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転がり接触表面の観察および分析

ドキュメント内 水素誘起転がり疲れの発生条件と水素の起源 (ページ 115-120)

3 転がり疲労寿命試験と水素侵入

3.3 フッ素系グリース潤滑下の転がり疲れ

3.3.2 実験結果および考察

3.3.2.3 転がり接触表面の観察および分析

転がり疲れ寿命試験終了後のディスク試験片表面を光学顕微鏡観察,触針式粗さ計によ る断面プロファイルを行った.その結果をFig. 3-34aからFig. 3-34fに示す.また,平均ト ラック幅と転がり疲れ寿命の関係をFig. 3-35に示す.

点接触においてヘルツ接触圧が4.8GPaのとき,接触直径は420μmである.疲労寿命が短 い試験では,転がり接触幅はヘルツの接触理論により導かれる値に近く,摩耗による転が り接触幅の増大は小さいことが分かる.しかし,疲労寿命が長い試験では,転がり接触幅 は広くその深さも大きく,摩耗量が多いことが分かる.

転走面上は,いずれの試験においても変色しており,転がり接触に伴い酸化したことが わかる.繰返し数が5.2 x 107回の試験片転走面上には多数の傷が見られる.これは,ボー ル試験片とディスク試験片間に十分な油膜が形成されず枯渇状態となり,二面間が直接接 触したことにより生じたものと考えられる.また,繰返し数が1.0 x 108回の試験片では,

トラック表面上のみならず,トラック表面外も変色が激しい.転がり疲れ寿命試験中にフ ッ化水素により激しく酸化されたことが推察される.トラック上には荷重移動方向に対し 垂直に伸びるクラック状のものが観察されている.これは,トラック上に均一に分布して おらず,ある部分においてのみ顕著に観察された.

転がり接触時の潤滑状態や鋼表面上の反応膜を調べるため,一部の試験片において XPS 分析を行った.

Fig. 3-36には,比較のため,転がり疲れ寿命が長かった試験片(繰返し数1.0 x 108回)と短

かった試験片(繰返し数2.5 x 107回)のXPS分析結果を示している.F1sスペクトルからはフ

10 100 1000 10000 100000

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

Fatigue life, x10

4

H yd ro gen co nt en t, p pm Air Ar

110

ッ素の化学結合の状態に関する情報を得ることができる.両試験片のスペクトルにおいて,

CF2結合を示す689eV付近のピークが認められる.これは,増ちょう剤であるPTFEまたは 基油であるPFPE中のCF2結合に由来するものと考えられる.塩素系溶剤による試験片洗浄 後においても,PTFEまたはPFPE油による膜が転走面上に形成されていることが分かる.

このピーク強度は,転がり疲れ寿命が長いものほど大きい.転がり接触回数の増加に伴い,

これらの形成膜は成長したと考えられる.また,寿命が短い試験片ではフッ化鉄を示す

684eV付近のピークも認められる.長寿命の試験片ではフッ化鉄のピークが認められない.

Figure 3-37に示すように,転がり接触面からの深さ方向に対する化学結合状態の変化を知

るため,アルゴンイオンスパッタを用いてデプスプロファイルを取得した.スパッタ率は

3.8nm/minであった.深さ方向に対し689eVのピークは漸減し,684eVのピークは漸増して

いることが分かる.

フッ化鉄もPTFEまたはPFPEによる反応膜と同様に転がり接触に伴い形成されたものと 考えられる.長寿命の試験片転送面最表面において,フッ化鉄のピークが見られないのは,

フッ化鉄が生成されていないわけではなく,フッ化鉄がPTFEまたはPFPEによる反応膜に 完全に覆われてしまったためであろう.

また,692.5eV付近に見られるピークは,基油であるPFPE中のOCF2結合に由来するも のと考えられる.PFPE構造中の酸素原子によりCF2結合のピークが高い結合エネルギー側 にシフトされたと考えられる.このピークは,転がり接触表面に基油を含むグリース成分 または基油が強固に吸着されていることを示唆する.

Fig. 3-34a Micrograph and cross section profile of disk specimen at 2.5 x 106 0.5mm 20µm

0.5mm

111

Fig. 3-34b Micrograph and cross section profile of disk specimen at 6.4 x 106

Fig. 3-34c Micrograph and cross section profile of disk specimen at 5.2 x 107

Fig. 3-34d Micrograph and cross section profile of disk specimen at 1.0 x 108 0.5mm 20µm

0.5mm

0.5mm 20µm

0.5mm

0.5mm 20µm

0.5mm

112

Fig. 3-34e Micrograph and cross section profile of disk specimen at 1.03 x 108

Fig. 3-34f Micrograph and cross section profile of disk specimen at 2.3 x 108

Fig. 3-35 Relation between fatigue life and average wear width

0 0.5 1 1.5 2

100 1000 10000 100000

Wear width, mm

Fa ti gue li fe , x10

4

Air

0.5mm 20µm

0.5mm

0.5mm 20µm

0.5mm

113

Fig. 3-36 XPS spectrum for disk specimens

Fig. 3-37 Depth profile of disk specimen at 1.0 x 108; Sputtering rate 3.8nm/min

680 685

690

695 Binding Energy, eV

F(1s) N=1.0x10

8

N=2.5x10

6

680 685

690

695 Binding Energy, eV

F(1s) sputtering time

0 s

20 s

40 s

60 s

120 s

114

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