第 3 章 測定原理
3.3 イオンソース
Transpector MPS のイオンソースは、真空システム中の残留ガス検出のために最適化 されています。センサは、イオン化領域に向かうガスの流れを促進する開放型の構造に なっています。3-3 ページの図 3-2は、開放型イオンソースの詳細図です。
イオンソースの内部では、フィラメントを通して大きな電流が流れます。この電流がフィ ラメントを加熱してフィラメントから電子を放出させ、放出された電子はガス分子と衝突 してイオンを発生させます。ガス分子が一旦イオン化されると、電場を利用してイオンを 操作できるようになります。
イオンソース内で生成されたイオンは電子を失った結果であるため、正(プラス)の電荷 を帯びています。
Ion Source Quadrupole Detector
PN 074-555-P1B
図 3-2 センサのイオンソース
Electron Repeller
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Transpector MPS では、イットリアコートイリジウムのデュアルフィラメントを使用 します。3.3.1 項をご参照ください。
エミッション電流とは、フィラメントによって放出される電子の流れを指します。フィラ メントはエミッションレギュレータ回路からの DC 電流によって加熱され、発生した熱が エミッション電流の制御手段として使用されます。
湾曲したフィラメントの中央には、アノードプレートに取り付けられたイオンケージがあ ります。このケージは、イオン化領域に向かうガス分子の流れを促進するためにオープン メッシュ構造になっています。陽極側の電位(電圧)は反射電極(同じくオープンメッ シュ構造)に対してプラスであり、フィラメント側の電位は他の 2 つの電極(陽極と反 射電極)の間の電位になります。フィラメントと陽極間の電位差は、放出される電子の運 動エネルギー(一般的に電子エネルギーと呼ばれます)を決定します。逆に、電子エネル ギーはガス分子が電子に衝突された場合にどのようにイオン化されるか決定します。
陽極のケージ内で生成されたイオンは、フォーカスレンズの電位によって引き離され、
ビーム状に成形されます(フォーカスレンズはイオンの生成領域からイオンを抽出する働 きをするため、エクストラクターと呼ばれることもあります)。フォーカスレンズには、
イオンビームをイオンソースの出口レンズの穴へと収束させる役割もあります。プラスの イオンを引き寄せるため、合焦レンズには陽極に対してマイナスのバイアス電圧が印加さ れます。
イオンソースの出口レンズの電位は陽極に対してマイナスであり、(ここで説明した特殊 な設計のために)フォーカスレンズに対してもマイナスになります。イオンビームの一部 は、出口レンズの穴を通過して質量フィルタに入射されます。
ビームの残りの部分は出口レンズに衝突して中性化され、電流を生じさせます。この電流 の強度は、イオンソース内の圧力と関係しているため、全圧の測定手段として利用するこ とができます。この電流が予め設定された値を超えた場合、過圧状態によるセンサの損傷 を防ぐために、センサを作動させている電圧がオフになります。
注: この保護機能は、フィラメントを短時間作動させた後でのみ働きます。したがって、
排気サイクル中にセンサをオンにするタイミングが早すぎると、フィラメントは過 圧から保護されなくなります。
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3.3.1 Transpector MPS のフィラメント
Transpector MPS では、イットリアコートイリジウムのデュアルフィラメントが唯一 使用可能なフィラメントです。
イットリアコートイリジウムフィラメントは、イリジウムの芯が酸化イットリウムでコー ティングされています。イットリアは、希土類元素(イットリウム)の酸化物であり、完 全酸化されています。これは、イットリアコートイリジウムフィラメントの表面が酸素に 対して完全に不活性であり、酸素によるダメージを受けないことを意味します。フィラメ ントが酸素に曝露される用途においては、イットリアコートイリジウムフィラメントを選 択するのが適切です。
イットリアコートイリジウムフィラメントは、ハロゲンへの曝露には耐えられません。ハ ロゲンに曝露すると、イットリア被膜にオキシハロゲン化物を生じ、それがフィラメント から剥がれ落ちてイリジウムの芯を露出させ、フィラメントの寿命を縮める原因になりま す。
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