていることを立証するのは異なった待遇を行う 締約国の側である48

以上のように、GATT3条4項の解釈は、一方では、産品間の現実の競争関係の平等確保 に着目することによって保護主義を抑制するというGATT3条の趣旨を敷衍したものとなっ ている。こうした解釈論は、通商協定としての GATT の性格を反映し、かつ保護主義の抑 制というWTO加盟国の共通意思に基礎を置くものといえよう。さらに、同種の産品にせよ、

不利な待遇のにせよ抽象度を帯びた要件となっているが、これは、紛争当事国から提出さ れた証拠を評価し、個別具体的な措置の適法性を説得的に判断する余地をWTO法適用機関 に認めるものであって不当ではない。

入産品の具えている製品属性を規制基準として採用し、典型的な国内産品よりも輸入産品 を不利に扱う場合がある。たとえば、ウォッカという産品の名称を基準とし、国産および 輸入ウォッカに同率の税を課すならば、少なくとも原産国を基準とした明白な差別はない。

国産品の焼酎と輸入品の焼酎に対してより低率の税を課す場合も同じである。しかし、こ こではウォッカや焼酎といった国内規制上の名称を前提にするから差別が見えなくなって いるにすぎないのであって、輸入産品のウォッカと国産品の焼酎が同種であると評価する ことによって、輸入産品に対する事実上の差別をみることができる49。つまり、国内産品と 輸入産品の競争関係という基本視点に立って、各国の規制上の産品区分を前提視せず、客 観的な立場からWTO加盟国の措置を審査できるというのがWTO紛争解決制度の大前提で ある(紛争解決了解11条)。それを可能にしているのが、ここでは同種の産品というGATT3 条の基本概念である。輸入産品と国内産品が同種であると認められれば、国内規制上の規 制基準とは関わりなくGATT3条違反が成立しうるのは当然である。

ところが、目的効果論はそうしたWTO紛争解決制度の基本的前提から距離を置き、各国 の規制区分を出発点とする。その上で、WTO加盟国の行う産品の区別が保護主義的な目的 と効果をもたない場合は、当該区別の行われている産品は同種ではなく、GATT3 条は適用 されないと主張する。換言すれば、規制が国内産品と輸入産品の取扱に差異を設けるもの の、当該規制の目的と効果が保護主義的でないならば許容されるという主張である。ここ では同種性の判断に当たって、産品それ自体よりも、各国の規制上の判断が保護主義的な 目的と効果を持つものかどうかに焦点が当てられる。この目的効果論の前提となっている のが原産地中立的規制という見方である。たとえば輸入産品たるガソリンに対して大気汚 染防止のための規制を課す場合、そこで採用されている規制上の区別は明らかに産品原産 国ではない。外国産品が事実上みたさない基準を課すことによって差別が生じたとしても、

輸入産品の安全性基準や環境基準という原産地中立的な規制を適用した結果にすぎないと いう見方である50。この見方を推し進めたのがヒューデック(Hudec, R.)である。彼によれ ば、原産地中立的規制が正当な規制目的(bona fide regulatory purpose)に関連した産品間の 区別を行うのは合理的というべきであり、それが輸入産品に対する不利益な扱いをもたら したとしても差別という評価を下すべきではないという51。不採択に終わったGATTパネル 報告書には、「国内生産に保護を与えるように」(1 項)という保護主義抑制の趣旨にした がって、審査対象規制上の産品区別が保護主義的な目的と効果をもたない場合には、輸入 産品と国内産品は同種ではないとした例がある52

目的効果論には賛同できる点と批判すべき点が混在する。

49 Ehring, L., ‘De Facto Discrimination’ (2002) 36 Journal of World Trade 921, 922 n. 3., 933 and 935-6.

50 Hudec, R., ‘GATT/WTO Constraints on National Regulation: Requiem for an “Aim and Effects” Test’ (1998) 32 International Lawyer 619, 623.

51 Hudec, n. 50 above, at 627.

52 GATT Panel Report, US – Malt Beverages, para. 5.25; GATT Panel Report, US – Taxes on Automobiles, para. 5.9:

「GATT3条における同種性の問題は、有利でない待遇が、国内生産に保護を与えるような規制上の区別 に基づいているかどうかという点に関して主として分析されるべきである。

賛同できる点は、正当な規制目的を有する各国の措置を評価しようとしている点である。

同種の産品に対する差別論をとると、なんらかの合理的な基準に基づいて規制を行った結 果、副次的に輸入産品が不利に扱われるにすぎない場合も、同種の産品が認定される限り

GATT3 条の禁止対象となる。米国・自動車課税事件パネルは目的効果論を採用して、一定

価額以下の乗用車への優遇税制がGATT3条2項1 文に違反しないと判断した53。ここでは 貿易のみならず環境政策も問題となって入る。目的効果論の採否はひとまず措くが、GATT は、通商条約である以上、大気保全、小型低燃費車の購入促進、エネルギーの消費抑制と いった各国の環境政策を否定するものではない。通商以外の正当目的に目を向けると、た しかに副次的に輸入産品を不利に扱う措置を非難する実質的理由を見出しにくくなる。し かも、GATT3条4項違反の攻撃を受けた被申立国は、輸入産品との関係で国内産品が「同 種の産品」ではないと主張することによって防御を試みてきたが、防御はあまり成功して いないとの評がある54。それゆえ、目的効果論および原産地中立規制論は、国内規制に対す る侵食に歯止めをかけようというひとつの試みとしてみることもできる。

批判論はGATT/WTO法制度の論理に依拠する。第一に、GATT3 条の解釈論に目的効果 論を持ち込むことは、GATT3 条の適用範囲を狭めるものであって、GATTの実効性を弱め るから認められないという反論が可能である。正当な規制目的を追求する措置であるかど うかは、あくまでもGATT20条の適用によって審査されるべきであるというのは正論である

55。第二に、同種の産品に対する不利な待遇の有無を審査するという方法には利点があるが、

それが失われるという反論である。現状の差別禁止原則に依拠した法適用の特徴は、比較 対象たる国内産品と輸入産品の特定した上で両者の法的取扱いの差異を検討すれば、確実 に法の適用結果を得られるところにある。換言すれば、紛争当事国や法解釈適用者にとっ て高い予見性を与えるものである。違反を認定された国にとっても、輸入産品の不利益待 遇廃止という履行措置が見えているから、適法状態の回復が容易である。被申立国が敗訴 した場合には、輸入産品および同種の産品という特定された産品についての規制を改めれ ばよい。ところが目的効果論をとると、敗訴国は、保護主義的な目的および効果をもたら す措置をWTO法適合的に改正しなければならないことになるが、その範囲は必ずしも明瞭 ではなくなる。批判すべき点の多くは、すでに日本・酒税事件において述べられている。

日本・酒税事件パネルは以下の理由から明確に目的効果理論を否定した56。第一に、GATT3 条違反を主張する申立国側に不当な主張立証責任を負わせることになるという理由である。

目的効果論に依拠すると、国内産品と輸入産品の同種性を判断する際には、問題となる税 制措置が保護主義的な目的と効果を有するか否かが考慮されなければならないということ

53 GATT Panel Report, US – Taxes on Automobiles, para. 5.15.

54 それらの概観は Davey, W., ‘WTO Dispute Settlement Practice relating to GATT 1994’ in Ortino, F. and Petersmann, E.-U.(ed.), The WTO Dispute Settlement System 1995-2003 (2004), 193-200.

55 Panel Report, Japan – Alcoholic Beverages II, para. 6.17.

56 Panel Report, Japan – Alcoholic Beverages II, para. 6.16; See also Appellate Body Report, Japan – Alcoholic Beverages, 115.

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