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第1章 諸言

2.6 原子間力電子顕微鏡

SnO2:F基板の表面テクスチャー構造を詳細に評価するため、本研究では原子間力顕微鏡 (Atomic force microscopy: AFM)を用いた。

2.6.1 特徴と測定原理

AFMとは、微細な探針で試料表面を走査する際に試料と探針に作用する原子間力を利用 して、試料の表面構造を原子レベルという非常に高い分解能で評価することが可能な手法 である。SEMやTEMとは異なり、大気雰囲気において非破壊で測定できるという特徴を持 つ。またAFMは走査型顕微鏡の一種であるため、カンチレバーの種類や検出方法を変更す ることで、表面構造だけでなく摩擦力/粘弾性/導電性などの物性評価も可能である。AFM の基本構成を図2-35に示す。

探針は、カンチレバーと呼ばれる片持ち梁の先端に取り付けられている。またこの図で は、3軸方向の走査が可能な円筒型スキャナー上に試料が置かれており、このスキャナーは 圧電素子で構成されている。スキャナーのXY軸によって試料表面の走査が行われ、表面の 凹凸に応じてカンチレバーがZ軸方向に変位する。この変位量は、半導体レーザーとフォ

図2-34 TEMの基本構造

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トダイオードを用いた光てこ方式で検出される。すなわち、表面構造に追従したカンチレ バーの変位により、カンチレバーのたわみ量が変化するため、半導体レーザーの反射角度 が変化して分割フォトダイオード上の異なる位置で検出される原理である。AFMでは基本 的に、表面構造によるカンチレバーのたわみ量を一定に保つように、圧電素子のZ軸変位 量がフィードバック制御される。

AFMではコンタクトモード、ノンコンタクトモード、タッピングモードという3種類の 測定モードが存在する。本研究では、タッピングモードによって評価を行った。タッピン グモードとは、カンチレバーを共振周波数付近で振動させて試料表面を走査する方式であ る。振動するカンチレバーの振幅が一定になるように Z 軸変位量がフィードバック制御さ れ、この Z 軸変位量が表面形状の高さ情報となる。タッピングモードは他の測定モードと 比較して、試料へのダメージが非常に少ないにも係わらず高分解能/高スループットによ る測定が可能である。

2.6.2 測定手順

本研究では用いたAFMはSPA400(セイコーインスツルメンツ)である。また、チップ先端

半径が10 mのカンチレバーを使用した。以下に測定手順を示す。

図2-35 AFMの基本構造

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・試料の準備

①測定前日、約10 mm角に切り出した試料の裏側に修正液を塗り、試料台に固定させる。

・装置の起動

①装置の主電源を入れ、パソコンを立ち上げる。

②AFM装置のソフトウエアSpise32を起動し、DFMモードを選択する。

・試料とカンチレバーの設置

①試料を固定した試料台をスキャナー上に設置する。

②図2-36のようにカンチレバーをホルダーに設置し、カンチレバーユニットに取り付ける。

③カンチレバーと試料が接触しないように、カンチレバーユニットをSPA400に取り付ける。

④使用するスキャナーとカンチレバーをSpise32に設定する。スキャナーは20 mを選択す る。

・レーザー光軸調整

①ステージを上げてカンチレバーと試料の間隔を約1 mmに近づける。

②SPA400に光ヘッド部を取り付ける。

③光ヘッド部に光学顕微鏡を設置し、照明光を点灯させる。

④レーザー位置モニターを起動させる。

⑤SPA400の表示信号をADDにする。

⑥光学顕微鏡のCCD像のピントを合わせる。

⑦ADD 値が最大になるように、光ヘッド部のレーザー調整つまみを回して、レーザー光を カンチレバー先端付近に合わせる。

⑧光学顕微鏡の照明光を消す。

⑨SPA400の表示信号をFFMおよびDFMにする。

図2-36 (a)カンチレバーの設置と(b)カンチレバーユニット

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⑩FFMとDFMの調整つまみを回して、それぞれの値を±1以内にする。

⑪レーザー位置モニターの中心にレーザー光のスポットが位置していることを確認する。

⑫ADD、FFM、DFMの値を確認する。

⑬光学顕微鏡を外し、SPA400のカバーを閉める。

・Qカーブ(共振周波数)測定

①Qカーブ測定メニューを開き、カンチレバーに合わせて各種パラメータを設定する。

②自動設定にチェックを入れ、Qカーブ測定を行う。

③Qカーブが単峰性のピークになっていることを確認する。

④Qカーブ測定後のスキャナー電圧が-20 V付近になっていることを確認する。

・測定

①測定条件パネル1を開き、振幅減衰率、Iゲイン、Pゲインなどを設定する。

②自動でカンチレバーを測定領域まで試料に接近させる。

③測定条件パネル1で形状像と位相像を選択する。

④形状像と位相像でスキャンの追従性が良く発振が起こらないように、各種パラメータを 調整する。

⑤測定条件パネル1で形状像と電位像を選択する。

⑥測定を開始する。

図2-37 (a)AFM装置と(b)SPA400の概観図

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・データ解析

①得られたAFM像の傾き補正を行う。

②表面粗さ解析メニューを開き、二乗平均面粗さ(rms)を算出する。なお、rmsは次式で定義 される。

N

i

xi

N Z rms

1

1 2

ここでNは測定データ点数、Z(x)は図2-38に示すように面粗さの平均からの高さである。

・終了作業

①ステージを下げ、カンチレバーと試料を離す。

②光ヘッド部、カンチレバーユニット、試料台を取り外す。

③ソフトウエアを終了し、パソコンと装置の電源を切る。