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両言語の「配偶者」に対する呼称

ドキュメント内 Halnazarov Maamoorjon (ページ 128-133)

第二部 本論

5.8. ウズベク語と日本語の親族語の対照

5.8.9. 両言語の「配偶者」に対する呼称

両言語の「配偶者」に対する呼びかけ表現は次の表の通りである。

54. 両言語の「配偶者」への呼びかけ表現

ウズベク語 日本語

視点移動類 夫➡妻 妻➡夫 視点移動類 夫➡妻 妻➡夫

dadasi - 6 お父さん - 3

118

bɔbɔsi - 2 お父ちゃん - 1

おじいちゃん - 1

パパ - 1

お母さん 2 -

おっかあ 1 -

おばあちゃん 1 -

ママ 1 -

名前類 名前類

名前 4 - 名前 3 1

名前+ちゃん - 2

親族語類 親族語類

名前+aka - 3

代名詞類 代名詞類

あなた - 1

感動詞類 感動詞類

hey - 4 お~い 1 -

hɔy - 1 ねえ 1 -

ウズベク語では、配偶者に呼びかける際の言い方には、視点移動類(子や孫の視点から見た言い 方。後述)をはじめ、親族語類、感動詞類、名前の呼び捨てなどさまざまな形がある。一般的な傾 向としては、夫は妻に名前や名前の愛称形を用い、妻は夫を呼び捨てにすることができず、子供が 生まれる前は、「

hey」

「hɔy」などの感動詞や「名前+aka」のような親族語を用いるが、子供が生 まれてくると、

dada-si

(お父さん!)や

bɔbɔ-si

(おじいさん!)のように呼びかけることが多い。

日本語では、子供が生まれる前は名前を用いるが、子供が生まれた後は、夫に対しては「お父さ ん」「お父ちゃん」「パパ」など、妻に対しては「お母さん」「ママ」のような視点移動類を用いる回 答者が多く、この点でウズベク語と共通している。但し、子供がいる家庭では、配偶者を子供の前 で呼ぶ場合と二人だけの時に呼ぶ場合とでは違った言い方をする回答者が多いという結果が出た。

55. 子供がその場にいるか否かの違いによる配偶者への呼びかけ表現

子供の前で 二人だけで お父さん 名前+ちゃん - 2 お父さん あなた - 1 パパ あなた/ねえ - 1 ママ 名前/お~い 1 - お母さん 名前 1 - 母さん 名前 1 - お父ちゃん お父ちゃん - 1

名前 名前 - 1

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つまり、子供の前では「お父さん」「お母さん」のような父・母称で呼び、二人だけの時は名前や 代名詞(「あなた」など)、感動詞(「お~い」「ねえ」など)を用いる夫婦がほとんどである。ウズ ベク語では、このような場合、違う言い方をする回答者はみられなかった。

また、日本語では、夫婦間において年齢差による上下関係が成立しておらず、互いに名前や人称 代名詞で呼び合うことができるという点でウズベク語とは対照的である。

(2) 言及表現

(2) - 1 話し相手が親族・姻族の場合

両言語の話し相手が親族・姻族の場合の「配偶者」への言及表現は表

57

の通りである。

ウズベク語では、話し相手が親族・姻族の場合は、話し相手の立場に視点を移動して「あなたの

○○」と言及する傾向がみられた。例えば、夫に言及する場合を見ると、上位及び同世代の年上の 親族を相手に

kuyɔv-iz(あなたのお婿さん)

、弟・妹を相手に

pɔčča-ŋ(お前の義理のお兄さん)、

子供を相手に

dada-ŋ

(お前のお父さん)と言う。話し相手が姻族の場合は、義理の父・母を相手に

oġl-iz

(あなたの息子さん)、義理のおじ・おばを相手に

jiyan-iz(あなたの甥御さん)

、義理の兄・

姉を相手に

uka-iz

(あなたの弟さん)、義理の弟・妹を相手に

aka-iz

(あなたのお兄さん)と言う。

妻の場合、(妻の)名前を用いる場合が多いが、話し相手の立場に視点を移動して言及することもで きる。例えば、話し相手が親族である場合は、上位世代の親族を相手に

kelin-iz(あなたのお嫁さ

ん)、弟・妹を相手に

kennayi-ŋ

(お前の義理のお姉さん)、子供を相手に

aya-ŋ、 ɔpa-ŋ

(お前のお 母さん)と言う。話し相手が姻族である場合は、義理の父・母を相手に

qiz-iz

(あなたの娘さん)、

義理の兄・姉を相手に

siŋgl-iz(あなたの妹さん)と表現する。

日本語では、親族・姻族を相手に配偶者に言及する際には、名前類を用いる人が多い。なお、夫 への言及表現として義理の弟・妹を相手に視点移動類の「お兄さん」と言う例が

1

例観察された。

しかし、話し相手が子供である場合は、その子の立場に視点を移動して、夫に「お父さん」「お父ち ゃん」「パパ」などの呼称で、妻に「お母さん」「ママ」などの呼称で言及する傾向がみられた。

56. 両言語の配偶者への言及表現(話し相手が親族・姻族の場合)

話し相手

言及表現

話し相手が親族の場合 話し相手が姻族の場合

父/母 おじ/おば 兄/姉 弟/妹 義理の 父/母

義理の おじ/おば

義理の 兄/姉

義理の 弟/妹

akez - - - 6

dadasi - 1 1 - - - 2 - -

dadaŋ - - - - 7 - - - -

jiyaniz - - - 2 - -

kuyɔviz 5 4 3 - - - -

oġliz - - - 6 - - -

pɔččaŋ - - - 3 - - - - -

ukez - - - 1 7 -

名前+aka 2 2 2 2 - - 2 - -

120

ayaŋ - - - - 3 - - - -

keliniz 1 2 2 - - - -

kennayiŋ - - - 2 - - - - -

ɔpaŋ - - - - 1 - - - -

qiziz - - - 1 - - -

siŋgliz - - - 2 -

名前 2 2 2 2 - 3 4 2 2

お父さん - - - - 1 - - - -

お父ちゃん - - - - 1 - - - -

パパ - - - - 1 - - - -

うちの人 1 1 - - - 1 -

お兄さん - - - 1

名前 3 3 3 3 - 3 3 3 3

名前+さん 1 1 1 1 - 2 2 1 1

お母さん - - - - 2 - - - -

ママ - - - - 1 - - - -

名前 3 3 3 3 - 3 3 3 3

名前+ちゃん 1 1 1 1 - 1 1 1 1

(2) - 2 話し相手が親族・姻族以外の場合

両言語の話し相手が親族・姻族以外の場合の「配偶者」への言及表現は次の表の通りである。

57. 両言語の配偶者への言及表現(話し相手が親族・姻族以外の場合)

話し相手 言及表現

話し相手が(親族・姻族以外の)場合 初対面の人 上司 友人 隣の子

amakiz - - - 2

dadasi - - 4 3

dadamiz - - 1 -

erim - - 2 -

xojayinim 6 6 - -

名前+aka 1 1 - -

名前+akez - - - 2

ayɔlim 2 2 - -

turmuš ortɔġim 1 1 - -

xɔtinim 1 1 4 -

名前+kennayiŋ - - - 4

121

主人 4 4 1 -

1 1 - -

旦那 - - 1 -

旦那さん - - 1 -

おじさん - - - 1

おじちゃん - - - 1

わからない - - - 2

パパ - - 1 -

うちのパパ - - 1

名前 - - 2 -

3 3 1 -

家内 1 1 1 -

奥さん - - 2 -

うちの奥さん - - 1 1

おばさん - - - 1

おばちゃん - - - 1

わからない - - - 2

ウズベク語では、話し相手が上司や初対面の人など改まった場面において、夫を

xojayin-im、妻

ayɔl-im、turmuš ortɔġ-im

と言う。話し相手が知り合いや友人などくだけた場面では、夫を

er-

im

(私の夫)、妻を

x ɔtin-im(私の妻)と言う。このような場合、話し手は配偶者との関係を自分

自身の視点から表現する。しかし、話し相手が子供である場合は、子供の立場に視点を移動して、

夫については

amaki-z(あなたのおじさん)

、「名前+aka-iz」(○○お兄さん)、妻については「名

前+

kennayi-ŋ」(○○お姉さん)と表現する。なお、夫に対して、呼びかけに用いる dada-si

((彼

/彼女の)お父さん)や「名前+aka」をそのまま言及表現として使う人もいる。

日本語では、配偶者への言及表現にはさまざまな言い方があり、話し相手や場面によって使い分 けられる。上司や初対面の人など改まった場面では、夫を「主人」、妻を「妻」と言う回答者が多い。

友達との会話では、夫に対しては名前や「主人」「旦那(さん)」「パパ」など、妻に対しては「(う ちの)奥さん」「妻」「家内」などさまざまな言葉が用いられている。なお、隣の子との会話では、

「わからない」と答えた人もいるが、他に視点移動類の「おじさん」「おばさん」を用いる回答者も いる。

なお、米田(

1986)が首都圏に住む夫婦を対象に行った調査では、夫への言及の場合、

「主人」の 使用率が改まった場面でもくだけた場面でも圧倒的に高いという。妻への言及の場合、改まった場 面では「家内」が多く、くだけた場面では「名前」が多いという研究結果を出している。

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