学ぶためのスキル I 情報収集
4.2 レポートの書き方
演習・実験や創成科目などで,あるプロジェクトが終了すれば必ずレポートを作成することになり ます.要領を得たレポートの作成は,研究者・技術者に限らず組織に属している者にとって,仕事の 進行状況を他の者に報告する手段として極めて重要です.
ある報告によれば,研究者や技術者の実働の1/3はレポートなどの文書の作成に時間を費やして いるといわれています.したがって,みなさんが学生のうちにレポート作成の技術を身につけておく ことは大切なことです.
近い将来,みなさんが書くことになる卒業研究論文もレポートの一種ですが,この節ではおもに演 習や実験のレポートの作成を念頭において話を進めることにします.
4.2.1 レポートの項目と注意点
専門分野やレポートの内容によってその形式は異なりますがレポートに必要な項目には以下のよう なものがあります.
1.タイトル,所属・氏名・実験日・提出日 2.まえがき
3.実験 4.結果 5.考察 6.結論 7.参考文献
なお,演習や実験などの簡単なレポートであれば,結果と考察をまとめたり,結論を考察のなかに 含めるのが一般的です.
つぎに,各項目を記述する際の注意点や要点を示しておくことにします.
表紙
レポートの表紙は図4.1を参考にしてください.
まえがき
学術論文の序論や緒言に相当する項目ですが,演習や実験のレポートでは「はじめに」と書くか,
図4.1. レポートの表紙.
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あるいはこれも省略していきなり本文に入ってもよいでしょう.まえがきでは,実験の目的や概要を 記述します.
実験書の文章をそのまま写すのではなく,自分の言葉で内容をよく理解した上で簡潔に書く練習を しましょう.ページの割り振りはレポート全体の10から20%程度が適量でしょう.
実験
この項目では使用した装置,実験操作,測定物質などについて実験の流れに沿って説明します.他 の人が読んで同じ実験を繰り返すことができるように詳しく記述するのが原則です.
結果と考察
レポートの最も重要な箇所で,最も多くの時間とエネルギーを費やす必要のある項目です.実験で 得られた生のデータを解析して図や表であらわし,整理した後これらの結果をもとに考察の部分を記 述することになります.
考察では実験事実と自分の意見の区別を明確にして書くことが大切です.
図と表の作成
文章を補って内容を分かりやすくするのが図と表です.図表をいかに効果的に使うかが技術系レ ポートの良し悪しを決めるといっても過言ではありません.したがって,図表の作成には十分注意を 払う必要があります.
図(グラフ)の番号と標題,場合によっては図の簡単な説明文を図の下に書き入れます.横軸(x軸)
には条件や要因,縦軸(y軸)にはその結果をとるのが一般的な表し方といえます.(図4.2を参照).
表については番号と標題を表の上に書き,表の罫線の数がなるべく少なくなるように工夫します.
単位
物理量にはすべて単位があります.したがって,単位のない数字は意味をもちません.単位の欠落
図4.2. 大腸菌の細胞長に及ぼす圧力とエタノールの影響.
第4章
がないよう十分注意しましょう.
単位を使用する際の問題点として,どのような単位系を使用すればよいのか悩む場合があります.
工学系の報告では原則として,SI単位(国際単位系)を使用することになっています(表4.1を参照).
考察
考察は,実験結果がなぜそうなるのかを論理的に述べる節です.考察の箇所で実験に関する感想が 書かれているレポートをよく見かけますが,考察と感想は区別しなければなりません.
一般的な学術論文では感想を記述することはまずありませんが,演習や実験では,反省も含めた感 想を書いておくのはよいことかも知れません.このことによって,次回の実験のミスを防ぐのに役立 つでしょうし,指導する側にも参考になるなど利点があるからです.
参考文献
論文の内容を引用した場合,その箇所に番号を入れレポートの最後に引用文献として示す必要があ ります.出典を明らかにすることは礼儀でもあり,掲載もれのないよう十分に注意しなければなりま せん.インターネットから得られた情報も,文献と同じように出典を明記する必要があります.通常,
引用文献は引用順に文献番号を付して示します.なお,出典の書き方,様式は分野によって様々で す.一例を示しておきます.
[1]M. Abe and M. Terai, Effects of pressure on the photoreduction of p-benzoquinone in normal and reversed micellar systems, J. Chem. Soc., Farady Trans. 1, 85, 1493(1989).
[2]宮下充雄,高圧力下の微生物活性,高圧力の科学と技術,8,294(1998).
表4.1. SI基本単位と補助単位
(a)基本単位
量 単位 記号 説 明
時間 second s
133Cs原子の基底状態の2つの超微細準位(F = 4,M = 0およ びF = 3,M = 0)の間の遷移に対応する放射の9 192 631 770 周期の継続時間.
長さ metre m 光が真空中で1/(299 792 458)sの間に進む距離.
質量 kilogram kg 国際キログラム原器の質量.
電流 ampere A
真空中に1 mの間隔で平行に置かれた,無限に小さい円形断 面積を有する,無限に長い2本の直線状導体のそれぞれを流 れ,これらの導体の長さ1 mごとに2×10-7 Nの力を及ぼし あう一定の電流.
温度 kelvin K 水の三重点の熱力学温度の1/273.16.
物質量 mole mol 0.012 kgの12Cに含まれる原子と等しい数の構成要素を含む
系の物質量.
光度 candela cd 周波数540×1012 Hzの単色放射を放出し所定の方向の放射
強度が1/683 W・SR-1である光源の,その方向における光度.
(b)補助単位
量 単位 記号 説 明
平面角 radian rad 円の周上で,その半径の長さに等しい長さの弧を切り取る2
本の半径の間に含まれる平面角
立体角 steradian sr 球の中心を頂点とし,その球の半径を一辺とする正方形に等
しい面積を球の表面上で切り取る立体角.
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