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第1章 諸言

3.3 基板入射エリプソメトリー評価

3.3.2 基板入射エリプソメトリーの解析結果

テクスチャーSnO2:F 基板に対する基板入射エリプソメトリーの測定配置モデルを図3-14 に示す。テクスチャーSnO2:F基板による基板入射エリプソメトリーの検証では、厚さ4 mm のガラス基板を屈折率マッチング剤(アニソール)で貼り合わせた。ガラス基板の厚さを実質

的に5 mm と厚くすることで、薄膜シリコン太陽電池モジュール(ガラス基板の厚みは約 4

mm)の測定条件がシミュレーションできる。この様にガラス基板が厚い場合、ガラス基板の 表面反射光と薄膜からの反射光が重なることなく空間的に分離される。そして基板表面か らの反射光をエリプソメータのアパーチャで遮ることで、薄膜からの反射光のみを測定で きる。基板表面からの反射光が測定に含まれない場合、インコヒーレント条件であるガラ ス基板中をプローブ光が伝搬するにも関わらず、測定光は完全偏光となる。なお基板入射 測定配置においても、プローブ光の入射角はガラス基板のブリュースター角に相当する 55 度とした。図2-4(a)よりガラス基板のみを測定する場合は、p偏光の反射強度が得られない ことになる。しかし図3-14の測定配置では、ガラス表面の反射光を遮り薄膜からの反射光 を測定しているため、入射角がガラス基板のブリュースター角に相当しても p 偏光の反射 強度が完全には失われない。従って、ガラス基板入射のエリプソメトリー解析に大きく影 響しないと考えている。仮に入射角を大きくすると、試料表面における照射面積が大きく なるため、ガラス基板表面と膜面からの反射光が部分的に重なる。この場合、2つの光線の 重なり具合を定量化するのは困難であり、測定および解析において不安定な要因となる。

表3-3 基板入射と膜面入射におけるa-Si:H/Glassのエリプソメトリー解析解果

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図3-14から、基板入射の測定配置で得られる振幅反射係数rglassは次式で表現できる。

s

glass t t r i

r 11' 2exp 2

ここで式(3-11)の右辺は、ガラス基板中で1回のみ反射した光線を意味している。これは、

ガラス基板が実質的に5 mmと非常に厚いため、ガラス基板中を2回以上反射した光線は空 間的に 1 回反射した光線と分離され、エリプソメータで検出されないからである。次にス トークスパラメータを算出に必要な各成分の光強度は以下で示される。

s p

p p p p

p p

glass t t t t r r

r '1, 2, 2, exp 4Im

, '1 , 1 , 1 2 ,

s s

s s s s

s s

glass t t t t r r

r '1, 2, 2, exp 4Im

, '1 , 1 , 1 2 ,

s s

s p s p

p s glass p

glass r t t t t r r

r '1, 2, 2, exp 4Im

, '1 , 1 , 1 , ,

上式を式(3-11)に代入すると、ガラス基板入射において( , )が算出される。

テクスチャーSnO2:F 基板について、膜面入射(基板裏面反射なし)と基板入射における( ,

)測定スペクトルを図3-15に比較した。( , )スペクトルに関してa-Si:H/Glass基板では膜

面入射と基板入射における干渉波形のエネルギー位置が一致しているのに対して、テクス チャーSnO2:F 基板ではエネルギー位置が一致していない。2.1.1.1 項で説明したように、干 渉波形は薄膜内部におけるプローブ光の伝搬光路長に起因するため、テクスチャーSnO2:F 基板では 2 つの測定配置によって膜厚が異なって検出されていると解釈できる。また、

SnO2:F層はa-Si:H層のように強い光吸収を示さないにもかかわらず、図3-13のように2つ

の測定配置による スペクトルが一致していない。これらの原因として、基板入射測定配置 ではプローブ光の屈折によりテクスチャー領域への入射角が膜面入射時と異なるため、テ クスチャーによる光散乱の度合いが異なり、2つの測定配置においてテクスチャー構造が異 なって検出されている可能性がある。

図3-14 テクスチャーSnO2:F基板に対する基板入射測定配置モデル

(3-11)

(3-12)

(3-13)

(3-14)

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この推測に基づき、本研究では膜面入射と基板入射の同時データ解析を行うことで、基 板入射エリプソメトリー評価に対する解析精度の向上を試みた。この同時データ解析にお いて、モデルCの各層の誘電関数、SnO2層とSnO2:F-1層の膜厚は膜面入射と基板入射で等 しいが、表面テクスチャーに近いSnO2:F-2層と表面ラフネス層の膜厚が2つの測定配置で 異なって検出されると仮定した。また解析エネルギー範囲については偏光度スペクトルを 参考に決定した。図3-16に膜面入射と基板入射における偏光度の測定スペクトルを示す。

図3-16 テクスチャーSnO2:F基板の膜面入射と基板入射における偏光度

図3-15 テクスチャーSnO2:F基板の膜面入射と基板入射における( , )スペクトル

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膜面入射は3.2.1項で示したように、0.8 eVから2.0 eVのエネルギー領域で偏光度がほぼ 1 のため、裏面反射が抑えられコヒーレント条件が満たされている。一方、基板入射は図 3-14に示すように膜面反射光のみを測定したが、主に1.0 eV以下の低エネルギー領域で偏 光度が1から外れた値となっている。以上の結果から測定スペクトルの信頼性を考慮して、

基板入射スペクトルは1.0 eV以上のエネルギー領域で、そして膜面入射については0.8 eV

から2.0 eVのエネルギー領域において、同時エリプソメトリー解析を行った。基板入射と

膜面入射の同時解析スペクトルを図3-17に、解析パラメータ値を表3-4に示す。

層構造 パラメータ 解析結果

基板入射 膜面入射 表面ラフネス層 ds (nm) 72.2 ± 2.7 46.5 ± 10.8

SnO2:F-2層

dF2 (nm) 358.8 ± 14.5 371.0 ± 14.7

ATL2 (eV) 112.3 ± 14.7

AD2 (eV) 0.9878 ± 0.1129

D2 (eV) 0.0935 ± 0.1190

SnO2:F-1層

dF1 (nm) 456.7 ± 14.5

ATL1 (eV) 104.8 ± 2.9

AD1 (eV) 1.104 ± 0.1139

D1 (eV) 0.2486 ± 0.0817

SnO2層 dt (nm) 50 (固定)

ATL (eV) 116.3 ± 2.6

表3-4 テクスチャーSnO2:F基板の基板入射と膜面入射の同時解析結果 図3-17 テクスチャーSnO2:F基板の(a)基板入射と(b)膜面入射スペクトル

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図3-17から基板入射と膜面入射ともに、解析スペクトルは測定スペクトルに良く一致した。

なおSnO2層の膜厚はエリプソメトリー解析の感度が低かったため、表3-4に示すように50 nmで固定ている。表面ラフネス層の膜厚値については、基板入射がds = 72.2 nmであるの に対して、膜面入射における同時解析結果はds = 46.5 nmであり、膜面入射の方がテクスチ ャー構造は小さく見積もられた。これは上記の推測が正しいことを裏付ける結果となった。

この結果について以下に考察する。図3-18はテクスチャーSnO2:F基板に対して55度でガ ラス基板側から入射するプローブ光の伝搬を示している。ここで、プローブ光の波長は解 析エネルギー領域の中間程度である1.4 eVとし、SnO2:F層の屈折率は光学モデルで設定し たSnO2層とSnO2:F層の平均値を用いた。基板入射エリプソメトリーでは、空気/ガラス基 板の界面とガラス基板/SnO2:F層の界面における屈折により、55度で照射されるプローブ光 はSnO2:Fバルク層中を約28度で伝搬すると見積もられる。それに対して膜面入射では表面 テクスチャー領域に55度でプローブ光が照射される。従って、膜面入射の方がテクスチャ ー構造への入射角は大きいため、プローブ光の散乱が大きく、表面ラフネス層が基板入射 よりも薄く見積もられたと考えられる。