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調査結果(Ⅱ)- 姻族関係

ドキュメント内 Halnazarov Maamoorjon (ページ 104-112)

第二部 本論

5.6. 調査結果(Ⅱ)- 姻族関係

5.6.1 「夫・妻」

(1) 呼びかけ表現

「夫・妻」への呼びかけ表現に関する調査結果は次の表の通りである。

37. 「夫・妻」に対する呼びかけ表現

配偶者 回答者

夫への呼びかけ表現

子供が生まれる前 子供が生まれた後 孫が生まれた後

F1(20代) 名前+aka 名前+aka

F2(20代) hey、hɔy dadasi

F3(30代) hey dadasi

F4(30代) hey dadasi

F5(40代) 名前+aka dadasi

F6(40代) 名前+aka dadasi bɔbɔsi

F7(50代) hey dadasi bɔbɔsi

妻への呼びかけ表現

M1(20代) 名前 名前 M2(30代) 名前 名前 M3(40代) 名前 名前 M4(40代) 名前 名前

配偶者への呼びかけは、夫と妻とではそれぞれ違う表現が使われる傾向がみられた。一般的な傾 向としては、夫は妻に名前や名前の愛称形を用いて呼びかけられるが、妻は夫に名前や名前の愛称 形だけで呼び捨てにすることができない。夫に対する呼称は子供の存在の有無に大きく左右される ことが見て取れる。子供が生まれる前は、相手の注意を引き付ける時に用いられる「

hey」

「hɔy」な どの感動詞の類を使う人もいれば、「名前+aka」という構文を使って呼びかける人もいる。子供が 生まれてくると、

dada-si

(お父さん!)や

bɔbɔ-si

(お爺さん!)のように呼びかけることが多い。

このような表現は、家族の最年少者の立場に視点を移動して言うのであって、日本語で言うと妻が 夫に向かって「お父さん!」や「おじいさん!」と呼ぶのにほぼ相当する。しかし、日本語とは次 の点で異なる。つまり、

dada-si

bɔbɔ-si

はそれぞれ、「dada(父)+

si

(所有三人称接尾辞)」「bɔbɔ

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(祖父)+si(所有三人称接尾辞)」という構造であり、直訳すると

dada-si

は「(彼/彼女の)お父

さん」、

bɔbɔ-si

は「(彼/彼女の)おじいさん」ほどの意味である。要するに、家族の最年少者にと

っての「お父さん」であり、「おじいさん」であることが明示された語形なのであり、そのようなマ ークのない「お父さん」「おじいさん」という日本語の表現とは異なるのである。妻に呼びかける時

aya-si、 ɔna-si(

(彼/彼女の)お母さん)のような言い方ができると思われるが、今回の調査で

は用例がなかった。

(2) 言及表現

(2) - 1 話し相手が親族・姻族の場合

話し相手が親族・姻族の場合の「夫・妻」への言及表現に関する調査結果は次の表の通りである。

38. 「夫・妻」に対する言及表現(話し相手が親族・姻族の場合)

夫への言及 話し相手

回答者

話し相手が親族である場合 話し相手が姻族である場合

父・母 おじ・おば 兄・姉 弟・妹 義理の父・母 義理のおじ・おば 義理の兄・姉 義理の弟・妹

F1(20代) kuyɔviz kuyɔviz dadaŋ oġliz jiyaniz ukaiz akaiz

F2(20代) 名前+aka 名前+aka 名前+aka 名前+aka dadaŋ oġliz 名前+aka ukaiz akaiz

F3(30代) kuyɔviz kuyɔviz kuyɔviz pɔččaŋ dadaŋ jiyaniz ukaiz

F4(30代) kuyɔviz 名前+aka kuyɔviz dadaŋ oġliz 名前+aka ukaiz akaiz

F5(40代) 名前+aka dadasi 名前+aka 名前+aka dadaŋ oġliz dadasi ukaiz akaiz

F6(40代) kuyɔviz kuyɔviz kuyɔviz pɔččaŋ dadaŋ oġliz ukaiz ukaiz akaiz

F7(50代) kuyɔviz kuyɔviz dadasi pɔččaŋ dadaŋ oġliz dadasi ukaiz akaiz

妻への言及

M1(20代) keliniz keliniz keliniz kennayiŋ ayaŋ qiziz 名前 siŋgliz

M2(30代) 名前 名前 名前 名前, kennayiŋ ɔpaŋ 名前 名前 名前 名前

M3(40代) keliniz 名前、keliniz ayaŋ 名前 名前 siŋgliz

M4(40代) 名前 名前 名前 名前 ayaŋ 名前 名前 名前 名前

配偶者に言及する際には、話し相手が親族・姻族である場合は、話し相手の立場に視点を移動し て言及する傾向がみられた。例えば、夫に言及する場合を見ると、父・母やおじ・おば、兄・姉等 の上位及び同世代の年上の親族を相手に

kuyɔv-iz

(あなたのお婿さん)、弟・妹を相手に

pɔčča-ŋ

(あ なたの義理のお兄さん)、子供を相手に

dada-ŋ

(あなたのお父さん)と言及する。話し相手が姻族 である場合は、義理の父と母を相手に

oġl-iz

(あなたの息子さん)、義理のおじ・おばを相手に

jiyan-iz(あなたの甥御さん)

、義理の兄・姉を相手に

uka-iz(あなたの弟さん)

、義理の弟・妹を相手に

aka-iz(あなたのお兄さん)と言及する。

kuyɔv-iz

は、標準語の

kuyɔv-iŋgiz(kuyɔv(婿)+ (i) ŋgiz(所有二人称接尾辞敬称)

)に当たる 表現であり、「あなたのお婿さん」ほどの意味である。oġl-iz、jiyan-iz、

uka-iz、 aka-iz

なども同じ

95

く、「親族語+所有二人称接尾辞敬称」という構造である。

夫に言及する表現として、他に、呼びかけの時に用いる

dada-si

((彼/彼女の)お父さん)や「名

前+

aka」という表現をそのまま言及に用いる例も若干みられた。

妻に言及する場合、(妻の)名前を用いるのが普通であるが、話し相手の立場に視点を移動して言 及することも可能である。例えば、話し相手が親族である場合は、父・母など上位世代の親族を相

手に

kelin-iz(あなたのお嫁さん)

、弟・妹など年下の同世代の親族を相手に

kennayi-ŋ(あなたの

義理のお姉さん)、子供を相手に

aya-ŋ、 ɔpa-ŋ(あなたのお母さん)と言及する。話し相手が姻族

である場合は、義理の父・母を相手に

qiz-iz

(あなたの娘さん)、義理の兄・姉を相手に

siŋgl-iz

(あ なたの妹さん)と言及する。

(2) - 2 話し相手が親族・姻族以外の場合

話し相手が親族・姻族以外の場合の「夫・妻」への言及表現に関する調査結果は次の表の通りで ある。

39. 「夫・妻」に対する言及表現(話し相手が親族・姻族以外の場合)

夫への言及 話し相手

回答者 初対面の人 上司 友達・同僚 隣の子

F1(20代) xojayinim xojayinim dadasi dadasi

F2(20代) xojayinim xojayinim erim amakiz

F3(30代) xojayinim xojayinim dadamiz 名前+akaiz

F4(30代) 名前+aka 名前+aka dadasi 名前+akaiz

F5(40代) xojayinim xojayinim erim amakiz

F6(40代) xojayinim xojayinim dadasi dadasi

F7(50代) xojayinim xojayinim dadasi dadasi

妻への言及

M1(20代) ayɔlim ayɔlim xɔtinim 名前+kennayiŋ M2(30代) turmuš ortɔġim turmuš ortɔġim xɔtinim 名前+kennayiŋ M3(40代) ayɔlim ayɔlim xɔtinim 名前+kennayiŋ M4(40代) xɔtinim xɔtinim xɔtinim 名前+kennayiŋ

話し相手が上司や初対面の人である場合は、夫を

xojayin-im、妻を ayɔl-im、 turmuš ortɔġi-m

と 言う。

xojayin

は多義語であり、Madvaliev ed.(2008)では、xojayinの表す意味の一つとして、「

s.t.

Ayɔl kišiniŋ turmuš ortɔġiga murɔjaat šakli(X, 435)

」(話し言葉。妻の夫に対する呼びかけ語)

という意味を挙げている。

ayɔl

turmuš ortɔġi

に関する

Madvaliev ed.(2008)の解釈は次の通りである。

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AYƆL Xɔtin, rafiqa (erga nisbatan)

((夫に対する)妻) (Madvaliev ed. 2008:A, 43)

TURMUŠ ORTƆĠI Er-xɔtinlik hɔlatidagi šaxsniŋ har biri (er va xɔtin bir-biriga nisbatan)

(夫婦関係にある人) (Madvaliev ed. 2008:T, 200)

ayɔl

turmuš ortɔġi

はどちらも改まった場面で用いられる固い言葉であるが、ayɔlのほうがよ

り話し言葉的であると思われる。

話し相手が同僚や友人である場合は、夫を

er-im(私の夫)、妻を xɔtin-im(私の妻)と言う。

er

xɔtin

に関する

Ma’rufov ed.(1981b)の解釈は次の通りである。

ER Xɔtin kiši bilan nikɔh ahdida bolgan erkak kiši; qalliq(oz xɔtiniga nisbatan).

(女性と婚姻関係にある男性(自分の妻に対して)) (Ma’rufov ed. 1981b:449)

XƆTIN Birɔr erkak nikɔhidagi ayɔl.

(男性と婚姻関係にある女性) (Ma’rufov ed. 1981b:334)

er

xɔtin

は、標準ウズベク語では「夫」と「妻」を表す代表的な親族語であるが、チナズ方言

では主に言及する時に用い、呼びかける時には用いない。

なお、夫に言及する際、呼びかけに用いる

dada-si((彼/彼女の)お父さん)や「名前+aka」

をそのまま用いる回答者もいる。

話し相手が初対面の人や上司、あるいは同僚、友人である場合は、話し手が配偶者との関係を自 分自身の視点から表現するが、話し相手が子供である場合は、子供の立場に視点を移動して表現す る。例えば、夫について話す時は

amaki-z(あなたのおじさん)

、「名前+aka-iz」(○○お兄さん)

と言い、妻について話す時は「名前+

kennayi-ŋ」(○○お姉さん)と言う。

5.6.2 「義父母」

「義父母」への呼称に関する調査結果は次の表の通りである。なお、

F4

F7

から回答はなかっ た。

40. 「義父母」に対する呼称

姻族 回答者

義理の父 義理の母

呼びかけ 言及 呼びかけ 言及

F1(20代) dadajɔn qaynatam ɔyijɔn qaynanam

F2(20代) dada qaynatam ɔyi qaynanam

F3(30代) ɔta qaynatam ɔyi qaynanam

F4(30代)

F5(40代) ɔta qaynatam ena qaynanam

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F6(40代) ɔyi qaynanam

F7(50代)

M1(20代) dada qaynatam ɔyi qaynanam

M2(30代) dada qaynatam ɔyi qaynanam

M3(40代) ɔyi qaynatam

M4(40代) ada qaynatam ɔyi qaynanam

「義理の父」への呼びかけは、dadajɔn を除けば

5.5.1(2)で述べた「実の父」に対する呼びかけ

表現と同じものを使用する。しかし、「義理の母」は、実の母の場合と違って、ɔyiという親族語を 用いることが多い。

言及する際には、親族語に所有一人称接尾辞を付けて

qaynata-m(私の義理の父)

、qaynana-m

(私の義理の母)と言う。

qaynata

qaynana

に関する

Ma’rufov ed.(1981b)の解釈は次の通りである。

QAYNATA Qayin ɔta(erniŋ ɔtasi uniŋ xɔtiniga nisbatan va xɔtinniŋ ɔtasi uniŋ eriga nisbatan)

(義理の父(妻に対する夫の父または夫に対する妻の父))

Ma’rufov ed. 1981b:539)

QAYNANA Qayin ɔna(erniŋ ɔnasi uniŋ xɔtiniga nisbatan va xɔtinniŋ ɔnasi uniŋ eriga nisbatan)

(義理の母(妻に対する夫の母または夫に対する妻の母))

Ma’rufov ed. 1981b:539)

なお、qaynataと

qaynana

は言及用法のみであり、呼びかけ語として用いられない。

「義父母」に呼びかける時、表

40

F1

のように、親族語に接辞-jɔnを付けて、dada-jɔn、

ɔyi-jɔn

と言うふうに呼ぶことがある。

Ahmedova

(2008:131)によれば、親族関係を表す言葉は、接 辞-jɔnとともに用いられることが多く、特にタシケント方言では顕著である。子供が両親に呼びか ける時、

ɔyi、 dada などの親族語をそのまま使えるが、嫁が義父母に対してこれらの親族語を接辞-jɔn

を付けずに使うと、配偶者やその家族(義父母)に対して失礼とみなされると述べている。

このように、接辞-jɔnは尊敬や親愛の情などの意味を表す接辞であり、特に敬意を払うべき相手 に対して用いられることが多いと思われるが、今回の調査で得られた回答は

2

例のみである。

5.6.3 「義理の兄弟姉妹とその配偶者」

(1) 呼びかけ表現

「義理の兄弟姉妹とその配偶者」への呼びかけ表現に関する調査結果は次の表の通りである。

98

41. 「義理の兄弟姉妹とその配偶者」に対する呼びかけ表現

姻族 回答者

義理の兄弟とその配偶者 義理の姉妹とその配偶者

義兄 義兄の妻 義弟 義弟の妻 義姉 義姉の夫 義妹 義妹の夫

F1(20代) (名前+) aka kennɔyi 名前 (名前+) ɔpa pɔčča

F2(20代) (名前+) aka kennɔyi 名前 名前 名前 (名前+) aka

F3(30代) (名前+) aka yaŋga 名前 名前 名前 名前

F4(30代) (名前+) ɔpa pɔčča

F5(40代) (名前+) aka kennɔyi 名前 名前 (名前+) ɔpa pɔčča 名前 名前

F6(40代) 名前 名前 (名前+) ɔpa pɔčča

F7(50代) (名前+) aka yaŋga 名前 名前 (名前+) ɔpa pɔčča 名前 名前

M1(20代) (名前+) aka kennɔyi (名前+) ɔpa bɔja

M2(30代) 名前 名前 名前 名前 名前 bɔja

M3(40代)

M4(40代) 名前 kelin 名前 bɔja 名前 bɔja

「義理の兄弟姉妹とその配偶者」に対する呼びかけは、

5.5.2

で紹介した実の兄弟姉妹の場合と同 様、年上の人には親族語で呼びかけ、年下の人には名前を使用する。義理の兄弟姉妹が自分より年 上である場合、男性を「(名前+)aka」と呼び、女性を「(名前+)ɔpa」と呼ぶ。その配偶者は、

男性を

pɔčča

と呼び、女性を

kennɔyi、yaŋga

と呼ぶ。なお、妻の姉妹の配偶者たちは互いに

bɔja

と呼び合う。

bɔja

について、Ma’rufov ed.(1981a)では次にように解釈されている。

BƆJA Ɔpa siŋgillarniŋ erlari(bir-biriga nisbatan)

(姉妹の夫たち(お互いに対して)) (Ma’rufov ed. 1981a:125)

bɔja

は年齢の上下による区別がない。

(2) 言及表現

「義理の兄弟姉妹とその配偶者」への言及表現に関する調査結果は次の表の通りである。

42. 「義理の兄弟姉妹とその配偶者」に対する言及表現

姻族 回答者

義理の兄弟とその配偶者 義理の姉妹とその配偶者

義兄 義兄の妻 義弟 義弟の妻 義姉 義姉の夫 義妹 義妹の夫

F1(20代) qaynakam ɔvsinim qaynim qaynɔpam qaynɔpamniŋ eri

F2(20代) qaynakam ɔvsinim qaynim ɔvsinim qaynisiŋglim kuyɔvimiz

F3(30代) qaynakam ɔvsinim qaynim ɔvsinim qaynisiŋglim qaynisiŋglimniŋ eri

F4(30代) qaynɔpam qaynɔpamniŋ eri

ドキュメント内 Halnazarov Maamoorjon (ページ 104-112)