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読みにくい音訓の特徴

ドキュメント内 中学生の漢字習得に関する研究 (ページ 93-100)

20字

6.  読みにくい音訓の特徴

(i)低学年用のやさしい漢字がかなり含まれている。(1年用漢字9字,2年  周漢字エ8字)これらの文字の一般的な音訓のほうでは早く読みのカが定着  し,また,書くカも備わっていながら,他の読みでは読みにくい。このこと  はすでに「国立国語研究所年報」で指摘してきたが(年報16〜19),低・中  学年用漢字の中に多音多血の文字が多く,しかも,あまり旨常生心的ではな

 い特殊音訓が含まれている(例一下〈2音5謂〉赤〈2音2潮〉行〈3音3

 翻〉など)ことが主因であろう。

(2)低学年用漢字に限らず,教育漢字は,教育漢字外当用漢字に比べると多面

 回訓の傾向がある。1音素は1訓の文字の89%が1年入学時にすでに金員

 (1000/,)が読めていたことと考え合わせても,このことが首肯されよう。・

(3)特殊音を持つ読み方のものが多く含まれている。

 当用漢字表の表内訓の中には「限られたことばに用いられる」音訓があり,

 「一」線をつけて示されているが,教育漢字には次の6G字62音訓がある。

 ン ユ ク ウ  ワ

儲齪艦鑓幽幽    ウ     

ン ン ユ ヨ  

f

    コ  む

イおゴらシ ジるカエく

音権衆心買

 ウ    ン  輩  ユ  ヨ  イ・オヨ キお シう シヨ ダる ヒも

遠兄無精内路 イイ  蝉クク

ユさ  ケヰ スる シヨ トコ  ロる

遺出守素読緑

       第2章 当用日宇の習得状況一読み 91   〈注〉右下の数字は配当学年を示す。

       キヨウダイ ビンボウ  ル ス    コ  ケイ

  この62音訓の中には,兄弟 貧乏 留守 過去 競馬(輪)など,目常語  として多用されているために,かえって他の音訓よりも読みやすく成績のよ  い音もあるが,しかし,多くは,呉音系の音などで,赤銅・緑青・行燈・行  脚。回向・最期・末期・遠国・久遠,遊説,相殺,精進,衆生など,特殊な  用語,仏教用語などに使われ,特殊な読みを要求され,一般的でないため  に,学習からはずれやすく,習得されにくいということになる。上来みてき  た未習得音訓と比べてみてもそのことがわかる。

四 賃常生濡や,話しことばで親近々の乏しい語に使われる読み(音)が含ま  れている。一一引きの特殊音でなくとも,現在の目常生活,話しことばでは  しだいに使われなくなっている,むしろ漢語でいうのをさけて,和語で繕い  かえているようなことばと関係のある読み(音)は,:習得されにくい。

 例一川のセン(河川),夕のセキ(朝夕,一朝一夕),舌のゼツ(筆雷,毒舌〉

 貸のタイ・借のシャク(貸借),拾のシュウ(拾得する,拾得物)なども,艮  常の話しことばとしては,「かわ」「あさゆう」「ふでにも 口にも…」「かし  かり」「ひろう」のように,わかりやすく,耳に親しめるように和語として  使う場合が多く,セン,セキ,ぜツなどの音を用いることばは,しだいに使用  されることが少なくなってきており,生徒に親しみにくいからであろう。(対  談中「毒舌」を「ドクじた」と 言って, 「ドクじたじゃないよ。ドグぜツと  言うんだ」とたしなめられ「そうかドクゼツというんですか」と驚いていた  という10代の流行歌手も出てくるわけである。〈週刊朝B43.12.2◎日号〉周  作怠談)読みに抵抗のある音の多くは,特殊音ヵ・,この用いられなくなって  きつつある語の音で,漢字の読みのカについて考えるとき,その時代の使用  語彙との関連からも湾察しなければならないことがわかる。

{5)H常生濡ではあまり使われないことぽの訓が含まれている。

  訓は字義の定着したものであり,一般に漢字の意味を理解する手だてとな  るものであったが,中には,現在の賃常生活ではあまり用いられていない文  章語的な訓では,むしろ,その文字を含む漢語の方が使用されていて親近性

 があるためか,時に訓でよりもかえって音の方が読めるという現象がある。

 面おもて 公鵜  簡慧  雄心  競きそう 塗すべる 興お断る 省舞1, 経へる  承講 価あたい 否いな 眼まなこ 災碧蕊 難かたい 退嬰

 など,訓では読めないが,配意の漢語          表面 公共(私) 商売 政治 競争 統治・統一 復興・興亡 反省   経過 承知 定価 否定 近眼 災難 難事(困難) 退出・退化・退学  の音では読める。すなわち音のほうではよく読めるという現象である。

  これら一連の和語は生活語としてはしだいに用いられなくなってきつつあ  り,代わって,その文字を含む漢語・熟語のほうが多用されている現実が,

 漢字を読む力にもそのまま反映していることを示している。

:{6)なお,当用漢字音訓言制定以前には,紬縞として用いられていた読み方の  ほうに反応して,音調表の読み方が用いられないものもある。

  魚の「うお」→さかな,潔のヂいさぎよい」→きよいなどがそれで,こう  した反応は,現在社会でも,往々にして行なわれているために,文字によっ  ては相当根強く,また,多くの生徒によって繰り返されている反応である。

〈7)語彙論がともなわないために読めない。上掲の特殊音訓や,目常生活的で  ない語に使用される音・翻であるために読めないということも,語彙力との  対応の問題であるが,さほど特殊でもなく,生活上でも用いられておりなが  ら読めない(いくつかの)場合がある。

 この調査では,読みの力を調べるための刺激語として,なるべく中学生とし て親近性のある語を選んだために,読みに抵抗のある音訓として残ったもの は,多く上掲のように四獣な語彙や同じ意を表わす語で,日常生活では用いら

.れることの少ないほうの語彙としての音または訓であったが,日常生活でも用 いられながら,語彙力との関係で,ある語では読めながら同じ音のものでも実際 には読めないものが出てくることは必定であろう。その語が未学習語彙であっ たり,あるいは薪聞・雑誌・単行本などによる読書漬動や生活経験が狭く,浅 いなどで,語彙範囲が狭かったい,中学生として必要度や関心度の少ない領域 の用語などであったりすると,いっそ♪そうした結果が出てくることは,同じ

       第2章 当用踊字の習得状況一読み 93 文宇を,他の語彙の音で調査した場合,読字反応に変動があることによっても 知られる。この調査でも,その点を配慮して,習得が固定化しにくいと思われ たいくつかの文字には,同音の語を2〜3種(その際もなるべく親しい藷彙を 目ざした。また,その文字が語頭や語尾にある場合の使いわけも考慮した)加 えることも試みた。提出語によって読みの反応が異なるということも,漢字:習 得に段階のあることを表わしている。

 この調査で,読みの場合(1対1方式なので),むずかしいほうは読まない,

読み誤る,陶こもるなどによって難易や適否が判定できた。教育漢字であり,

一般的な語を顕ざしたので,大差はないが,中には多少の有意の差が認められ たものもある。

例一:

益エキ→利益〉純益 株赫→株式〉切り株

今コン→今度〉今回

冬トV→冬眠〉冬至

 漢宰調査の結果(正答数)を比較するとき,単に数字だけを問題にせず,

のような語句によってその文字が検されたかもあわせてみておかなければなら ない型崩がここにある。

主ぬし→持ち主〉地主  四三→仮面〉仮説  労力→運河〉河口  室栃→窒繭〉室咲き

     (表外字との組み合せでも,地名として親しい〉

述〉 Pツ→著述〉述語

       (述語という語が学習されない時)

月台タイ→月台生〉見台児

 (一般的な胎児より他教科で学習された胎生が読みやすい)

       ど

7.読めない音訓とその文字の使用度

 義務教育終了段階でも読みに抵抗を示した教育漢字:の音または訓は,上来み てきたように,特殊な語に用いられる音訓,あるいは,使用度の少ない語の音 訓が多かった。これらの音訓が一般使用語彙とどのような関係があるか。 「現 代雑誌九牽種の用語用字 漢字表」 (国立国語研究所報告22 昭$P31隼代の現.

代雑誌九十種について,その用語用字をしらべ,漢字の使用度による使用順位 があげられている)によって,これらの文字の使:われ方をみるとその関係が判 然とするであろう。

{1)現代雑誌九十種の調査結果との関係

 読みの上で問題を残した音翻のうち,半数(4入)以上がその読み方に抵抗 を示した文字は,現代雑誌九十種の用語用字調査によると,どのような使われ

:方をしているであろうか。

  現代雑誌九十種でのその文字の使用状況

 く文字使用度〉〈その読み方での使用度〉    〈絹    例〉

因(92)

基(133)

衆(105)

由(239)

L回(409)

「説(214)

・殺(157)

功(60)

貸(46)

供(274)

・宗(57)

天(272)

社(654)

面(539)

政(366)

統(128)

一切(540)

よる(2)

もとい(0)

シュ(3)

よし(1の エ(0)

ぜイ(2)

サイ(3)

ク(0)

タイ(3)

ク(0)

そなえる(5)

ソウ(2)

あめ(0)

やしろ(G)

おもて(3)

まつりごと(0)

すべる(0)

サイ(26)

因る(1種)<cf.依る(6)遡489>

      〈基づく(15)〉

   衆生(1)

   由(1)

遊説(1)

減殺。率鼠殺(2)

貸借・貸船(2)

供える(1)

宗匠・孟宗(2)

〈あま(1)天くだり〉

面(1)   〈表89>

一切・合切(〜袋)(2)

      ︶      ︶︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ 90 ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ヘノ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ㍉ノ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ 00 ︶

  611  1    1  2  441 1113 113

く く く く く く く く く く く く く く く く く く く く く く く く く く く く

上坂業字興授行拾*蚕暴舌頭否興奮災甥期遠緑久精織解己権下仕

         第2章 当飼漢字の習得状況一読み  95 セキ(2)  一夕(一朝〜) 明夕(2)

ハン(0)

ゴウ(10)   悪業・黒業・罪業・自業・非業(5)

あざ(10)  掌・大字・何字(3)

おこる(3)護駁お 興る(す)(1)

さずける(Q)

アン(5)   行ue ・行燈(2)

シユウ(3)  拾得。収拾(2)

サン(0)

バク(5)  暴露(1)

ゼツ(4)  饒雷・毒舌(2)

おのおの(3)各(1)〈各各14圏3>

いな(む)臨1騨(終るや〜や)(1)

まなご(2)  眼(1)

ふるう(0)

わざわい(2) 災いする(1)

セン(5)

ゴ(5)

オン(1)

Pク(1)

ク(0)

ショウ(8)

シヨク(8)

ゲ(0)

キ(1)

ゴン(2)

もと(12)

つかえる(2)

河ノll。二=二JII●JII柳(3)

一期・最期(2)  〈最後(85)〉

遠寺(tVの鐘の音)(1)

松緑(〜湯)

精進 無精(不精)(〜ひげ)(2)

織機 交織 混織 紡織(4)

知己(1)

権化(2) 〈入・地名9>

下(1) 〈許7 亟16>

仕える(1>

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