3. 窒化物半導体におけるステップバンチングの原因解明
3.8. 吸着原子の拡散距離の影響
3.8.2. 脱離するまでの拡散距離 x diff :KMC
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関係があるので、図 3-25の横軸はΦに比例していると考えてもよい。すなわち、オフ 角を大きくしたときの成長速度の変化は図 3-25のようになると期待される。L0に対し てxdiffが短い場合には基板オフ角を変化させたときに成長速度が有意に変化する。オフ 角を変えた時の成長速度の変化を式(3-68)でフィッティングすることによって xdiffの見 積もりが可能である。ただし、実験的には低オフ基板を用いた場合にはテラス上で核生 成が起こり、これが成長速度に寄与する。これは式(3-68)では考慮されていないので、
テラス上で核生成が発生していないデータのみでフィッティングする必要がある。
図 3-25 成長速度と /𝑳𝟎の相関。横軸はオフ角Φに比例している(Φが微小 であるとき)。
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94 た。
本節ではxdiffが表面モフォロジーに与える影響をKMCにより解析する。Bellmannら の計算は一次元であるのに対して本研究で用いるKMCは二次元であるので実際の表面 状態まで評価することができる。Bellmannらのモデルと同じく、バンチングの原因とし てInverse ESBを仮定する(𝐸𝑖𝐸𝑆𝐵> 𝐸𝐸𝑆𝐵)。
脱離に必要なエネルギーEdesをパラメータとして xdiffを変化させたときの表面モフォ ロジーの変化を図 3-26 に示す。ただし、初期状態はすべて完全な微傾斜で、30ML 成 長させた後の表面状態を示している。また、この時の平均バンチングサイズの変化を図 3-27に示す。計算条件は以下の通りである。計算サイズ400×400、L0 = 20、T = 700 K、
F = 10 ML/s、Ediff = 0.5 eV、En = 1 eV、EESB = 0 eV、EiESB = 0.3 eV。Edes = 0.6 eVの場合xdiff
はL0に比べて小さく(xdiff/L0 = 0.11)、ステップ同士が影響し合わないためにステップの 間隔はランダムである。しかし Edesが大きくなり、xdiffがテラス幅に対して大きくなる につれステップ同士が相互作用し始めるためバンチングが発生する。これは Bellmann らの計算結果と同じである。Edes = 0.8 eVと1.0 eVを比較すると、飽和したときのバン チングサイズに大きな差はないが、1.0 eVでは成長初期からバンチングステップが形成 されていることがわかる。
図 3-26 Edesを変化させたときの表面モフォロジーの変化(30 ML成長後)。この 図ではステップ上端側を明るいコントラストで、下端側を暗いコントラストで示 している。
xdiff/L0=0.11 xdiff/L0=0.60 xdiff/L0=3.15
Edes大、xdiff大
Edes=0.6eV Edes= 0.8eV Edes= 1.0eV
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図 3-27 Edesを変化させたときの平均バンチングサイズの変化。
図 3-26 においては純粋な xdiffの変化による表面モフォロジーの変化を解析するため にEdesをパラメータとした。しかし、Edesは実験的に変化可能なパラメータではなく、
直接xdiffを変化させることができるのは温度を変化させたときである。ただし温度を変 化させると拡散係数やステップからの脱離なども変化するため、それらの影響も考慮す る必要がある。温度を変化させたときの表面モフォロジーを図 3-28に、平均バンチン グサイズの変化を図 3-29に示す。計算条件は以下の通りである。計算サイズ400×400、
L0 = 20、F = 10 ML/s、Ediff = 0.5 eV、En = 1 eV、EESB = 0 eV、EiESB = 0.3 eV、Edes = 0.8 eV。
xdiffのみに注目すると、xdiffが小さいほど(高温ほど)バンチングの幅が小さいという傾 向がみられる。これは Edesをパラメータとした場合の結果と同じく、xdiffが小さいこと によってステップ同士の速度が影響し難いことが原因であると解釈できる。また、高温 では高い熱エネルギーによってInverse ESBの影響が相対的に小さくなることもバンチ ング幅減少に寄与していると考えられる。900 Kの結果に注目すると、サイズは小さい もののバンチングが確認される。これはxdiffが小さくても、成長中に確率的にステップ 同士が近づきxdiff程度の間隔になり得るため、バンチング不安定性は完全にはなくなら ないことを示している。そのため実験的に確認される等間隔ステップの出現はこのモデ ルでは説明できない。また低温においてバンチングが大きくなるという計算結果は実験 傾向を再現していない。また、Siの成長においてxdiffは融点の90%においても10 μmの オーダーであることを考えると、GaN系結晶の成長においても𝑥𝑑𝑖𝑓𝑓 ≫ 𝐿0であることが 予想できる。もしそうであればBellmannらの提唱するバンチング抑制条件𝑥𝑑𝑖𝑓𝑓 < 𝐿0は
1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
0 10 20 30
A v er ag e b u n ch si ze
ML
E
des=0.6eV
1.0eV
0.8ev
Bunch size
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96 通常の成長条件では達成されない。
図 3-28 Tを変化させたときの表面モフォロジーの変化(30 ML成長後)。
図 3-29 Tを変化させたときの平均バンチングサイズの変化。
本節では Inverse ESBを仮定した KMCによって xdiffが表面モフォロジーに与える影
響を解析した。結果は以下のようにまとめられる。
xdiffが小さいほどバンチング幅が小さくなる。
実験的に確認されるような等間隔ステップの出現を説明できない。
T が高いと Inverse ESBの効果が弱まることによりバンチング幅が小さくなる。こ
xdiff/L0=1.63 xdiff/L0=0.60 xdiff/L0=0.35
T大、xdiff小
T=500K T=700K T=900K
1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
0 10 20 30
B u n ch si ze <n >
ML T=500K 900K
700K
Bunch size
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97 れは実験傾向と逆である。
通常の成長条件では𝑥𝑑𝑖𝑓𝑓 ≫ 𝐿0であると考えられる。