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第1章 諸言

3.3 基板入射エリプソメトリー評価

3.3.3 基板入射エリプソメトリーの光学モデル改良

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図3-17から基板入射と膜面入射ともに、解析スペクトルは測定スペクトルに良く一致した。

なおSnO2層の膜厚はエリプソメトリー解析の感度が低かったため、表3-4に示すように50 nmで固定ている。表面ラフネス層の膜厚値については、基板入射がds = 72.2 nmであるの に対して、膜面入射における同時解析結果はds = 46.5 nmであり、膜面入射の方がテクスチ ャー構造は小さく見積もられた。これは上記の推測が正しいことを裏付ける結果となった。

この結果について以下に考察する。図3-18はテクスチャーSnO2:F基板に対して55度でガ ラス基板側から入射するプローブ光の伝搬を示している。ここで、プローブ光の波長は解 析エネルギー領域の中間程度である1.4 eVとし、SnO2:F層の屈折率は光学モデルで設定し たSnO2層とSnO2:F層の平均値を用いた。基板入射エリプソメトリーでは、空気/ガラス基 板の界面とガラス基板/SnO2:F層の界面における屈折により、55度で照射されるプローブ光 はSnO2:Fバルク層中を約28度で伝搬すると見積もられる。それに対して膜面入射では表面 テクスチャー領域に55度でプローブ光が照射される。従って、膜面入射の方がテクスチャ ー構造への入射角は大きいため、プローブ光の散乱が大きく、表面ラフネス層が基板入射 よりも薄く見積もられたと考えられる。

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って、基板入射のみで低エネルギー側でも良いフィッティングが得られるように、光学モ デルの更なる検討を行った。

3.2.2項の結果から、テクスチャーSnO2:F基板は多層膜構造であることが予想され、また

図3-2で示したようにTCO層の誘電関数は高エネルギー側でバンド間遷移、低エネルギー 側でフリーキャリヤー吸収が現れる。従って1.0 eV以下の低エネルギー側においてフィッ ティングが悪い原因として、深さ方向に対するフリーキャリヤー吸収の変化を適切にモデ ル化できていない可能性が挙げられる。膜面入射エリプソメトリー解析結果では図3-7のモ デルC、すなわち表面ラフネス層/SnO2:F-2層/SnO2:F-1層/SnO2層/ガラス基板の膜構造で十 分に良好なフィッティングが得られたが、ここではフリーキャリヤー吸収の深さ変化に自 由度を与えるため、バルク領域が3つのSnO2:F層で構成されるモデルDを再検証した。ま

たAsahi-U基板のオフライン工程では、図1-12に示すように、ガラス基板中のアルカリ拡

散防止のためSiO2層が成膜される。本研究で用いた Asahi-U 基板の詳細な膜構造は不明だ が、ここではガラス基板上に膜厚50 nmのSiO2層を仮定して光学モデルを再構築した。さ らに、ガラス基板の誘電関数も変更を施した。3.2.2 項において膜面入射時にガラス基板の 裏面反射がある状態でもエリプソメトリー解析は精度良く行うことが出来ているため、ガ ラス基板の光学特性は表現できていると考えられる。しかし基板入射ではプローブ光の入 射側であるガラス基板がより一層エリプソメトリー解析に敏感である。そこで基板入射測 定時に貼り合わせたガラス基板のエリプソメトリー評価を行い、ガラス基板の誘電関数を 解析して光学モデルに適用した。なお、ガラス基板の誘電関数はCauchyモデルにてA = 1.505、

B = 0.00565 m2、k = 0である。検証で用いた光学モデルを図3-20に示す。また、図3-7と

図3-20の光学モデルにおけるガラス基板およびSiO2層の誘電関数を図3-21に示す。

図3-19 テクスチャーSnO2:F基板の基板入射における解析と測定( , )スペクトル

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次に基板入射のエリプソメトリー測定配置を図3-22のように変更した。図3-22は図3-12 と同じ測定配置となっており、この測定では4 mm厚のガラス基板の貼り合わせを行わなか った。その理由として、テクスチャーSnO2:F基板上にa-Si:H層などを成膜するプロセスに おいて、ガラス基板を貼り合わせる際に使用する屈折率マッチング剤の洗浄作業を避ける ためである。また本研究で用いたAsahi-U基板のガラス厚さは1 mmのため、プローブ光の 照射側と裏面側の反射光を空間的に分離することができず、重なってしまう。従って 3.3.1 項で行ったa-Si:H/Glassの基板入射と同様に、ガラス表面と薄膜からの両方の反射光を測定 した。この場合は3.3.2項と異なり測定光は部分偏光であるが、3.3.1項のエリプソメトリー 解析結果からガラス基板入射の計算方法は部分偏光でも問題がないことを確認している。

図3-20 テクスチャーSnO2:F基板の光学モデル

図3-21 ガラス基板とSiO2層の誘電関数

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図3-20の光学モデルC’ とD’による基板入射エリプソメトリー解析の結果を図3-23に示 す。この図から、モデルD’では( , )の両スペクトルにおいて全エネルギー領域に渡って、

測定と解析のスペクトルを非常に良く一致させることができた。それに対してモデル C’で は、 スペクトルにおいてモデルD’と同様に非常に良いフィッティングが得られているが、

1.1 eV より低エネルギー領域において スペクトルの振幅がフィッティングできていない。

なお、モデルC’ とD’によるMSEはそれぞれ5.577と2.972である。モデルD’による解析 パラメータ値を表3-5に、解析によって得られた3つのSnO2:Fバルク層の誘電関数を図3-24 に示す。

図3-22 テクスチャーSnO2:F基板に対する基板入射測定配置モデル

図3-23 テクスチャーSnO2:F基板のモデルD’による基板入射エリプソメトリー解析

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層構造 パラメータ 解析結果

表面ラフネス層 ds (nm) 69.4 ± 2.4

SnO2:F-3層

dF3 (nm) 368.0 ± 10.9 ATL3 (eV) 136.92 ± 3.3 AD3 (eV) 0.8254 ± 0.1234

D3 (eV) 0.07890 ± 0.0654

SnO2:F-2層

dF2 (nm) 446.7 ± 15.3 ATL2 (eV) 124.4 ± 4.5

AD2 (eV) 0.7723 ± 0.1110

D2 (eV) 0.1219 ± 0.0892

SnO2:F-1層

dF1 (nm) 86.4 ± 20.4 ATL1 (eV) 166.8 ± 5.1 AD1 (eV) 1.309 ± 0.0826

D1 (eV) 0.2577 ± 0.0683

図3-24において、バルクSnO2:F最下層であるSnO2:F-1層は3つのバルク層で最も大き なフリーキャリヤー吸収を示している。それに対してモデルC’ではTCOバルク層がノンド ープのSnO2層であるため、モデルD’ではバルク最下層をSnO2:F層へ変更したことより、

基板入射エリプソメトリーにおいて低エネルギー領域のフィッティングが大きく改善され たと考えられる。

表3-5 テクスチャーSnO2:F基板のモデルD’による基板入射解析結果

図3-24 モデルD’で得られたテクスチャーSnO2:F基板の誘電関数

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図3-25 モデルD’を使った膜面入射解析による

テクスチャーSnO2:F基板の誘電関数

また、モデルD’からSiO2層を除いた場合とガラスの光学定数を変更しなかった場合にお けるMSEはそれぞれ3.156と3.947である。この2つの要素は、TCO最下層をSnO2:F層と 設定したことに比較するとフィッティング改善への貢献度は高くないものの、図3-21に示 す様な僅かな誘電関数の変化でもMSEが低下しており、エリプソメトリー解析の感度が高 いことを証明している。

さらにモデルD’におけるガラス基板の誘電関数とSiO2層が膜面入射エリプソメトリー解 析に及ぼす影響を確認するため、膜面入射測定配置で基板の裏面反射がある場合の再解析 を行った。そのエリプソメトリー解析で得られた3つのSnO2:F層の誘電関数を図3-25に示 す。図3-24とは異なり、バルク最下層であるSnO2:F-1層はほとんどフリーキャリヤー吸収 を示さず、3.2.2 項とモデルD と同等の解

析結果となった。以上より、本研究で用い

たAsahi-U基板の膜面入射と基板入射によ

るエリプソメトリー解析において、バルク 最下層のキャリヤー特性が異なって検出 されている。エリプソメトリーではプロー ブ光の入射側ほど解析感度が高いと予想 されるため、測定配置によってバルク最下 層の解析結果に差が生じたと考えられる。

しかしプローブの入射方向によってバル ク最下層のキャリヤー解析結果がこれほ ど大きな影響を受けた原因の一つに、入射 方向でテクスチャーによる光散乱が異な る点も考慮する必要があると考えられる。