第三部 結び
7.3. 今後の課題
本論文では、社会言語学的な立場から現代ウズベク語の人称代名詞や親族語、愛称表現などにつ いて考察してきたが、未解決の問題点や触れられなかった事柄など、課題は数多く残されている。
172
以下に、筆者が気づいた問題点や残された課題について簡潔に述べる。
まず、人称代名詞の考察において、単数二人称代名詞
sen
とsan
の使い分けについて筆者の考え を示しただけであり、十分な考察に至っていない。senとsan
の使用分布について、アンケート調 査やフィールドワークなど詳細な調査が必要であると思われるが、それについては今後の課題とし たい。また、今回は二人称代名詞を中心に考察を行ったため、一人称代名詞や三人称代名詞、再帰代名 詞などの考察は先行研究で紹介する程度に止まっている。これらの代名詞も呼称表現と深い関連が あると思われるが、それについての研究の展開は今後進めていきたいと思っている。
親族語の考察において、今回は親族間で用いられる呼称を中心に検討してきたが、非親族に対し て用いられる親族語の虚構的用法については考察を行わなかった。将来的には、それに加え、職業 名や役職名などさまざまな呼称表現についても今後可能な範囲で分析・考察を行っていきたいと考 えている。
愛称表現の考察において、今回は人名を形成する愛称を中心に検討してきたが、普通名詞から作 られる愛称表現に関しては簡単に触れたのみである。それらの表現についても研究を追求していく つもりである。
なお、本研究は実例などに基づいたウズベク語の呼称表現研究の最初の試みであり、さまざまな 原因による資料の不揃いやアンケート調査の被調査者の人数の不揃いや年齢や性別などに片寄り があるなど、不十分なところが多く、呼称表現の全容を忠実に反映したものとはまだまだ言えない。
これらの問題や課題を踏まえたうえで、今後の研究のステップとし、ウズベク語の呼称表現に関す る研究をさらに進め、両言語の呼称表現の体系や運用面での異同を明らかにするためにさらなる研 究を行っていきたいと考えている。そして、その研究成果を日本・ウズベク両言語の言語教育や研 究に生かしたいと思っている。
173
略語一覧
1
-1
stperson(一人称)
2
-2
ndperson(二人称)
3
-3
rdperson(三人称)
ABL
-Ablative(奪格)
ACC
-Accusative(対格)
AR
-Arabic(アラビア語)
COND
-Conditional(条件)
DAT
-Dative(与格)
DPST
-Distant past(完了)
GEN
-Genitive(属格)
H
-Honorific(敬称)
HIN
-Hindi(ヒンディー語)
IMP
-Imperative(命令)
JEW
-Jewish(ヘブライ語)
LOC
-Locative(位格)
NEG
-Negative(否定)
NPST
-Non-past(非過去)
PER
-Persian(ペルシア語)
PL
-Plural(複数)
POSS
-Possessive(所有)
PROG
-Progressive(進行)
PRT
-Particle(不変化詞)
PST
-Past(過去)
Q
-Question(疑問)
SG
-Singular(単数)
UZB
-Uzbek(ウズベク語)
VOL
-Volitional(意志形)
174
初出一覧
本研究の背景をなす論文の初出は、下記の通りである。但し、本研究の執筆にあたり、内容を大 幅に修正している。
論文
ハルナザロフ・マムルジョン(
2011)
「ウズベク語の二人称代名詞sen
とsiz
の使い分けについて」ウズベキスタン・日本学生学術フォーラム
2011.
筑波大学研究発表報告書. pp.26-34―――――――――――――(
2015)「ウズベク語の愛称形成について:日本語との対照的観点か
ら」言語・地域文化研究. 21 pp.41-60 東京外国語大学大学院総合国際学研究科―――――――――――――(
2017)「ウズベク語の親族内における呼称:タシケント州のチナズ
方言を中心に」言語・地域文化研究. 23 pp.33-53 東京外国語大学大学院総合国際学研究科研究ノート
ハルナザロフ・マムルジョン(2017)「親族内における呼称について:日本語との対照的観点から」
日本語・日本学研究
. 7 pp.97-108 東京外国語大学国際日本研究センター
175
参考文献
本研究で使用した参考文献及び言語資料は、下記の通りである。なお、作品によって刊行年次や 出版社がわからないものがある。
日本語の文献
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