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第 6 章 都市部における高齢者向けサービスの現状と課題

第 1 節 都市部における養老施設の現状と課題―大連市の養老施設ヒアリング調査を通

3 調査結果の論点の整理

5つの養老施設にヒアリング調査を実施し、分析した結果は以下の通りである(調査対象 施設の概要については、表6-1-1、表6-1-2、表6-1-3を参照)。

1)公営施設は介護のノウハウを持っているとともに、医者の配置など設備が充実して いるところから評判がよく 800 名の待機者がいるのに対して、民営施設は入居率が 100%

に達していないのが現状である。公営施設と同じ人員配置や設備を確保すれば、それに応 じて利用料金も高くなる。一方購買力が低いのでニーズがあるのにも関わらず、利用でき ないことも指摘されている。

2)運営主体にかかわらず、BPSD 等周辺症状が激しい認知症高齢者と要介護度が高い 高齢者の入居は拒まれている。自立、半自立、要介護の高齢者のうちでは自立の高齢者が 最も望ましいとされている。その理由としては介護職員の確保の困難さや職員の力量の低 さがあげられる。また、施設の生活は起床時間、食事時間など全て決められ、入居者はこ れらのルールに従わないといけないのが現状である。

3)マンパワーに関しては、介護職員は殆ど40~50歳の出稼ぎの農村労働者である。民 営養老院の中にはD養老院だけ市戸籍を持っている職員がいる。それも2002年に「4050」

110失業者の再就職事業で就職した職員であり、その後は、辞める一方である。また集体が 運営主体であるE養老院には正職員がおり、平均年齢は40代後半で、新卒の大学生も数人

110 失業した40歳、50歳の女性を指している。

136 いたが、長くは続かなかった。周知のように、中国では高齢化の問題は都市部だけではな く、農村部でも多くの課題を抱えている111。出稼ぎによって農村には高齢者112と子どもし か残されていないところが少なくない。いつまでも農村からの出稼ぎ者に頼り、介護問題 を解決することができない。このような状況の中では都市部の問題は都市部で解決方法を 考えなくてはならない。

また、男性職員の数が少ない。

給料は施設によって少し異なるが、平均収入は 2,500 元程度に留まる。(大連市の 2013 年8月に最低収入基準は1,300元であり、個人で支払う「5険1金」113を含む。時給は13 元/時間。)

4)施設の利用者は5か所とも80歳以上の高齢者が多いことが明らかになった。利用料 は、公営施設の一部は、公費対象となる低所得層の高齢者が入所しているため、低額また は無料である。公営施設の一部と民営施設は高い年金収入者や、子どもから経済支援を得 ている人がほとんどであった。また、リバースモーゲージ114の形で入居した高齢者も数人 いた。

5)養老施設を増やすために、大連市では毎年、新たな政策が打ち出され、新しく建設・

増築した施設に出す補助金は高くなっているが、その条件が厳しく、受けにくいという声 が多かった。

111 石田路子(2013)は中国国務院が2004 年から7 年連続で三農(農業、農村、農民)問題 を第一号文件として掲げているように、中国の抱えている大きな問題として都市部と農村 部の格差がある。そのため人口の高齢化というときにも、都市部と農村部とを同じ条件で 考えていくことはできない。厳善平(2013)は、中国における高齢化は都市部より農村部のほ うがいっそう速いスピードで進んでいる。若い人は大学等への進学、都市部への出稼ぎで 農村から姿を消したためである。都市戸籍の住民を対象に医療・年金等の社会保障制度が 作られているが、農村部に住む人は今のところ極めて不十分な社会保障しかない。病気や 老後は基本的に自力か子供に頼るしかないと指摘している。

112 『中国老齢事業発展報告(2013)』によれば、2012年末には、出稼ぎによって農村に残 された高齢者は5,000万人に達した。

113 2010年に社会保険法が制定され,体系的な統一がはかられた。現行法は会社が加入す

べき保険として,養老保険,医療保険,労災保険,失業保険,生育保険(以上を「5険」

と呼んでいる)を定めている。人力資源社会保障部が所轄部である。また従業員に対する 福利厚生制度として,住宅積立金制度がある。上記「5険」と合わせて「5険1金」とも呼 ばれる。

http://www.baoxianzx.com/show.asp?id=24790

2011年大連市の在職者の平均収入は4,144元である。比率 会社:個人= 30:11 それぞれ支払う金額 ⇒1243元:456元 失業者は自己負担20%で(年金と医療保険)保 険料約 828元/1月。

114 2003年に提出され、2004年末に、広州、北京、上海市等の大都市で養老保険の一種と

して試験的に実施してきた。その後、様々な議論を行ったが、2013年に国務院が出した『加 速発展養老服務業的若干意見』(『養老サービス業の発展の加速に関する意見』)によれば、

金融養老の一つの方式としてリバースモーゲージが挙げられた。利用者は60歳以上で、自 己名義で不動産の産権を持つ者である。

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6-1-1 所在地・運営主体・入居者・概要について(調査結果1)

6-1-2 入居者の状態と支払状況・病院・地域との関係について(調査結果2)

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6-1-3 見えた課題とその他について(調査結果3)