第 4 章 テクスチャーa-Si:H/SnO 2 :F 構造の分光エリプソメトリー解析
4.1 膜面入射エリプソメトリー評価
4.1.1 テクスチャーa-Si:H/SnO 2 :F 構造の光学モデル
図4-1はAsahi-U基板と、Asahi-U基板上にプラズマCVDでa-Si:H層を成膜した試料(テ
クスチャーa-Si:H/SnO2:F構造)の表面SEM像1)である。SnO2:F層の表面テクスチャーは形状 がランダムで大きさが不均一であることが分かる。そしてAsahi-U 基板上に a-Si:H 層を成 膜すると、テクスチャー構造に沿って膜が堆積されていくため a-Si:H 層の表面もランダム で不均一なテクスチャー構造になっている。またSnO2:F層の表面はピラミッドの様なやや 鋭い形状をしているのに比べて、a-Si:H層の表面形状は丸みを帯びている。
図4-1 (a)テクスチャーSnO2:F基板と(b)テクスチャーa-Si:H/SnO2:F構造の表面SEM像1)
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前章において、テクスチャーSnO2:F基板の光学モデルはテクスチャー領域にEMAを適用 した表面ラフネス層を設定しただけで、基本的には平坦な膜構造の試料と光学モデルは変 わらない。しかし図4-1(b)のような膜構造に対しては、平坦試料とは異なったアプローチの 光学モデルが必要なことを本研究室で明らかにしている1)。テクスチャーa-Si:H/SnO2:F構造 のエリプソメトリー解析モデルを図4-2に示す。このモデルでは表面積モデルとEMA多層 モデルを適用しており、その説明を以下に記述する。
4.1.1.1 表面積モデル
図4-2において不均一なSnO2:F層とa-Si:H層のテクスチャー構造に対し、光学モデルで はSnO2:F層テクスチャーから試料表面までの構造を2つの領域に分割して異なる膜厚値を 設定している。このようなモデル化で、テクスチャーによる膜構造の不均一性を表現して いる。2領域から3領域以上に分割するとエリプソメトリー解析におけるMSEがより低下 するが、2領域でも十分に良いフィッティングが得られることを既に確認している1)。そこ で本研究では、解析パラメータ数を必要最小限に抑えるため2領域の割合を0.5ずつに固定 してエリプソメトリー解析を行った。この光学モデルにおいて、試料全体からの振幅反射 係数は次式で与えられる。
2 2 1
1r A r
A rtital
ここでA1とA2はそれぞれ領域1と2の面積割合、r1とr2はそれぞれ領域1と2の振幅反射 係数である。またA1 = A2 = 0.5である。
図4-2 テクスチャーa-Si:H/SnO2:F構造の光学モデル
(4-1)
97 4.1.1.2 EMA多層モデル
テクスチャーSnO2:F基板のエリプソメトリー解析では、SnO2:F層のテクスチャー構造に 対して EMA による表面ラフネス層を適用し、良好なフィッティングを得ることが出来た。
図3-1に示すようにテクスチャー構造は最大で150 nmに達するにも関わらずEMA単層が 適用できた理由は、SnO2:F層の屈折率が約1.9と比較的低く、そのEMA層の屈折率は1.5 未満となるからである。しかし a-Si:H 層がテクスチャーSnO2:F 基板上に成膜されると、
a-Si:H/SnO2:F 界面領域およびa-Si:H 表面領域の屈折率は大きくなるため、光学モデルにお
いて界面領域および表面領域をEMA単層で表現することは困難になる。そのような場合で も、図4-2に示すように界面層および表面ラフネス層を多層に分割し、EMAにおける体積 分率を深さ方向に変化させることで、屈折率と膜厚が共に大きな界面および表面の光学特 性を表現することが出来る1)。本研究室で開発されたEMA多層モデルを図4-3に示す。
この図ではテクスチャーa-Si:H/SnO2:F 構造における表面 a-Si:Hテクスチャー領域をモデ ル化した場合で、テクスチャー領域全体を半径r = 1の円柱として多層に分割している。こ こで塗りつぶした円盤(相B)はa-Si:H成分、その周りの輪帯(相A)はvoid成分に相当する。
そして円柱の各分割層において、相Aおよび相Bの体積分率がEMAに適用される。この EMA多層モデルでは、以下の式で相Aの半径が深さ方向に変化する。
r d r
d 01
ここでd0、r、 はそれぞれ円柱の総膜厚、相Aの半径、曲率パラメータである。式(4-2)か ら、下からj番目の分割層における相Aの体積は幾何的に次式から得られる。
m d d r d
V j j 2 0
図4-3 EMA多層モデル1)
(4-3) (4-2)
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ここでmは分割数である。以上の関係より、相Aおよび相Bの体積分率fAとfBはそれぞ れ以下で与えられる。
0 0
V d V d V
fA j j
j A j
B d f d
f 1
ここでV(0)、 はそれぞれ円柱全体をm個に分割した体積、最上層における相 Aの体積分
率である。本研究では、a-Si:H表面テクスチャー構造を10分割してパラメータ を適用して いる。一方、a-Si:H/SnO2:Fテクスチャー界面構造においては = 0と固定することで、光学 モデル中の解析パラメータ数を削減した。ここで = 0の場合、最上層は相Aの体積分率が 0であるから実質的に相Bのみになってしまう。従って、10分割で得られる9層目までの EMA多層構造をa-Si:H/SnO2:Fテクスチャー界面構造に適用した。
このEMA多層モデルによる深さ方向の体積分率を図4-4に示す。図4-4は = 1、m = 10 において曲率 が0.5、1、5の場合における相Bの体積分率プロファイルである。 が小さ い場合は上層部(d/d0が大きい)における相Bの体積分率が低く、テクスチャーは先端が細い 形状になる。一方 が大きい場合、上層部で相Bの体積分率が高く、テクスチャーは丸みを 帯びた形状になる。また曲率 が0.5の様に小さいか5の様に大きい場合、EMA多層構造の 下層部では体積分率の変化が大きい。それに対して上層部では体積分率の変化が小さくな る特徴がある。