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4. 転がり接触試験による水素侵入と防止

4.1 空気環境下転がり接触における水素侵入に及ぼす基油種の影響

4.1.1 実験方法

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134 (1)試験片

3章と同様,試験片は市販のスラスト軸受#51107 を使用した.軌道輪をそれぞれディス ク試験片と上部転動輪(ガイドディスク)に使用した.軌道輪,ディスク試験片,ボール試験 片すべてSUJ2製であり,トラック直径は43mm,ボール直径は6.35mmである(Fig. 4-1, Table 4-1).

まず,軌道輪の裏面をエメリー紙で粒度360から順に粒度2000までを使用し研磨する.

その後ダイアモンドスラリーによるラッピングを施して,算術平均粗さRa=0.01mの鏡面 に仕上げる.ボール試験片,ディスク試験片及び転動輪は,試験前にヘプタンで超音波洗 浄を5分間行う.

Fig. 4-1 ガイドディスク,ディスク試験片及びボール試験片

Table 4-1 SUJ2の化学成分

Material Chemical composition (%)

C Si Mn P S Cr

SUJ2 0.95~1.10 0.15~0.35 0~0.50 0~0.025 0~0.025 1.30~1.60

(2)試験片の取付

ディスク試験片とホルダーをチャンバ内に固定する.この時,ホルダーとチャンバ底の 間にシリコーンゴムシートを敷き,自動調心する.次に,転動輪を駆動軸にネジで固定し,

チャンバを試験機下部軸に取り付ける.ディスク試験片にリテーナーとボール試験片を設 置し,試験機下部軸に梃子を接続して,チャンバを閉じる.梃子の片方には重りを設置す

る.3 章の3.2,3.3 節と同様,潤滑油は実験ごとにシールド付試験部に軸受球全体が浸る

程度(20ml)供給し,再供給はしない.これは試験後の潤滑油を回収するためも兼ねてい る.

試験装置外観を Fig. 4-2に示す.三相交流モータとタイミングベルトにより,軌道輪を 固定している軸に動力が伝達される.荷重は下方に設けた梃子を介して死荷重により付加 される.使用するボール試験片の数や重りの数によりヘルツ最大接触圧は調整できる.

試験ガスをチャンバ下部から常に流入させ,上部から排気することで,任意の試験雰囲

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気を保っている.また,チャンバの下部にはヒータと熱電対が設けられており,チャンバ 内の温度は任意に調整できる.

チャンバのふたと駆動軸の間にオイルシールが配置されており,気体の外部漏えい,も しくは流入を防いでいる.フレーキングが発生した場合は,梃子に設置した振動センサに より検知される.試験実施中に,振動センサの計測値が設定値を上回るとモータは自動停 止する.

Fig. 4-2 チャンバ詳細(シールド付試験部)

(3)実験

試験条件に応じてチャンバ内のパージを十分に行い,設定した温度に達するまで静置す る.実験中は圧縮空気または窒素ガス,水素ガスを100ml/min 吹き込み続けることで試験 雰囲気純度を保持した.実験条件は温度 120℃,雰囲気ガスは空気または窒素,接触圧力

4.8GPa,または 3.9GPa,回転速度 1500rpm である.荷重負荷後,モータを駆動させ試

験を開始する.本節では,試験時間を予め設定(2h,5h,10h)し,疲労寿命を迎える前にモ ータを停止させる.

実験終了後,取り出した試験片は必要があればカットし,超音波洗浄後分析・観察を行 う.また,シールド内の供給油は全量サンプリングし,油の劣化分析に用いる.

136 4.1.1.2 実験条件

実験条件をTable 4-2に示す.空気中試験の比較ガスとして,窒素,水素も用いた.

Table 4-2 実験条件

材質 SUJ2

最大ヘルツ圧 4.8GPa, 3.9GPa

回転数 1500rpm

回転速度 3.4m/s トラック直径 43mm

球直径 6.35mm

試験温度 120℃

試験雰囲気 空気,窒素,水素

4.1.1.3 潤滑油基油

潤滑油基油は, パラフィン系硬油 P60,P150,エステル油POE,ポリプロピレングリ コールPPGおよびポリアルファオレフィン PAO32を用いた.下に試料油の諸元を示す.

なお,構造式は,2章に掲載している.

Table 4-3 各種潤滑油諸元 密度

g/cm3

粘度 mm2/s at 313K

粘度 mm2/s at 373K

膜厚比



P60 0.856 7.8 2.2 1.26

P150 0.863 30.6 5.3 2.16

POE 0.993 24.5 5.1 2.26

PPG 0.991 32.3 7.6 2.26

PAO 0.826 28.8 5.6 1.99

4.1.1.4 昇温脱離分析

摩擦試験後の試験片への水素侵入量の測定には四重極質量分析型の昇温脱離分析装置

(TDS,ESCO TDS-1200 2.2節参照)を使用した.試験チャンバから取り出した下部試験片

は,分析チャンバへ移送され,昇温速度60 ℃/min(ディスクの場合)もしくは10 ℃/min(ボ ールの場合)で800 ℃まで加熱される.その間に試験片表面から放出されるH2(質量数:2)

の放出強度をサンプル表面温度に対して積分して水素侵入量とした.なお,転がり試験後 の試験片はディスク試験片に関しては1mm厚さに切断して,ボール試験片はそのまま,分 析前にアセトン・ヘキサン混合液により5分間超音波洗浄して,分析チャンバへ導入した.

実験終了から分析開始までの時間はディスク,ボール試験片とも一時間半以内である.

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ドキュメント内 水素誘起転がり疲れの発生条件と水素の起源 (ページ 139-143)