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質量スペクトルの定量的解釈(分圧の計算)

ドキュメント内 TSP-MPS-OM.book (ページ 68-73)

第 4 章 アプリケーションガイド

4.1   測定結果の解釈方法

4.1.2   質量スペクトルの定量的解釈(分圧の計算)

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FFabは、質量bにおける物質aのフラグメンテーションファクターです。これは、質量bの 物質 a に由来する全てのイオンの総電流量の一部に相当します。XFa は、窒素(XFN = 1)を基準とした場合の物質 a の相対的なイオン化確率です。すなわち、「窒素の総イオ ン電流量」に対する「物質 a に由来する(全ての質量の)総イオン電流量」の比であり、

いずれも同じ真の分圧で測定されます。フラグメンテーションファクターとイオン化確率 はいずれも、イオン化する電子のエネルギーに強く依存します。使用する特定の分析装置 の正確な条件に対するこれらのファクターの正しい値が未知の場合は、別の条件に関して 公表されている値を使用して近似値を求めることが可能であり、その場合においても、通 常は精度が僅かに低下するに過ぎません。

フラグメンテーションファクターは、第 8 章に記載の一般参考文献に示されているフラ グメンテーションパターンから算出することができます。その他の有用な参考文献とし て、Index of Mass Spectral Data from ASTM (米国材料試験協会(ASTM)の質 量スペクトルデータ目録)、EPA/NIH Mass Spectral Data Base by Heller and Milne(ヘラーとミルンによる米国環境保護庁/国立衛生研究所の質量スペクトルデータ ベース)、および米国標準技術研究所(NIST)の提供している大規模なスペクトルライブ ラリなどがあります。

表 4-4は、特定物質の主要ピークのフラグメンテーションファクター(FF)を示したも のです。

注: 実際のフラグメンテーションファクターは、特にイオナイザ、電子のエネルギー、質 量フィルタの構成によって大きく異なります。最善の精度を得るためには、分析に 使用する装置と同一の装置および調整条件下でフラグメンテーションファクターを 測定してください。

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表 4-4  いくつかのよく知られた物質の主要ピークの標準フラグメンテーションファクター

質量 FF 質量 FF 質量 FF

アセトン (CH32CO ヘリウム He 酸素 O2

43 .63 4 1.00 32 .95

58 .23 16 .05

42 .04 水素 H2

27 .03 2 1.00 トルエン C2H5CH3

91 .46

アルゴン Ar 92 .34

40 .83 クリプトン Kr 60 .07

20 .17 84 .45 65 .05

86 .13

ベンゼン C6H6 82 .10 トリクロロエチレン 

C2HCl3

78 .53 83 .10 95 .22

51 .11 130 .22

52 .11 メタン CH4 132 .21

50 .10 16 .46 97 .14

15 .40 60 .13

二酸化炭素 CO2 14 .07

44 .70 13 .04 水 H2O

28 .11 18 .75

16 .06 メタノール CH3OH 17 .19

12 .01 31 .43 1 .05

32 .23 16 .02

一酸化炭素 CO 29 .18

28 .91 28 .03 キセノン Xe

12 .05 132 .26

16 .03 ネオン Ne 129 .26

20 .90 131 .22

エタノール C2H5OH 22 .10 134 .11

31 .49 136 .09

45 .21 窒素 N2

27 .09 28 1.00

29 .07 14 .12

29 .01

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イオン化確率の係数は、様々なガスの相対電離真空計感度を代用することで概算が可能で す。表 4-5は、よく知られたいくつかのガスの相対電離真空計感度を示したものです。

注: このデータは、Empirical  Observations  on  the  Sensitivity  of  Hot  Cathode Ionization Type Vacuum Gauges by R. L. Summers(熱陰極型電離真空計の 感 度 の 経 験 的 観 察、R. L. Summers 著)(NASA Technical Note NASA TN D5285、1969 年刊行)を元に編集したものです。O Hanlon の著書(第 8 章、

1.1 項)や Drinkwine と Lichtman の著書(5 ページ、表 1)にも、限定的ではあ りますが同様のイオン化感度のリストが掲載されています。

ヒント: 実際のイオン化確率は、イオナイザや電子のエネルギーによって大きく異なります。最 善の精度を得るためには、(窒素で較正された)熱陰極型電離真空計を使用して観察対象 物質の既知の圧力をモニターし、相対イオン化確率を測定します。既知の真の圧力に対 する真空計の読み取り値の比が、相対イオン化確率になります。真の圧力を決定するに は、ガス種に依存しない真空計(例えばキャパシタンスマノメータ)、または感度係数が 既知の真空計(例えばスピニングロータ真空計)を使用します。

表 4-5  一般的な物質のイオン化確率

物質名 化学式 相対電離

真空計感度 物質名 化学式 相対電離

真空計感度

アセトン (CH3)2CO 3.6 塩化水素 HCl 1.6

空気 1.0 フッ化水素 HF 1.4

アンモニア NH3 1.3 ヨウ化水素 HI 3.1

アルゴン Ar 1.2 硫化水素 H2S 2.2

ベンゼン C6H6 5.9 クリプトン Kr 1.7

安息香酸 C6H5COOH 5.5 リチウム Li 1.9

臭素 Br2 3.8 メタン CH4 1.6

ブタン C4H10 4.9 メタノール CH3OH 1.8

二酸化炭素 CO2 1.4 ネオン Ne 0.23

二硫化炭素 CS2 4.8 窒素 N2 1.0

一酸化炭素 CO 1.05 酸化窒素 NO 1.2

四塩化炭素 CCl4 6.0 亜酸化窒素 N2O 1.7

クロロベンゼン C6H5Cl 7.0 酸素 O2 1.0

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式 [4]で示されるように、分析装置係数Abは分析装置の透過特性や検出特性、電子増倍 管のゲイン(分析装置が電子増倍管を装備している場合)、および基本的な感度に依存し ます。

[4]

上記の式において、TFb は質量 b における質量フィルタの透過率です。透過率は、質量 フィルタを通過する質量bのイオンの割合であり、質量 28 の窒素イオンに相対的な値で す。名目上、透過率は 28 をイオンbの質量で割った値に相当します。

ファラデーカップ検出器の検出係数DFabは 1 になります。電子増倍管の場合、検出係数 はイオンの質量と化学的性質の関数であり、標準ガス(一般的には窒素)に対する相対的 な値として測定されます。通常、イオンの質量の増加に伴い電子増倍管の検出係数は低下 します。

窒素の質量 28 で測定される電子増倍管のゲインGは、電子増倍管の出力電流を同様の 条件下におけるファラデーモードの出力電流で割った値です。電子増倍管のゲインは、印 加される高電圧の強力な関数になります。

装置の感度Sは、質量 28 で測定された純粋窒素の所与の圧力に対するファラデーモード のイオン電流の比であり、一般的には amps/Torr で表されます。

式 [5]で表される分圧とイオン電流の全体的な関係は、極めて一般的です。この式の定数 は様々な表から取得することができますが、最善の精度を確保するためには装置ごとに測 定する必要があります。

[5]

PPa . . .  物質aの分圧(通常、単位は Torr)

FFab . . .  フラグメンテーションファクター、あるいは質量 bの物質由来の総イオン電流の割合(物理量なし。

4-10 ページの表 4-4をご参照ください)。

FFN28 . . .  窒素由来の 28 AMU におけるN2+のフラグメン テーションファクター(物理量なし。一般的には 約 0.9)。

XFa. . .  窒素を基準とした物質 a の相対イオン化確率。

(物理量なし)に示されるように、電離真空計の 相対感度と概ね同じです。

エチレンオキシド (CH2)2O 2.5 H2O 1.0

ヘリウム He 0.14 キセノン Xe 3.0

ヘキサン C6H14 6.6 キシレン C6H4(CH3)2 7.8

水素 H2 0.44

表 4-5  一般的な物質のイオン化確率 ( 続き )

物質名 化学式 相対電離

真空計感度 物質名 化学式 相対電離

真空計感度

A a

1

TF b DF

abGS

---=

PP a

FF N28

FF ab XF

ab TF

b DF

abG ¥ S

--- 

 

 

I ab

=

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TFb. . .  透過率。質量bのイオン全体に対する質量フィル タを通過するイオンの割合であり、質量が 28 AMUの窒素イオンに相対的な値です。名目上は、

TFM = 28 / M(物理量なし)。

DFab . . .  物質aに由来する質量bのイオンの検出係数であ り、28 AMU の窒素に相対的な値。ファラデー カップ検出器については 1.00 と見なされます が、電子増倍管検出器では異なります(物理量な し)。

G . . .  28 AMU の窒素イオンに対する電子増倍管のゲ イン(物理量なし。ファラデーカップ検出器につ いては 1 に設定)。

S. . .  窒素に対する装置の感度であり、単位窒素分圧当 たりの 28 AMU におけるイオン電流(一般的に は amps/Torr)。

Iab. . .  物質aに由来する質量ピークbのイオン電流(単位 は amps。質量ピークbにおける総電流に大きく 寄与する他の物質が存在しないことが前提)。

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