各論 7 ⽪膚クリプトコックス症
III. ⽪膚クリプトコックス症の治療 Executive summary
7. クリプトコックス胸膜炎
胸⽔貯留を認めるクリプトコックス症はまれであり,これまでに 30 例ほどの報告がある.播種性クリプトコックス症の部分 症として発症する場合と胸部に限局している場合がある1).臨床所⾒として胸⽔のみを認める場合には診断が困難である.胸膜 の PAS 染⾊や methenamine silver 染⾊でクリプトコックス菌体を認めた例もあるが,胸⽔の培養陽性率は低く,42%であっ たとの報告がある1).GXM 抗原を⾎清や胸⽔で検出することは診断に有⽤である2).免疫不全患者における原因不明の胸⽔症 例ではクリプトコックス感染症も鑑別に挙げるべきかも知れない.治療に関する確⽴したエビデンスはない.
⽂献
1) Young EJ, Hirsh DD, Fainstein V, Williams TW: Pleural effusion due to
Cryptococcus neoformans
: A review of the literature and report of two cases with cryptococcal antigen detrminations. Am rev Resp Dis 121:743-747, 1980.2) Chen M, Wang X, Yu X, Dai C, Chen D, Yu C, Xu X, Yao D, Yang L, Li Y, Wang L, Huang X: Pleural effusion as the initial clinical presentation in disseminated cryptococcosis and fungemia: An unusual manifestation and a literature review. BMC 15:385 DOI 10.1186/s12879-015-1132-4.
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製品名 ジフルカン(プロジフ) イトリゾール ブイフェンド ファンギゾン アムビゾーム アンコチル
剤形 注射剤、カプセル、懸濁液(静注⽤注射剤)、ドラ カプセル、内⽤液、注射剤 静注⽤注射剤/錠剤/ドライシロップ 錠剤、シロップ、注射剤 注射剤 錠剤
参照医薬品インタ ビューフォーム
カプセル・ドライシロップ:2017年7⽉改訂(第 20版)
注射剤:2017年7⽉改訂(第11版)
プロジフ:2017年11⽉改訂(第15版)
カプセル:2017年7⽉改訂(第19版)
内⽤液:2018年2⽉改訂(改訂第16 版)
注射剤:2017年7⽉改訂(第16版)
2018年1⽉改訂(第18版) 2016年6⽉改訂(第7版) 2015年2⽉改訂(第9版) 2016年2⽉改訂(第6版)
作⽤機序 核酸合成阻害
TDM 不要 内⽤液の深在性真菌症予防において
TDMが推奨されている。
治療反応性に乏しい場合、毒性が認め
られた場合においては推奨 不要 不要 不要
PK/PD 濃度依存及び時間依存型 濃度依存及び時間依存型 濃度依存及び時間依存型 濃度依存型 濃度依存型 時間依存型
薬物動態の特徴
組織移⾏性(対⾎中濃度⽐):唾液(105〜
124%)、喀痰(125%)、肺組織(94%)、髄液
(po 79%、iv 96%)、房⽔(87%)、硝⼦体液
(73%)へ良好に移⾏
代謝、排泄:ほとんど代謝を受けず、未変化体で 主に尿中排泄
肝代謝、尿中および糞便中排泄 ほとんどの臓器濃度>⾎中濃度。
肝、肺、腎、脂肪への移⾏良好、
ただし脳および髄液移⾏不良
組織移⾏性:肺、脳を始め、組織への 移⾏良好(対⾎漿中濃度:肺組織:11 倍、脳:2〜3倍)
代謝、排泄
主に肝で代謝され、主に尿中に排泄さ れる
(吸収・分布・代謝・排泄):詳細不 明
⾎漿中濃度の約2/3が炎症性の胸膜,腹 膜,滑膜及び
房⽔中に認められている。脳脊髄液中 からはほとんど検
出されない。
(吸収・分布・代謝・排泄):詳細不 明
脂質製剤のため細網内⽪系に貯留した 上で、⻑期に⾎中に滞留。
髄液、喀痰への移⾏良好
ほとんど代謝されず、98%以上が未変化体 として尿中に排泄
効能・効果
●カンジダ属・クリプトコックス属による真菌⾎
症、呼吸器真菌症、真菌腹膜炎*、消化管真菌 症、尿路真菌症、真菌髄膜炎
*:プロジフのみ
●造⾎幹細胞移植患者における深在性真菌症の予 防(ジフルカンのみ) ●カンジダ属 に起因する膣炎及び外陰膣炎(ジフルカンカプセ ルのみ)
[適応菌種] ⽪膚⽷状菌(トリコフィ トン属、ミクロスポルム属、エピデル モフィトン属)*、カンジダ属、マラ セチア属*、アスペルギルス属、クリ プトコックス属、スポロトリックス属
*、ホンセカエア属*、ブラストミセ ス属、ヒストプラズマ属
*:カプセルのみ
●内臓真菌症(深在性真菌症)
・真菌⾎症、呼吸器真菌症、消化管 真菌症、尿路真菌症、真菌髄膜炎、⼝
腔咽頭カンジダ症*、⾷道カンジダ症
**、ブラストミセス症**、ヒスト プラスマ症**
*;内⽤液のみ
**:内⽤液、注
●真菌感染が疑われる発熱性好中球減 少症(内⽤液、注)
●好中球減少が予測される⾎液悪性腫 瘍⼜は造⾎幹細胞移植患者における深 在性真菌症の予防(内⽤液)
●深在性⽪膚真菌症(カプセル)
・スポロトリコーシス、クロモミコー シス
●表在性⽪膚真菌症(カプセル)
侵襲性アスペルギルス症、肺アスペル ギローマ、慢性壊死性肺アスペルギル ス症、カンジダ⾎症、⾷道カンジダ症
*、カンジダ腹膜炎、気管⽀・肺カンジ ダ症、クリプトコックス髄膜炎、肺ク リプトコックス症、フサリウム症、ス ケドスポリウム症
造⾎幹細胞移植患者における深在性真 菌症の予防
*:錠剤、シロップのみ
● 有効菌種:アスペルギルス、カンジ ダ、ムコール、クリプトコックス、ブ ラストマイセス、ヒストプラズマ、コ クシジオイデス、ホルモデンドラム、
ヒアロホーラ、ホルミシチウム 適 応症:上記真菌による深在性真菌症
(注射薬)
● 消化管におけるカンジダ異常増殖
(シロップ、錠剤)
● 真菌感染症:アスペルギルス属、カ ンジダ属、クリプトコックス属、ムー コル属、アブシジア属、リゾプス属、
リゾムーコル属、クラドスポリウム 属、クラドヒアロホーラ属、ホンセカ エア属、ヒアロホーラ属、エクソフィ アラ属、コクシジオイデス属、ヒスト プラズマ属、及びブラストミセス属に よる下記感染症 真菌⾎症、呼吸器 真菌症、真菌髄膜炎、播種性真菌症
● 真菌感染が疑われる発熱性好中球減 少症
● リーシュマニア症
有効菌種
クリプトコックス、カンジダ、アスペルギ ルス、ヒアロホーラ、ホンセカエア 適応症:真菌⾎症、真菌性髄膜炎、真菌性 呼吸器感染症、⿊⾊真菌症、尿路真菌症、
消化管真菌症
⽤法・⽤量
カンジダ症にはフルコナゾールとして50〜
100mg、クリプトコックス症にはフルコナゾール として50〜200mgを1⽇1回経⼝⼜は静脈内投 与、1⽇400mgまで増量可。
(F=FLCZは初⽇、2⽇⽬ 倍量投与する)
なお、重症⼜は難治性真菌感染症の場合には、フ ルコナゾールとして400㎎まで維持要領を増量で きる。
〈以降ジフルカンのみ〉
造⾎幹細胞移植患者における深在性真菌症の予防 には400mgを1⽇1回経⼝⼜は静脈内投与
(注射剤)
通常、成⼈には投与開始から2⽇間はイ トラコナゾールとして1⽇400mgを2回 に分けて点滴静注する。3⽇⽬以降は1
⽇1回200mgを点滴静注する。投与に際 しては、必ず添付の専⽤フィルター セットを⽤いて、1 時間かけて点滴静 注する。
(以下、カプセル、内⽤液)
●内臓真菌症(深在性真菌症) : 通常、成⼈にはイトラコナゾールとし て200㎎(カプセル:100〜200mg)を 1⽇1回⾷直後に経⼝投与する。なお、
年齢、症状により適宜増減する。ただ し、イトラコナゾール注射剤からの切 り替えの場合、1回200mgを1⽇2回(1
⽇⽤量400mg)⾷直後に経⼝投与す る。
●真菌感染が疑われる発熱性好中球減 少症
通常、成⼈には、イトラコナゾール注 射剤からの切り替え投与として、20mL
(イトラコナゾールとして200mg)を1
⽇1回空腹時に経⼝投与する。なお、年 齢、症状により適宜増減する。ただ
注射:初⽇1回6mg/kgを1⽇2回、2⽇⽬
以降は1回3mg/kg⼜は1回4mg/kgを1⽇
2回
経⼝:初⽇に1回300mgを1⽇2回、2⽇
⽬以降は1回150mg⼜は1回200mgを1
⽇2回⾷間投与する。症状に応じて⼜は 効果不⼗分の場合増量でき初⽇投与量 の上限は1回400mg1⽇2回、2⽇⽬以降 投与量の上限は1回300mg1⽇2回まで また、体重40kg未満の患者には、初⽇1 回150mgを1⽇2回、2⽇⽬以降は1回 100mgを1⽇2回⾷間投与する。なお、
症状に応じて⼜は効果不⼗分の場合に は2⽇⽬以降の投与量を1回150mg1⽇
2回まで増量できる。
● 注射:(静注)1⽇体重1kgあたり アムホテリシンB 0.25mg(⼒価)より開 始し,次回より症状を観察しながら漸 増し,1⽇量として体重1kgあたり 0.5mg(⼒価)を点滴静注するが,投与量 は1⽇体重1kgあたり1mg(⼒価)また は隔⽇体重1kgあたり1.5mg(⼒価)ま で。
(気管内注⼊)、(胸膜内注⼊)、
(髄膜内注⼊)、(髄腔内注⼊)、
(膀胱内注⼊)、(⽪内注)、(吸
⼊)の⽤法がある。
●シロップ: 1回 0.5〜1 mL (アムホ テリシンBとして 50〜100 mg)を1⽇
2〜4回⾷後経⼝投与。
●錠剤: 1回 1錠(アムホテリシンBと して 100 mg)を1⽇ 2〜4回⾷後経⼝投 与。
体重1kg当たりアムホテリシンBとして 2.5 mg(⼒価)を 1⽇ 1回、1〜2時間 以上かけて点滴静注する。患者の症状 に応じて適宜増減できるが、1⽇総投与 量は体重1kgあたり 5 mg(⼒価)ま で。但し、クリプトコックス髄膜炎で は、1⽇総投与量は体重 1 kg当たり 6 mg(⼒価)まで投与可。
真菌⾎症、真菌性髄膜炎、真菌性呼吸器感 染症、⿊⾊真菌症には、通常フルシトシン として1⽇100〜200mg/kgを4回に分割投 与する。
尿路感染症、消化管真菌症には通常フルシ トシンとして1⽇50〜100mg/kgを4回に分 割投与する。
特殊病態下における調 節
腎障害患者にはクレアチニン・クリアランス
(Ccr)値(mL/min)を参考に⽤量を調節
>50:通常⽤量
≦50(透析患者を除く):半量 透析患者:透析終了後に通常⽤量
原則不要(禁忌参照)
軽度〜中等度の肝機能低下(Child Pugh分類クラスA、Bの肝硬変に相当)
がある患者では投与初⽇は通常の初⽇
投与量とし、2⽇⽬以降は通常の2⽇⽬
以降投与量の半量とすること 重度の肝機能低下:データ無く不明。
おそらく避けるべき
重度の腎障害:禁忌参照(注射のみ)
不要 不要
腎機能障害者にはCcr(mL/min)を参考に 1回⽤量(mg/kg)及び投与間隔を調節
>40:25〜50、6時間(1⽇4回)
40〜20:25〜50、12時間(1⽇2回)
20〜10:25〜50、24時間(1⽇1回)
<10:50、24時間以上*
*:定期的⾎中濃度測定により決める 真菌細胞膜への直接障害
エルゴステロール合成酵素阻害
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製品名 ジフルカン(プロジフ) イトリゾール ブイフェンド ファンギゾン アムビゾーム アンコチル
剤形 注射剤、カプセル、懸濁液(静注⽤注射剤)、ドラ カプセル、内⽤液、注射剤 静注⽤注射剤/錠剤/ドライシロップ 錠剤、シロップ、注射剤 注射剤 錠剤
主な副作⽤ 肝障害 QT延⻑
●3剤型共通:
肝機能障害、低カリウム⾎症、うっ⾎
性⼼不全*
●内⽤液:
消化器障害(軟便、下痢、悪⼼)
*頻度は低いが特徴的なため記載
羞明等、視覚障害 肝障害 精神症状 QT延⻑
アレルギー反応、
点滴中の発熱、嘔気・嘔吐、
低カリウム⾎症、クレアチニン上昇
点滴中の発熱、嘔気・嘔吐、背部痛、
低カリウム⾎症、クレアチニン上昇、
⾎液障害(汎⾎球減少、無顆粒球症など)
腎機能障害(腎不全など)
消化器症状(⾷欲不振、嘔気など)
禁忌
トリアゾラム、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタ ミン、キニジン、ピモジド、アスナプレビル、ダ クラタスビル・アスナプレビル・ベクタブピル配 合錠投与中
本剤に過敏症既往
妊娠または妊娠の可能性のある患者
●3剤形共通:
ピモジド、キニジン、ベプリジル、ト リアゾラム、シンバスタチン、アゼル ニジピン、ニソルジピン、エルゴタミ ン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴメ トリン、メチルエルゴメトリン、バル デナフィル、エプレレノン、ブロナン セリン、シルデナフィル(レバチ オ)、タダラフィル(アドシルカ)、
アスナプレビル、バニプレビル、スボ レキサント、イブルチニブ、チカグレ ロル、アリスキレン、リバーロキサバ ン、リオシグアトを投与中の患者 肝⼜は腎に障害があり、コルヒチンを 投与中の患者
本剤の成分に対して過敏症の既往歴の ある患者
重篤な肝疾患の現症、既往歴のある患 者
妊婦⼜は妊娠している可能性ある婦⼈
●カプセル、内⽤液のみ ダビガトランを投与中の患者
リファビシン、リファブチン、エファ ビレンツ、リトナビル、カルバマゼピ ン、⻑期間作⽤型バルビツール酸誘導 体、ピモジド、キニジン硫酸塩⽔和 物、⻨⾓アルカロイド(エルゴタミン 含有製剤)、トリアゾラムを投与中の 患者
本剤の成分に対して過敏既往 妊婦⼜は妊娠している可能性のある患 者
原則禁忌(注射のみ)
重度の腎障害
(CCR<30mL/min)
●注射薬、シロップ、錠剤共通:過敏
症の既往のある患者 過敏症の既往のある患者
⽩⾎球輸注
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患 者
妊娠または妊娠している可能性のある婦⼈
テガフール、ギメラシル、オテラシルカリ ウム配合剤投与中の患者及び投与中⽌後7
⽇以内の患者
慎重投与
●カプセル・ドライシロップ・注射剤共通 薬剤過敏症既往
腎障害 肝障害
⼼疾患または電解質異常
●懸濁液 腎障害 肝障害
⼼疾患または電解質異常 ワルファリン投与中
●ドライシロップのみ
遺伝性フルクトース不耐症、グルコース・ガラク トース吸収不全症またはクラーゼ・イソマルター ゼ⽋損症の患者
腎障害、肝障害、薬剤過敏症の既往、
アレルギー既往、⾼齢者、ワルファリ ンを投与中の患者、うっ⾎性⼼不全⼜
はその既往
●錠剤・注射剤共通 薬剤過敏症既往 重度の肝機能低下 不整脈
ワルファリンを投与中の患者
●ドライシロップ
遺伝性フルクトース不耐症、グルコー ス・ガラクトース吸収不全症⼜はスク ラーゼ・イソマルターゼ⽋損症
●注射剤 中等度の腎障害
(CCR 30mL/min〜50mL/min)
●注射薬: 腎障害
● シロップ、錠剤:なし
腎障害 薬物過敏症既往歴
⼤⾖アレルギー
⾎液障害またはその既往 腎障害
肝障害 薬物過敏症既往歴
その他 ジフルカンは⼩児適応あり
・カプセルは表在性⽪膚真菌症、⽖⽩
癬の適応症も有する。
・CYP3A4及びP糖蛋⽩を阻害するため 同じ代謝機序の薬剤の併⽤時は注意
投与期間中は⾎中濃度をモニタリング することが望ましい。
・透析では除去されない
・総投与量が5gを超えると不可逆的な 腎障害があらわれることがある。
・⼩児に対する適応あり
・透析では除去されない
・薬剤調整時には添付のフィルターを 使⽤、薬液を濾過しながら静注⽤希釈 液を作成する。
・【警告】テガフール、ギメラシル、オテ ラシルカリウム配合剤との併⽤により、重 篤な⾎液障害等の副作⽤が発現するおそれ があるので併⽤を⾏わないこと
・⾻髄抑制を起こすおそれのある薬剤、放 射線照射、アムホテリシンBとの併⽤に注 意する。
・フルオロウラシルの異化代謝酵素である ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ
(DPD)⽋損等の患者がごくまれに存在 し、このような患者に他のフッ化ピリミジ ン系薬剤を投与した場合、投与初期に重篤 な副作⽤(⼝内炎、下痢、⾎液障害、神経