• 検索結果がありません。

インフォーマル・サポートに重点をおいた社区を基盤とした支援システムの実践モ

第 7 章 補論 ―政策と先行研究にみる日本の高齢化対策の変遷―

第 3 節 中間支援組織としての社区居民委員会の役割

2 インフォーマル・サポートに重点をおいた社区を基盤とした支援システムの実践モ

189 2 インフォーマル・サポートに重点をおいた社区を基盤とした支援システムの実践モ

190 ルの管理、高齢者の生存管理、65 歳以上の高齢者の老年証の申請・配布の手続きなどを通 して、地域の高齢者の全体像を把握し、住民との間に信頼関係を作ることができる。

社区居民委員会は社区内の住民ニーズを把握し、サービスを提供する関係機関に伝え、

ニーズとサービスの間をつなげる役割がある。例えば、高齢者のアンケート調査結果の中 から見えてきた健康管理のニーズと社区衛生サービスセンターとを結び付け、健康講座、

要介護予防講座の開催などを要請する。社区居民委員会は開催の場所を提供したり、開催 時間等の情報を住民に伝えたりすることができる。また社区衛生サービスセンターへ受診 しにくる高齢者の通院介助のニーズ、慢性病を抱えている見守りが必要な高齢者を発見し た際には、社区居民委員会が持っているインフォーマル・サポートで対応してもらう。

社区養老サービスセンターとの間は、今は十分に機能が果たされていないが、高齢者の 介護ニーズの増加に伴い、サービスの重心は重度な要介護高齢者に移行し、専門性が高い サービスを提供する役割が求められる。社区居民委員会が収集した情報やキャッチしたニ ーズを社区養老サービスセンターにつなげ、また、見守りが必要な高齢者がいれば、社区 居民委員会を通し、住民組織やマンション長などの社区にあるインフォーマル・サポート で担う。

養老施設との間では、社区居民委員会が養老施設に働きかけ、養老施設が介護技術を家 庭で介護を行う家族介護者に教えたり、持っている食堂、リハビリステーション、洗濯室、

活動室などを社区の高齢者に開放するようにする。さらに、要介護状態になって施設に入 った高齢者は、中々地域に戻ることが困難となるが、ボランティアや活動サークルなどの 地域住民が出入りすることで、地域との関わりを繋げることができる。

そして、社区居民委員会は諸関係機関との連携だけではなく、諸関係機関の間で連携を 取るように働きかけることも考えられる。

さらに、社区居民委員会には最も重要な役割として地域づくり、地域への働きかけがあ る。以下列挙しておきたい。

・社区居民委員会の職員は、地域訪問するときに、地域のトラブルなどを解決するだけで はなく、地域の課題などを見つけること、ニーズを把握することができる。

・社区居民委員会が総合相談窓口となり、サービスに繋げていく。

・福祉教育:社区内の学生(小・中・高)や地域の住民を対象として啓蒙教育を行う。

社区内の高齢化の課題を解決するためには、担い手を養成しなければならない。一時的 には、レイオフした「4050」(40、50 代)の女性がサービスの担い手となったが、現在は 減少していることが調査で明らかになった。いずれにせよ、社区住民が地域福祉に関心を 寄せることが重要である。そのために懇談会を開き、社区の課題について話し合い、地域 にある課題などを引き出し、一緒に解決方法を探る必要がある。

・その他の社会資源:管轄の区内にある様々な資源を最大に利用する。すでに社区居民委 員会の中に芽生えている活動を例示すると、契約を結んで高齢者に低額または無料で便利 なサービスを提供する、または現金給付の形で、地域の高齢化問題の解決に参与させる。

191 例えば、法律事務所の無料相談・訪問相談、低額での美容室の利用・出かけられない高齢 者に訪問サービスを提供する、などである。

・朝晩の自発的な太極拳、踊り、趣味活動などのサークルを組織化する。これらの活動は 自発的であり、要介護予防につながる活動であり、普段の活動の中でできた関係を、今後 介護度が落ちた時に関係が切れないように組織化していく。また一緒に活動するメンバー に見守り活動をつなげていく。

・ボランティア組織との間:力を合わせて福祉活動を進める。

・マンション長との間:定年退職した世話焼きの者、また定年退職した共産党員が担当す る場合が多い。社区居民委員会はマンション長を通して、地域住民に情報を伝達したり、

地域住民のニーズ・情報を把握することができる。

最後に、現在社区居民委員会は、管轄している社区を人口や世帯数などによって分担し て1~2名の職員で担当している。今後、担当する職員の専門性を高め、日本で配置されて きている地域福祉コーデイネーター170のような活動ができるように、関係機関や地域との 連携・協力体制の構築、行政のバックアップの体制などの支援体制を整備する必要がある。

170 2008年『これからの地域福祉のあり方に関する研究報告』によれば、地域福祉コーデ

ィネーターは「専門的な対応が必要な問題を抱えた者に対し、問題解決のため関係する様々 な専門家や事業者、ボランティアなどとの連携を図り、総合的かつ包括的に支援する。ま た自ら解決することのできない問題については適切な専門家などにつなぐ」「地域の住民活 動で発見された生活課題の共有化、社会資源の調整や新たな活動の開発、地域福祉活動二 関わるものによるネットワーク形成を図るなど、地域活動を推進する」役割を持つ専門職 である。

192 第4節 残された課題

1 本研究の課題について

本研究は、中国都市部における高齢化問題を解決するための、社区を基盤とした高齢者 支援システムのあり方について、住民自治組織である社区居民委員会が中間支援組織とな るシステムにおける位置づけとその果たす役割の可能性について検討を行ってきた。しか し、大連市という一地域のフィールド調査をよりどころとした研究であり、収集データの 普遍性は限界があるため、一定の方向性を示すにとどまったことに留意し、今後、より多 くの都市部を対象とした調査を進め、社区を基盤とした高齢者支援システムのあり方につ いて検討を行う必要がある。

2 今後の課題について

日本・中国の今後更なるフィールド調査を実施し、日中に共通する課題であるインフォ ーマル・サポートを取り込んだ支援システムの構築について、引き続き探求していきたい と考えている。

1)中国の住民支えあい活動の検討

本研究でも、少しふれたが、大連市では社区居民委員会が一メンバーとして参加した住 民支えあい組織があった。社区にいる熱心な高齢者を中心として、社区にある社会資源―

―法律事務所、スーパー、商店、美容室、大衆浴場、飲食店、法律事務所、家政サービス、

薬局などと契約を結び、会員となった高齢者に低額または無料のサービスを提供する仕組 みを作っていた。今後、このような動きについて追跡調査を行い、中国の高齢化問題の解 決に役立つかどうかについて検討を行う必要がある。

2)日本の都市部における支援システム事例の中国への適用可能性の検討

本研究では近年、日本で取り組まれている地域包括ケアシステムについての検討が十分 に行うことができなかった。日本の都市部における支援システムの事例についての調査分 析を行い、成功事例の要素を引き出し、中国への適用可能性があるかどうかについて検討 を行う。

最後に中国で調査することの困難性について言及したい。

中国における高齢化問題の解決策を探るためには複数の都市部を対象とした調査が必要 であるが、海外に留学している学生として、中国社会から離れていることが原因で、中国

193 で研究調査を実施することは、容易なことではなかった。

目的を明らかにするために、大連以外の都市部で研究調査を実施することも試みたが、

調査の経費、人脈的な問題などによって、あきらめざるを得なかった。

しかしながら、2009年以降、毎年2回中国に渡り、大連市民政局を訪問し、関係を作り、

信頼が得られたことで、2011年に社区居民員会を紹介され、ヒアリング調査の実施につな がった。この社区居民委員会の調査実施の間に、調査対象となる地域から高齢者アンケー ト調査への協力の要請があった。その調査データを活用した分析は、本論文第 5 章に掲載 している。

これは、短期間内で作った調査票であり、回収率をあげ、調査協力をした街道弁事処の 意見を受け入れなければないことで、調査項目の設定が不備なところがある。例えば、認 知症高齢者、寝たきり高齢者についての情報を把握することができなかった。分析でわか ったことを踏まえ、この調査の改訂版の調査を実施することが必要であると考えている。