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総論 8 クリプトコックス症の感染制御

A. クリプトコックス脳髄膜炎 I. クリプトコックス脳髄膜炎の特徴

IV. クリプトコックス脳髄膜炎の持続感染時(難治例)のマネジメント Executive summary

 持続感染の定義は確⽴されていないが,適切な導⼊治療と髄液圧のコントロールにも関わらず治療4週間以降も臨床症状の改善 を認めず,かつ髄液培養が陽性を持続する場合などである(図1).

 薬剤耐性による治療失敗はまれである.不適切な初期治療(⽤量ないし投与期間),治療薬剤の他薬剤との薬物相互作⽤,服薬 アドヒアランスの評価(地固め治療や維持治療の経⼝薬,ART導⼊例ではART薬)を確認する.

 再発時の髄液からの分離株について,薬剤感受性検査を実施する.

 L-AMBは増量(5〜6mg/kg/⽇)し,髄液培養陰性化まで導⼊治療を継続する(A-II).

 原則として5-FCやFLCZとの併⽤治療を⾏う(B-III).

 髄液培養陰性化が得られた場合でも,治療開始から合計10週程度まで導⼊治療を延⻑する.

 アゾール系薬による導⼊治療を開始した持続感染例では,同⼀アゾール系薬増量の効果は推奨しない.

 持続感染時であっても,髄腔内や脳室腔内へのAMPH-Bの投与は推奨されない.

 地固め治療は,(F-) FLCZ 800〜1,200mg/⽇へ増量し( A-III ),治療期間も 10〜12週間 に延⻑する( B-III ).

 維持治療は,FLCZ 400mg/⽇へ増量する( A-III ).

 感受性結果でFLCZ耐性が疑われれば,VRCZによる治療も検討する(A-III).

 再発の原因が服薬アドヒアランス不良の場合には,FLCZ増量および治療期間延⻑による治療強化は不要であり,標準治療に準 じて⾏う.

図1 クリプトコックス脳髄膜炎の難治例における鑑別とマネジメント

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各論1 HIV感染患者におけるクリプトコックス症

各論1-12

クリプトコックス脳髄膜炎持続感染時の抗真菌薬治療レジメン 1) 導⼊治療( 髄液培養陰性かつ合計10週程度まで延⻑)

レジメン 抗真菌薬 1回あたりの⽤量 1⽇あたりの回数 投与経路

第⼀選択薬

L-AMB+5-FC併⽤(A-II) L-AMB 5〜6 mg/kg(増量) 1回 点滴静注

5-FC 25 mg/kg 4回 経⼝

5-FCが使⽤できない場合

L-AMB+(F-)FLCZ併⽤(B-III) L-AMB 5〜6 mg/kg(増量) 1回 点滴静注 FLCZは以下のいずれかを⽤いる

FLCZ 800〜1,200mg* 1回 経⼝

FLCZ 800mg 1回 点滴静注

F‒FLCZ 800mg 1回 静注

L-AMBが使⽤できない場合

(F-)FLCZ+5-FC併⽤(C-III) FLCZは以下のいずれかを⽤いる

FLCZ 800〜1,200mg* 1回 経⼝

FLCZ 800mg 1回 点滴静注

F‒FLCZ 800mg 1回 静注

5-FC 25mg/kg 4回 経⼝

* FLCZ1,200mgの1⽇1回経⼝は,⽇本⼈を対象に⻑期に渡って使⽤した経験が乏しく,安全性は確⽴されていない.

2) 地固め治療(10〜12週間に延⻑)

レジメン 抗真菌薬 1回あたりの⽤量 1⽇あたりの回数 投与経路

第⼀選択薬

(F-)FLCZ単剤(A-III) FLCZは以下のいずれかを⽤いる.

FLCZ 800〜1,200mg*(増量) 1回 経⼝

FLCZ 800mg(増量) 1回 点滴静注

F‒FLCZ 800mg(増量) 1回 静注

(F-)FLCZが使⽤できない場合

VRCZ 単剤(B-III) VRCZ 初⽇300mg 40kg未満は150mg

2回 経⼝(⾷間)

2⽇⽬以降 150〜200mg 40kg未満は100mg

2回 経⼝(⾷間)

(注意)VRCZの有効性を裏付けるエビデンスは乏しい.TDMによる⽤量調整をすること.

* FLCZ1,200mgの1⽇1回経⼝は,⽇本⼈を対象に⻑期に渡って使⽤した経験が乏しく,安全性は確⽴されていない.

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各論1 HIV感染患者におけるクリプトコックス症

各論1-13

3) 維持治療(通常の治療における維持治療終了基準を満たすまで)

レジメン 抗真菌薬 1回あたりの⽤量 1⽇あたりの回数 投与経路

第⼀選択薬

FLCZ単剤(A-III) FLCZ 400mg(増量) 1回 経⼝

FLCZが使⽤できない場合

VRCZ 単剤(B-III) VRCZ 初⽇300mg

40kg未満は150mg

2回 経⼝(⾷間)

2⽇⽬以降 150〜200mg 40kg未満は100mg

2回 経⼝(⾷間)

(注意)VRCZの有効性を裏付けるエビデンスは乏しい.TDMによる⽤量調整をすること.

Literature review

「持続感染」とは

本ガイドラインでは,適切な導⼊治療を4週間以上⾏っても,髄液の培養陰性化が得られない場合を「持続感染」と定義する.導⼊

治療が失敗した場合のサルベージ治療や,導⼊治療成功後の再発例を対象とした⽐較対照試験は無くエビデンスに乏しい.いずれの 場合にも,導⼊治療の再開が基本的な⽅針となるが,髄液培養陽性の抗菌治療失敗であることを確認し,その後に抗真菌薬と他薬剤 との薬物相互作⽤の有無や,FLCZおよび5-FCに対する耐性化の可能性を除外することで,適切な治療レジメンの再検討を⾏う必要が ある.ただし薬剤耐性が原因であることはまれであるため,薬物相互作⽤による抗真菌薬の⾎中濃度低下など,他の原因について確 実に確認を⾏うことが⼤切である.

臨床症状の悪化・再燃が⾒られる場合でも,髄液培養が陰性の場合には抗菌治療失敗ではなくIRISによる病態悪化の可能性を考える べきである(図1).すなわち,導⼊治療後も臨床症状の改善が得られない場合でも,髄液の培養陰性化が得られている場合には

「持続感染」とはしない.この場合には,宿主の免疫能の応答が増強することによって起こるIRISの可能性を考慮する.IRISは通常AR T開始後に⾒られるが,理論的にはART開始とは無関係に起こりうる病態である.免疫正常の⾮HIV感染患者における

C. gattii

脳髄膜炎 で良く知られている66)

持続感染時の対応

持続感染では,導⼊治療における単剤治療を避け,併⽤治療による治療強化が推奨される.アゾール系薬による導⼊治療を⾏って いる場合には,増量しても効果は期待できないことから推奨されない.

薬剤耐性による持続感染の可能性を考慮し,持続感染している分離株に対し薬剤感受性検査を⾏う.薬剤感受性検査の解釈につい ては統⼀した⾒解はないが,初期分離株より治療中に8倍以上のMIC上昇,またはFLCZ≧16μg/mLでは薬剤耐性が⽰唆される.AMP H-B製剤の髄腔内投与や脳室内投与は推奨されない.

持続感染ではL-AMBを⾼⽤量(5〜6mg/kg/⽇)とし,導⼊治療を強化する.髄液の培養陰性化を必ず確認し,その後に地固め治療 および維持治療へ移⾏する.地固め治療もFLCZ 800〜1,200mg/⽇の⾼⽤量とし,10〜12週間の⻑期に⾏うことを推奨する.維持治療 も400mg/⽇の⾼⽤量で⾏うことを推奨する.薬剤感受性検査でFLCZ耐性が疑われる場合にはVRCZの使⽤を検討する.VRCZの適切な 投与量に関するエビデンスは存在しない.トラフ濃度および髄液濃度をモニタリングし,分離株のMIC等も併せて,個々の症例で投 与量を設定することを推奨する.ITCZは髄液移⾏性に乏しく,特に維持治療におけるFLCZに対する劣性がすでに明らかである53)た め,本ガイドラインでは推奨しない.

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各論1 HIV感染患者におけるクリプトコックス症

各論1-14

V. クリプトコックス脳髄膜炎再発(再燃あるいは再感染)時のマネジメント