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第1章 諸言

2.1 分光エリプソメトリー

2.1.1 分光エリプソメトリーの原理

2.1.1.1 偏光と光の伝搬

光は電磁波であり、その電界ベクトルは光の進行方向に対し垂直に振動している。光は その電界ベクトルの振動が規則的な状態である全偏光、一部が規則的である部分偏光、ラ ンダムな状態である無偏光に区別される。まずは全偏光について説明する。

図2-1は全偏光における3つの偏光状態を示している。いずれも、z軸方向に進行し、xy平 面を電界ベクトルが振動する2次元波である。また、これらの2次元波をx軸成分とy軸成分に それぞれベクトル分解した1次元波も図示している。なお、この図においてx軸成分とy軸成 分の振幅は等しい。図2-1(a)に示す直線偏光では、xy平面内における電界ベクトルの軌跡は 直線になっている。それに対して、図2-1(b)に示す円偏光や、図2-1(c)の楕円偏光では、xy 平面内における電界ベクトルの軌跡はそれぞれ円と楕円である。この様な電界ベクトルの 軌跡の違いは、x軸成分とy軸成分における1次元波の位相差に起因している。x軸成分y軸 成分の位相差 xyはそれぞれ、直線偏光が0またはπ、円偏光ではπ/2または3π/2、そして楕 円偏光はそれらの間となる。図2-2は、x軸成分y軸成分の位相差 x yとxy平面の電界ベク トルの軌跡をまとめたものである。

24

次に偏光されたプローブ光がある角度で試料に照射される場合について考える。図2-3に おいて、直線偏光が複素屈折率Niの媒質から Ntの物質へ角度 θiで入射し、反射と透過(屈 折)が生じる場合を示している。入射光線と反射光線を含む面を入射面と呼び、電界の振動 方向が入射面と平行および垂直な偏光成分をそれぞれp偏光、s偏光と言う。

図2-1 (a)直線偏光、(b)円偏光、(c)楕円偏光

図2-2 位相差と偏光状態

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偏光成分をp、s偏光に分けて考えると、p、s偏光の振幅反射係数はそれぞれ異なる。図 2-3において透過角θtとすると、p、s偏光における振幅反射・透過係数は以下で与えられる。

これをフレネル方程式と呼ぶ。

t i i t

t i i

p nt n

n r n

cos cos

cos cos

t i i t

i

p n i n

t n

cos cos

cos 2

t t i i

t t i

s ni n

n r n

cos cos

cos cos

t t i i

i

s n i n

t n

cos cos

cos 2

次に、入射角に対するp、s偏光の反射強度について確認する。図2-4は空気/SiO2界面と 空気/Si界面において入射角に対するp、s偏光の反射強度を示している。なおSiO2とSiの 複素屈折率Nはそれそれ4.1 eV における文献値N = 1.49 – 0i 1)およびN = 5.02 – 3.98i 2)を 用いた。p偏光は、空気/SiO2界面において反射強度が 0となる入射角が存在する。これは ブリュースター角( B)と呼ばれる。空気/Si界面の場合は、p偏光の反射強度が極小になる入 射角が存在し、これを擬ブリュースター角( B’)という。2.1.1.4項にて後述するが、エリプソ メトリーではp、s偏光の振幅反射係数の比で定義される( , )という物理量が測定される。

従って、p、s 偏光の振幅比が最大になるブリュースター角でエリプソメトリー測定を行う 場合が多い。一方s偏光では、空気/SiO2界面と空気/Si界面の両方において、入射角が大き くなると反射強度は増加する。

(2-1)

(2-2) (2-3)

(2-4)

図2-3 p偏光とs偏光の入射、反射、透過

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続いて薄膜における振幅反射・透過係数について説明する。薄膜では多重反射・透過に よる光学干渉が生じるため、その挙動は複雑になる。まずは薄膜に光を照射し、膜表面と 膜内部で1回反射した光の位相差について考える。図2-5では、屈折率N0の基板上に屈折 率N1で膜厚d1の薄膜が形成されており、屈折率N2の媒質を入射角θ2で波長 のプローブ光 Linが伝搬している。まず膜表面Pにて、反射光 LAと透過光 LBが生じる。入射媒質と膜の 光学定数が異なるためLBは屈折し、その透過角をθ1とする。さらにLBは基板界面Qに達 し、反射と透過を起こす。LBの反射成分は膜表面Rに到達し、屈折して媒質を進む。この プローブ光が光路長xだけ進むと位相は2 x/ 変化し、光路長は屈折率と距離の積で表現さ れるため、SおよびRにおけるLAとLBの位相差αは以下の式で与えられる。

図2-4 (a) p偏光s偏光における入射角と反射強度の関係

図2-5 薄膜/基板構造における反射光の位相差

27 N PS

QR

N1 PQ 2 2

2

PS = PRsinθ2、PR = 2d1tanθ1なので、αは以下のようになる。

1 1 1 1

2 1 1

1 4 cos

cos sin 1

4 d N d N

一般的に、薄膜干渉による位相差はβを使ってα = 2βと記載され、βは位相膜厚と呼ばれる。

次に薄膜における多重干渉を図2-6に示す。この図において、rtはそれぞれ振幅反射・

透過係数を示し、数字の添え字は各界面を意味する。この場合における振幅反射・透過係 数は以下の手順から計算される。

図2-6より、薄膜/基板構造からの多重反射光の振幅反射係数は、位相膜厚を考慮して以下 で示される。

6 103 122 12 4 21 102 12 12 2 21 10 12 21 21

210 r t t r e i t t r r e i t t r r e i

r

ここでr12 = − r21、t21t12 = 1 − r221であるから、次式のように変形できる。

2 exp 1

2 exp

10 21

10 21

210 r r i

i r

r r

同様にして、薄膜/基板構造からの全透過光の振幅係数は、以下のようになる。

5 102 122 10 3 21 10 12 10 21 10

21

210 t t e i t t r r e i t t r r e i

t

したがって次式が得られる。

2 exp 1

exp

10 21

10 21

210 r r i

i t

t t

(2-5)

(2-6)

(2-7)

(2-8)

(2-9)

(2-10) 図2-6薄膜/基板構造の光学干渉のおける光学モデル

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次に多層膜構造における光学干渉の計算方法について説明する。まず 2 層膜構造までの 計算手順を、図2-7に示す。

図2-7において、1層膜構造までの振幅反射・透過係数r210t210は式(2-8)と式(2-10)で示 される。従って2層膜構造までの振幅反射・透過係数は、3層目/2層目の界面における振幅 反射係数r32と透過係数t32、2層目の位相膜厚 2およびr210t210を用いて、次式で示され る。

2 210

32

2 210

3210 32

2 exp 1

2 exp

i r

r

i r

r r

2 210

32

2 210

3210 32

2 exp 1

exp i r

r

i t

t t

ここでβ2 = 2πd2N2cosθ2/λであり、d2およびθ2は2層目における膜厚および入射角である。

そして、図2-8にj層の薄膜で構成された多層膜構造を示す。この場合、媒質(空気)を示 す添え字はj+1となる。j層の多膜構造では上述の3層膜と同様の手順に従って、1層目か らj層目まで膜表面の方向へ順番に計算が行われる。j層/j-1層界面までの光学干渉による振 幅反射・透過係数の添え字をj_0、j層目の位相膜厚を jとすると、多層膜構造の光学干渉に よる振幅反射・透過係数は次式にまとめることができる。

j j

j j

j j

j j

j r r i

i r

r r

2 exp 1

2 exp

0 _ , 1

0 _ , 1 0 _ 1

j j

j j

j j

j j

j r r i

i t

t t

2 exp 1

exp

0 _ , 1

0 _ , 1 0

_ 1

(2-11) (2-12)

図2-7 2層膜/基板構造における光学干渉の計算手順

(2-13)

(2-14)

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