3. 窒化物半導体におけるステップバンチングの原因解明
3.8. 吸着原子の拡散距離の影響
3.8.4. 二次元核が発生する平均間隔 L nuc :KMC
3 窒化物半導体におけるステップバンチングの原因解明
101 𝐷0
485
5𝐷0
560
25𝐷0
664
𝐹0
1 /𝑠
5𝐹0
5 /𝑠
25𝐹0
25 /𝑠
Same F/D
図 3-33 FとDを変化させたときの微傾斜面(L0 = 20)表面モフォロジー。計算 条件は図 3-32と同じ。
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図 3-34 二次元核生成によるバンチング幅の減少。
このモデルはGaN系結晶においても支持されている。Bryanらはオフ角、温度、成長 速度を変化させながら AlN をMOVPE によって成長させ、バンチングが高いオフ角、
高温、低速成長時に発生することを確認した。この結果からBryanらは、過飽和度やオ フ角を変化させることによって(𝐿𝑛𝑢𝑐/𝐿0)を大きくしていくと表面モフォロジーは三 次元成長ステップフロー成長ステップバンチングと変化するというモデルを提案 している。Bryan らの実験では V/III 比は変化させていないものの、このモデルに当て はめると高V/IIIは過飽和度を上げ(𝐿𝑛𝑢𝑐/𝐿0)を小さくするためにバンチングを抑制す るのに有効であると予測している。実際、エラー! 参照元が見つかりません。節に示す ように GaN 系結晶においては高速成長、低温成長、低オフ角というテラス上で核生成 しやすい(𝐿𝑛𝑢𝑐/𝐿0が小さい)条件においてバンチングが抑制されている。またBryanら はバンチングの原因としてはInverese ESBが有力であると結論付けている。
本節ではKMCによってこのモデルの検証を行う。LnucはFとTの関数であるため、
これらをパラメータとする。Lnucは同じ成長条件において微傾斜無しの表面に0.2 ML成 長させたときの核密度より計算した。
図 3-35 にF をパラメータとしたときの表面モフォロジーの変化を、図 3-36 にこの ときの平均バンチングサイズの変化を示す。計算条件は以下の通りである。計算サイズ 400×400、L0 = 20、T = 500 K、Ediff = 0.5 eV、En = 1 eV、EESB = 0 eV、EiESB = 0.3 eV。どの 条件においてもバンチングが確認されるが、Fが大きい条件ほどバンチングの幅が小さ いことがわかる。これはKasuらのモデルの通り、テラス上での核生成がバンチングの 幅を狭くするためであると考えられる。しかし、𝐿𝑛𝑢𝑐 < 𝐿0を満たすF = 100 ML/sの条 件においても等間隔なステップは出現せずに、バンチングが確認される。したがって、
実験的に高速成長時に確認される等間隔な原子レベルで平坦なステップ構造の出現は Kasuらのモデルによっては説明できない。
3 窒化物半導体におけるステップバンチングの原因解明
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図 3-35 Fを変化させたときの表面モフォロジーの変化(30 ML成長後)。
図 3-36 Fを変化させたときの平均バンチングサイズの変化。
TをパラメータとしてLnucを変化させたときの表面モフォロジーの変化を図 3-37に、
平均バンチングサイズの変化を図 3-38 に示す。図 3-28 でも同様に T をパラメータと して xdiffを変化させたときの表面モフォロジーの変化を示したが、図 3-37 の計算では Edesを十分に大きく𝑥𝑑𝑖𝑓𝑓/𝐿0≫ 1であるために xdiff の変化の影響は排除されている。図 3-37 では低温の Lnuc が小さい条件ほどバンチングの幅が小さいことがわかる。すなわ
Lnuc/L0=1.07 Lnuc/L0=0.70 Lnuc/L0=0.50
F大、Lnuc小
F = 1ML/s F = 10ML/s F = 100ML/s
1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5
0 10 20 30
A v era g e b u n ch siz e
ML
F=1ML/s
100ML/s 10ML/s
Bunch size
3 窒化物半導体におけるステップバンチングの原因解明
104
ち、テラス上で核ができやすいような条件でむしろバンチングが大きくなっているため、
Kasuらのモデルでは現象を正確に説明できない。これは、低温では原子はInverse ESB を超え難く、ステップ取り込みの非対称性の影響が強くなるためである。GaN系結晶で は高温においてバンチングが発生するため、このモデルでは実験傾向を説明できない。
図 3-37 Tを変化させたときの表面モフォロジーの変化(30ML成長後)。
図 3-38 Tを変化させたときの平均バンチングサイズの変化。
Lnuc/L0=0.70 Lnuc/L0=1.77 Lnuc/L0=2.60
T大、Lnuc大
T=500K T=700K T=900K
1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
0 10 20 30
A v era g e b u n ch size
ML
T=500K
700K 900K
Bunch size
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本節ではInverse ESBを仮定したKMCによってLnucが表面モフォロジーに与える影
響を議論した。結果は以下のようにまとめられる。
Fを大きくすることでLnuc小さくするとバンチング幅が小さくなる。これはテラス 上の核生成がマクロステップ幅を減少させるためである。
Tを小さくすることでLnuc小さくするとバンチング幅は大きくなる。これは低温で
Inverse ESBの効果が強くなるためである。
実験的に確認されるような等間隔ステップの出現を説明できない。
「Lnucを小さくすることでバンチングを抑制可能である」というモデルはFを変化 させたときには正しいが、Tを変化させたときには再現されない。