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第6章

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人権とハラスメント

 ハラスメントとは,他の人を不快にさせ,精神的に傷つけるような言動を行うことです.ハラスメ ントについての正しい理解が,ハラスメントの防止につながります.そこで,人権とハラスメントに ついて紹介します.

6.1  人権とセクシュアル・ハラスメント

6.1.1 男女共同参画社会の構築と人権

 大学は,卒業後様々な分野で活躍する人材を育成する重要な使命を持っています.したがって,大 学で学ぶみなさんは日本のあるべき社会の構成員になることを自覚して,専門分野に限らず,一般教 養や倫理,あるいは人権に関して広く学ぶ必要があります.

 現在,我が国は男女共同参画社会の構築を目標にしています.この男女共同参画社会は,男女が均 等に政治的,社会的および文化的利益を受けることができ,共に責任を担う社会のことです.

 このような社会の実現には,男女がまず個人として自立し,しかも互いに尊敬しあうことが大切で す.そのためには性別によらずにそれぞれが持つ能力を最大限に発揮し,平等の権利のもとで社会参 加することが求められています.したがって,人権の視点に立って平等,自由および生命を尊重し,

さらには働いたり,学んだりする権利を保障しなければなりません.

 現実には性差別やさまざまな人間関係によって,人間が持つ基本的人権を侵害するハラスメントが 起こっています.ハラスメントは人権侵害であり,犯罪であることを学び,それを防止したり,排除 することに努めることが男女共同参画社会に参加する者の責務でもあります.

6.1.2 セクシュアル・ハラスメントとは

 セクシュアル・ハラスメント(sexual harassment 略してセクハラ)は,アメリカの女性解放運 動家であるキャサリン・マッキノンによって1979年に「セクシュアル・ハラスメントは雇用におけ る性差別である」とはじめて指摘されました.このように名付けられたことによって,労働環境の中 で起こっている既成の事実が性差別の問題として認識されるようになりました.そして,セクシュア ル・ハラスメントを解決するためにさまざまな対策が採られたり,それが犯罪であると考えられるよ うになってきました.

 日本では,1993年に労働省がセクシュアル・ハラスメントを定義しました.その定義によると,

セクシュアル・ハラスメントは「相手方の意に反した,性的な性質の言動を行い,それに対する対応 によって仕事を遂行する上で一定の不利益を与えたり,またはそれを繰り返すことによって就業環境 を著しく悪化させること」となります.

 セクシュアル・ハラスメントの基準は,相手の意に反した性的な性質の言動を,それを聞いたり,

受けたりした人が不快に思うことです.その言動を行った当人の意図は関係ありません.したがって,

セクシュアル・ハラスメントを起こさないためには,自分の言動が他人に対してどういう感情を与え るか,相手の価値観や感受性を敏感に察知する感覚を養うことが重要です.

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第6章

 セクシュアル・ハラスメントには,次の三つのタイプがあります.

1.言葉によるもの 2.行動によるもの 3.視覚によるもの

 具体的には,性的な噂を流すなど間接的に相手に向けられるものは1の例になります.性的な関係 を強要したり,身体に触れたりして直接相手に向けられるものは2の例になります.3の例は,ヌー ドポスターを人目のつくところに貼るような不特定多数に向けられたものです.

 また,セクシュアル・ハラスメントは図6.1に示すように「対価型」と「環境型」に分類されます.

前者は,権限を持つ上司による性的な要求に従わなかったため,解雇や昇進差別等の職業上の不利益 が生じた場合を指します.後者は,明白に具体的,経済的な不利益は伴わないものの,屈辱的,敵対 的な発言の繰返しにより,就業環境を著しく不快なものとし,個人の職業能力の発揮に深刻な悪影響 を及ぼすことを指します.

 いずれにしてもセクシュアル・ハラスメントを起こさないためには,相手の人格を尊重し,自分勝 手に思い込むのはやめることです.また,セクシュアル・ハラスメントを受けていると感じたら「い やだ」という意志を明確に伝えることが大切です.

6.2 アカデミック・ハラスメント

6.2.1 アカデミック・ハラスメントとは

 アカデミック・ハラスメント(academic harassment 略してアカハラ)とは,研究と教育の場で の権力等を利用した(性的でない)嫌がらせをいいます.嫌がらせを意図せずに行われた行為も含ま れます.セクハラと同様,アカハラも,被害者に著しい精神的・肉体的苦痛を与え,被害者を著しく 傷つける行為です.また,被害者の人格や学習権・研究権を侵害する行為です.

6.2.2 アカデミック・ハラスメントの内容

 学生さんへのアカハラを考えますと,加害者として一番目にあがるのは,残念ながら教員です.教 員は学生さんに対して大きな支配力をもっています.その支配力を背景に行われる下記のような事柄 等が,アカハラの内容としてあげられます.

研究教育機関での正当な活動を直接的・間接的に妨害する.

正当な理由無く,進級・卒業・修了を認めない.単位を与えない.

就職・進学の妨害.

教員の職務上の義務である指導や教育を怠る.指導下の学生を差別的に扱う.

本人がその場に居るか否かに関わらず,学生を傷つけるような言動を行う.発奮させる手段 としても不適切.

深夜や,他人の目の届かない状況など,不適切な環境下での指導を強制する.

権力を濫用して,不当な規則,親密な関係,不正・不法行為,プライベートな行動に付き合 うこと,送り迎え,教員の学会発表のデータ作りを,共著者でない学生に徹夜で仕上げるこ と,等々を強要する.

プライベートなことを必要以上に知ろうとしたり,プライベートなことに介入しようとした りする.

 学生間でもアカハラが起こることが考えられます.専攻やゼミ,クラブやサークルといった集団で の先輩−後輩関係,卒業研究指導等で,大学院生等の上級生が「教員役」を務める場合等には,学生 同士でも権力関係が生じます.集団内に多数派と少数派があると,少数派は「弱い立場」に追い込ま れます.これも一種の権力関係です.

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図6.1. セクシュアル・ハラスメントの分類:対価型と環境型.

6.2.3 もしもあなたが被害を受けたら

 被害を受けたことで,一方的に自分を責めないで下さい.取りあえずその状況から逃げ出して危険 を避け,心と体を癒して下さい.一人で問題を抱え込まないで,信頼できる人に相談したり,相談窓 口を利用したりして下さい.

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6.3 アルコール・ハラスメント

6.3.1 人はなぜ酔うのか

 血液に入ったアルコールは循環されて脳に到達します.すると,アルコールが脳の神経細胞に作用 し,活動に必要なエネルギー源を不足させ,その働きを抑制し,麻痺させるといわれています.そし て,その結果として酩酊状態になります.

 さて,未成年者の飲酒は法律1で禁じられています.

どうして未成年者がお酒を飲んではいけないのか

 アルコール健康医学協会は,つぎの理由をあげています.

 未成年者はアルコールを分解する仕組みが未熟です.それで過度の飲酒をした場合,急性ア ルコール中毒になる危険性が高いのです.

 アルコール依存症になりやすくなります.未成年者は心身が未発達なため適度な飲酒をする という判断力もなく,自己規制がききません.未成年の時から飲酒すると次第に飲酒量が増 え,飲まないと落ち着かなくなってきます.そして大量のお酒を毎日飲むようになり,アル コール依存症になってしまいます.

 脳の神経細胞を破壊します.アルコールを大量に長い年月飲み過ぎると脳が縮んできます.

特に脳が未完成の未成年者ではおこりやすいのです.そのため勉強に必要な集中力や記憶力 が低下し,成績不振につながります.

 人生の幅を狭めてしまいます.酒の酔いは他の楽しみ方を学ぶ意欲をなくします.

アルコールが飲めるか飲めないかは先天的に決まっている

 生まれつき酒に弱く,わずかの酒を飲んでも顔が赤くなったり,吐き気を訴える人がいます.体内 に入ったアルコールの大部分が肝臓で代謝されます.肝臓ではアルコールはアセトアルデヒドを経て アセテート(酢酸)に分解されますが,このアルデヒドが問題です.

 アセトアルデヒドを分解する酵素のALDHには1型と2型があります.日本人の約46%の人は生

まれつきALDH2型の活性が低いか欠けています.このタイプの人はアセトアルデヒドを分解する能

力が低いため,少量の酒を飲んでもアセトアルデヒドが体内に蓄積されていくので悪酔いしやすいの です.

 この体質は,遺伝によるもので終生変わることはなく,努力で飲めるようになることはありません.

飲めない人にお酒を無理強いするのは,相手を苦しめることになるのです2

6.3.2 アルコール・ハラスメントとは

 次のような,アルコール飲料を用いたいやがらせや人権侵害は,アルコール・ハラスメント(alcohol harassment  略してアルハラ)と呼ばれています.

 上下関係・部の伝統・集団によるはやしたてなどといった形で心理的な圧力をかけ,飲まざ るをえない状況に追い込むこと.

 場を盛り上げるために,イッキ飲みや早飲み競争・罰ゲームなどをさせること.イッキ飲み とは一息で飲み干すこと.早飲みと同じ.

 酔いつぶし.酔いつぶすことを意図して,吐くための袋やバケツ,つぶれ部屋を用意して飲 み会を行うことで,これは傷害行為.

1未成年者飲酒禁止法.

2さらに詳しく知りたい場合は,http://www.arukenkyo.or.jp/にアクセスしてください.

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