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総論 6 クリプトコックス症の画像所⾒

II. 肺病変の画像所⾒

肺画像所⾒パターン

胸郭内臓器病変は,肺⾨,縦隔リンパ節腫⼤,肺実質11-18),胸⽔19),⾻性胸郭病変8)などであるが,肺実質病変の頻度が⾼

い.肺実質病変の所⾒としては,コンソリデーション(図 1), すりガラス陰影(図 1, 2),結節陰影または腫瘤陰影(多発,

単発)(図 1, 3)11,15),多発⼩粒状陰影20, 21,22),結節周囲のすりガラス陰影(halo sign)などである.すりガラス陰影は,主に免 疫不全者に⾒られる⽐較的広範なものから,halo sign のように結節ないし,腫瘤の辺縁部に存在する例など様々である17,23,24). これらの所⾒の中では,結節陰影の頻度が最も⾼く,結節陰影や腫瘤陰影などの所⾒が混在することがあるともされる24).易 感染患者を含む⾮ HIV 感染患者 151 例における画像所⾒の検討では,末梢に分布する結節陰影が最も多い所⾒である1).

肺画像所⾒の頻度

肺実質病変の頻度に関しては,易感染患者 9 名を含む⾮ HIV 感染患者 22 例のクリプトコックス症の CT 所⾒の検討で 20 例

(90%)に結節ないし腫瘤(単発 60%, 多発 40%)にみられたとされる13).また 16 例の免疫不全を含む 29 例の検討では,

結節 21 例(72%),コンソリデーション 17 例(58%),網状陰影,すりガラス陰影が各々1 例と 4 例にみられたと記載されてい る11).免疫能正常患者のみの 12 名の肺クリプトコックス症の検討でも,10 例では 5mm から 52mm ⼤の単発ないし多発結節 ないし腫瘤陰影を 2 個から 10 個以上認め,辺縁の性状は様々であった14).陰影内部の空洞の頻度は,24〜40%11),13),14) 程度と 記載されている.

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肺画像所⾒の特徴

結節ないし腫瘤陰影は肺末梢優位11,12,15)に分布し,結節陰影の周辺には気道散布陰影を形成することがあるが,結核症ほど明 瞭な気道散布巣は形成しない.結節の形態は,円形や複数結節の融合,いくつかの結節が融合したかのような形態を⽰す(図 2D, 4).結節ないし腫瘤内部の空洞形成もまれではない11,12,15)(図 5).⽐較的広範なコンソリデーションから多発または単発 結節への変化が証明される症例もある(図 2).⾁芽腫性病変では,造影 CT や MRI において結核性⾁芽腫同様にリング状の造 影剤増強効果を⽰す.

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肺画像所⾒の病理学的背景

肺実質病変の病理学的背景は,菌体の肺胞内での増殖,菌体を貪⾷した組織球の肺胞内への浸潤,リンパ球浸潤と⾁芽腫形 成があげられている(総論 3 参照)25).病理学的な裏付けが得られている症例での画像と病理の対⽐では,広範なすりガラス 陰影は,菌体の肺胞腔内でびまん性増殖,泡沫状マクロファージ(foamy macrophage)の浸潤であり,⾼度の免疫不全者にお ける広範なコンソリデーションやすりガラス陰影は,主に⽐較的組織反応に乏しい菌体の肺胞内の増殖や組織球性肺炎に相当 する.また粟粒⼤多発⼩結節を形成した例において,結節性病変の本態が病理的に肺胞腔内の菌体と組織球浸潤を主体とした 病変であった例が報告されている22). 結節近傍のすりガラス陰影は,マクロファージの増殖や滲出液に相当したと記載されて いる24).特発性器質化肺炎類似の画像を⽰し TBLB で⾁芽腫と器質化肺炎を証明した例の報告もある13).完成した⾁芽腫は単 発または多発の結節陰影に相当するものと考えられる24).すりガラス濃度を⽰す限局性病変が経時的に濃厚な結節ないしコン ソリデーションに変化した例が報告されており,肺クリプトコックス症の⾁芽腫形成の過程を表している可能性が⼤きい26)

その他の所⾒の頻度について,halo sign は,3/11 (26%)24) 23/65 (37%)17)程度であり,胸⽔は 8/72 (11%)17)リンパ節腫⼤

は 5/72 (6%)17)程度と⽐較的まれな所⾒である.

宿主の免疫能と肺画像所⾒の関係

宿主の免疫状態の差により臨床像および画像11,12,13)に相違があることが知られている.免疫能が正常な患者では,肺野末梢の 単発ないし多発結節が主な所⾒で,空洞を形成するものも多い.⼀般的に,免疫低下者においては病変が広範となる傾向があ るとされる27, 28,29,30).151 例の⽇本⼈⾮ HIV 感染患者(44%に易感染性をきたす基礎疾患あり)における画像所⾒の検討では,

基礎疾患を有する患者では,右中葉病変と気管⽀透亮像が優位に多いとされる1).空洞に関しては HIV 感染患者中⼼の免疫不 全者で多いという報告11,18)と免疫正常者と免疫不全者でかわらないとする報告がある12)

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種々の免疫不全患者の肺画像所⾒

免疫不全の基礎疾患の差により病態に差がある可能性がある(総論 3 を参照).60 例の HIV 感染患者のクリプトコックス症 症例の検討では,結節陰影の頻度がもっとも多く(93%),浸潤影(31.7%)と胸⽔(11.6%)がそれに続いた31).浸潤影ないしす りガラス陰影や胸⽔例の⼤部分には結節陰影が共存していた.結節陰影に付随する浸潤影,すりガラス陰影所⾒は,その少な くとも 38%の例で合併するニューモシスチス肺炎の影響が疑われた31).HTLV−1 感染患者の肺クリプトコックス症では,陰 性例に⽐較して多彩な画像所⾒を⽰し,有所⾒率が⾼いとされる32). Yanagawa らによると免疫正常者,HIV 感染患者では陰 影の分布は,肺末梢に優位で両者に差はないが,薬物治療中の関節リウマチ患者においては,陰影の分布が肺⾨側から肺中層 部優位の傾向があり12),宿主の免疫状態や宿主反応性の相違が画像所⾒を修飾している可能性がある.本来過剰免疫状態にあ る関節リウマチ患者を薬物により免疫不全状態に誘導したいわば distorted immunity が特異な反応性をきたしている可能性が ある.しかし宿主の反応性の相違と分布の相違がどうのように関連しているのかは解明されていない.

ART 実施後に IRIS をきたした HIV 感染患者 196 例の検討では,カポジ⾁腫,結核に次いでクリプトコックス症が 14%を占 めた33).クリプトコックス症の IRIS では,抗真菌薬による治療開始後速やかに⾎清 GXM 抗原の低下を認め,髄液の培養も陰 性化したにもかからず,無菌性髄膜炎,リンパ節腫⼤,空洞性浸潤陰影などを⽣じた症例が記載されている34)

肺病変や⾻病変の画像からの鑑別診断

画像からの鑑別診断は,結節あるいは腫瘤性病変に関しては,肺癌やリンパ腫,転移性腫瘍などの腫瘍性病変,その他の⾁

芽腫性疾患であるが,同⼀肺葉内多発結節は肺クリプトコックス症を疑う根拠になる35, 36)(図 2d, 4).また多発⼩粒状陰影に おいては,鑑別診断は粟粒結核や多発肺転移になる.コンソリデーションに関しては,その他の原因による肺炎,器質化肺炎,

粘液腺癌などが鑑別の対象になる.もちろん免疫不全者においては,ニューモシスチス肺炎31)や結核37)などとの合併感染も報 告され,鑑別診断上考慮されるべきである

椎体などの⾻関節に病変を形成し,⾻破壊像を⽰すことがあり,その他の原因による椎体炎や椎体転移などの腫瘍性疾患が 鑑別の対象になる.四肢の⾻関節への感染も報告されているが,クリプトコックス症に特徴的な所⾒は記載されていない15)