第1章 諸言
3.2 膜面入射エリプソメトリー評価
3.2.2 裏面反射なしにおける分光エリプソメトリー解析
まず基板裏面にテープを貼付し基板の裏面反射を除去した場合において、テクスチャー SnO2:F基板の光学モデルを検証する。図3-7は本研究で検証したテクスチャーSnO2:F基板 の光学モデルを示している。各モデルの薄膜構造に関して、AはSnO2:F層と表面ラフネス 層、Bはキャリヤー濃度が低いSnO2層の上にSnO2:F層と表面ラフネス層、CはSnO2層の 上にキャリヤー特性の異なる2つSnO2:F層と表面ラフネス層、そして Dは3つのSnO2:F 層と表面ラフネス層で構成した。
図3-7 テクスチャーSnO2:F基板の光学モデル
(3-10)
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次に、図3-7の光学モデルで適用した誘電関数モデルについて説明する。分光エリプソメ トリーではキャリヤー濃度が1018 cm-3以上でないとフリーキャリヤー吸収を評価すること が困難であるため 4)、キャリヤー濃度が低いと仮定した SnO2層の誘電関数は Tauc-Lorentz モデルのみを使用し、キャリヤー特性の解析は行っていない。またTauc-Lorentzモデルは5 つのパラメータ{ATL, C, Eg, E0, 1( )}を有するため、多層膜の光学モデルでは解析パラメー タの数が非常に多くなる。そこで解析パラメータをATLのみとし、SnO2層では、C = 12 eV、
Eg = 3.0 eV、E0 = 9.0 eV、1( ) = 1で固定した。またSnO2:F層では、C = 12 eV、Eg = 3.0 eV、
E0 = 7.0 eV、 1( ) = 1である。解析パラメータ数の削減のため、分光エリプソメトリー評価
では 1( ) = 1で固定される場合が多い。また{C, Eg, E0,}を固定した理由は図3-8で説明する。
図3-8はTauc-LorentzモデルのパラメータをC = 12 eV、Eg = 3.0 eV、 E0 = 7.0 eVとした 場合の誘電率を示している。本研究では解析エネルギー領域を約0.8 eVから2.0 eVとして おり、このエネルギー領域におけるSnO2層の誘電関数は図3-8に示すように 1が低エネル ギー側へ単調に減少し、光吸収を示す 2は0となる。以上よりSnO2層のバンドギャップは 解析エネルギー領域から大きく離れているため、Eg = 3.0 eVと固定してもエリプソメトリー 解析への影響は少ない。またSnO2層の誘電関数のE0も紫外領域に存在すると考えられ、C も 2スペクトルの半値幅であるから、上記の値で固定しても解析に影響しない。従って{C, Eg,
E0,}を固定し、ATLで誘電率の大きさをフィッティングするようにした。なおSnO2:F層の誘
電関数は、ATLのみを解析パラメータとしたTauc-Lorentzモデルに、Drudeモデルの{AD, D,}
を解析パラメータとすることで表現できると考えられる。
図3-8 Tauc-Lorentzモデルによる誘電関数化
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図3-10 モデルCによる膜面入射エリプソメト
リー解析結果から得られたSnO2層とSnO2:F層 の誘電関数
次に、上記4つのモデルによる解析と測定の( , )スペクトルを図3-9に示す。
MSEはモデルA、B、C、Dでそれぞれ20.1、12.1、3.9、3.9となり、モデルCとDは同等
の結果になった。その理由として、モデルDはバルク領域を3つのSnO2:F層で構成してい るが、エリプソメトリー解析結果ではバルク最下層の SnO2:F-1層がフリーキャリヤー吸収 を示さなかったためである。すなわち、3 つのバルク層のうち最下層がSnO2層であるモデ ルCと実質的に同じ膜構造となっている。
先述のとおりAsahi-U基板の成膜プロセ スは不明だが、バルクが1層のモデルAで はMSEが高いことから、実際にSnO2:F膜 は多層構造になっていると考えられる。エ リプソメトリー解析では一般的に、光学モ デルの層構造を複雑にすることでMSE が 改善される。一方エリプソメトリー解析結 果では、モデルBからモデルCへドープ 層を1層追加することでフィッティングが 大きく改善し、モデルCとDでMSEが変 わらないことから、モデルCの膜構造で試 料の光学特性を十分に表現できていると 判断できる。モデルCによる SnO2層と2 つのSnO2:F層の誘電関数を図3-10に、解 析パラメータ値と信頼区間を表3-1に示す。
図3-9 膜面入射によるテクスチャーSnO2:F基板のエリプソメトリー解析
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層構造 パラメータ 解析結果
表面ラフネス層 ds (nm) 44.1 ± 1.7
SnO2:F-2層
dF2 (nm) 354.8 ± 11.6 ATL2 (eV) 122.4 ± 1.7
AD2 (eV) 1.165 ± 0.058
D2 (eV) 0.1874 ± 0.0295
SnO2:F-1層
dF1 (nm) 389.8 ± 9.8 ATL1 (eV) 107.5 ± 2.2
AD1 (eV) 0.9370 ± 0.0557
D1 (eV) 0.2377 ± 0.1270
SnO2層 dt (nm) 127.0 ± 8.8
ATL (eV) 111.3 ± 2.8
3.2.3 裏面反射ありにおけるエリプソメトリー解析
次に、プローブ光を薄膜側から照射しガラス基板の裏面反射がある場合の解析を行った。
膜構造は図3-7のモデルCを適用し、エリプソメトリー解析では( , )のみフィッティング を行い、解析で得られるストークスパラメータから偏光度を算出した。図3-11は , )と偏 光度において、測定と解析のスペクトルを示している。
図3-11 基板裏面反射がある場合の(a)( , )と(b)偏光度における測定と解析のスペクトル
表3-1 モデルCによるテクスチャーSnO2:F基板のエリプソメトリー解析解果