第 7 章参考文献
9.4 毒物・劇物の扱い
実験や研究に使う試薬の中には毒物や劇物が含まれていることがあります.したがって,その取り 扱いには厳重な注意と管理が必要です.
9.4.1 危険な化学物質とその作用
毒物や劇物は,人や動物の体に局所的に強く作用するか,体内に吸収されて諸器官に作用するか,
あるいはその両方です2.
1.接触した局部の細胞に作用して凝固,崩壊,壊疸をおこさせるもの:硫酸,塩酸,硝酸など の腐食性酸類,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,アンモニア水などの腐食性アルカリ,
水銀,銀,銅,亜鉛などの塩類など
2.主として体内に吸収されて,細胞の原形をおかし,酸素の供給をさまたげ,代謝作用に障害 をきたし,各器官に変性をおこさせるもの:黄燐,砒素化合物,アンチモン化合物,鉛化合 物など
3.血色素を溶解したり,メトヘモグロビンとしたり,あるいは結合力の強いヘモグロビン結合 体をつくって酸素の供給を不十分にするもの:シアン化合物,塩素酸類,ニトロベンゼンな ど
4.体内に吸収されて,主として中枢神経と心臓をおかすもの:メタノール,スルホナール,ク ロロホルムなど
5.体内に吸収されて,コリンエステラーゼを阻害し,神経の正常な機能をさまたげるもの:パ ラチオン,有機燐製剤など
これらの毒作用は,事故や誤って食べたりすることによって,一時に相当多量に用いられた場合は 急性中毒,少量ずつ長い間にわたって体内に吸収された場合は慢性中毒をおこします.
化学薬品による事故は時に人命に関わることがあります.実験,研究などに携わる方は安全の確保 に細心の注意と最大の努力を払うことが大切です.また,最近では毒物および劇物の化学物質等の保 管・管理が問題になっています.
工学部でも数多くの毒物および劇物に指定されている化学物質等を研究用に使用しています.紛 失・盗難等が無いように薬品管理システムを利用した化学物質等の保管および管理を徹底しています ので,協力をしてください.
9.4.2 化学薬品および有害物質を取扱うには
化学薬品等を取扱う場合は,入手(購入,持込み),保管,使用,廃棄の一連の取扱い作業におい て大学の規程を遵守するとともに,化学薬品等取扱主任者および化学薬品等取扱責任者の指示に従わ なければなりません.なお,工学部では薬品管理システムを導入し,日々の薬品管理が適切に行われ るように整備しています.
なお,ガス状のものや製品に用いられているものであっても有害なものは,化学薬品等としての取 扱いが必要になりますので,注意してください.
保管と保管場所
(1) 危険物:消防法で危険物と定められた化学薬品等の貯蔵については,法律の定めるところに従 わなければならないことになっています.詳細は,教員に確認してください.
(2) 毒物,劇物:毒物および劇物取締法で毒物,劇物と定められた化学薬品については,次のよう
2「化学薬品等取扱いの手引き」高エネルギー加速器研究機構の安全委員会化学専門部会の手引きから一部引用.
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に保管してください.なお,特定毒物については,特定毒物研究者の許可を受けた者でなければ使用 できません.
1.専用保管庫の設置:金属製で持ち運びが容易でない薬品保管庫に,一般の薬品とは別に保管 してください.
2.保管庫の施錠:盗難等防止のため必ず施錠を行い,保管庫の管理責任者が鍵の管理を行って ください.
3.保管庫および容器への表示:保管庫および容器並びに被包には,外部から明確に識別できる ように,毒物については赤地に白色で「医薬用外毒物」の文字を,劇物については白地に赤 色で「医薬用外劇物」の文字を表示してください.
薬品の保管についての一般的注意
● 化学薬品は専用の薬品戸棚または保管庫に保管してください.
● 薬品戸棚は床または壁に固定し,直射日光が当らず,温度変化の少ないところに設置してく ださい.
● 化学薬品の危険性を発火性,引火性,可燃性,爆発性,酸化性,禁水性,強酸性,腐食性,
有毒性,有害性などに分け,危険性の区分を明らかにして保管してください.
● 衝撃で爆発する可能性のある化学薬品は,なるべく低いところに置き,地震などによって落 下しないように仕切り板をつけた薬品戸棚に整理整頓して保管してください.
● 混合すると危険なものは一緒に置かないようにしてください.
● ラベルの取れたものや汚れて不明瞭になったものは直ちに新しいラベルに取りかえてくださ い.
● 薬品戸棚の付近では火気を使用しないでください.
● 購入した化学薬品等の保管状況については,薬品管理システムなどを利用し定期的な調査が 行われます.使用者は整理整頓を心掛けてください.なお,薬品保管庫の管理責任者は,定 期的に化学薬品庫の点検を行い,適正に保管・管理がされているかどうかを確認しています.
薬品を使用する場合の一般的注意
● 使用する薬品の性状,特に発火性,爆発性,毒性の有無を調べてから使用してください.
● 危険な物質を使用する時は,前もって災害の防護手段を考え,万全の準備をし,作業は2名 以上で行ってください.
● 消火器,保護具(保護眼鏡,防護面,手袋など),洗眼器,救急箱を整備しておいてください.
● 実験台とその周辺および使用する器具や薬品などを整理し,また,実験前後における清掃な ど実験環境の整備を心がけてください.
● 実験に必要な量以上の薬品は実験台に置かないでください.
● 使いかけの薬品,溶液は内容を明示し,かつ,保存方法に十分注意してください.
● 作業の内容を十分熟知のうえ従事してください.
● 消防法で定められている危険物を指定数量以上取り扱う時は,危険物取扱者免状を有してい るか,危険物取扱者免状を有している者の立ち会いのもとに行わなければなりません.
● スリッパは,火急の場合にすべったり,ぬげたりして思わぬ失敗や怪我をすることがあるの で避けてください.
● 引火性物質や発火性物質を取扱う場合には必ず消火設備が設置されていることを確認してく ださい.
● 引火性物質や有害物質を取り扱う場合には必ず換気してください.
● 薬品や思いがけない災害から身体を守るため,実験着やゴム手袋,保護眼鏡などの着用を心 がけてください.
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● 薬品による障害が発生した場合は,応急処置を講ずるとともに,医師の診断等を受けてくだ さい.
● 実験中は実験室を離れないでください.
● 実験によって生じた廃液および使用した器具の洗浄によって生じた1次,2次洗浄廃液は,
それぞれ廃液収集区分に従って分別収集してください.
● 廃液を流しに捨てることは絶対にしないでください.
9.4.3 廃液と廃棄物の種類 (1) 液体廃棄物
1.実験廃液:実験により生じた廃液および1次,2次洗浄廃液,廃油,コンプレッサードレイ ン等の廃棄は教員の指示に従ってください.
2.生活排水(トイレの水等):直接公共下水道に流されますが,定期的に各建物ごとに設けた チェックポイントおよび公共下水道接点で水質の監視が行われています.
(2) 固形廃棄物
1.有害固形廃棄物:不燃性の物品:検出器の窓等に使用されているベリリウムやベリリウム化 合物,InSb結晶,鉛,水銀温度計などの不燃性の物品は,産業廃棄物として処理しなけれ ばなりません.教員の指示に従ってください.
2.可燃性廃棄物および薬品ビン:薬品,オイル等有害物質のついた紙やウエスおよび空になっ た薬品ビンの処理についても,教員の指示に従ってください.
3.一般廃棄物:次に掲げる一般の廃棄物については,排出者は下記の区分に従って分別して廃 棄しなければなりません.
不燃物:ビン・カン飲料用の空ビン,空缶などの燃やせないゴミ,プラスチックと金属など の複合製品,鍋・フライパン等調理器具,アルミ箔製品,金属製の各種ふた,包丁やカミソ リなどの刃物・針・ピン,飲料用・食品用以外の空ビン,空缶(スプレー缶,塗料用ビンな ど)ガラス製品・鏡,白熱電球,革・合成皮革・ゴムでできているもの,配管パイプ・ビニー ルシート,飲料用ペットボトル等,金属製品,乾電池
燃やせるゴミ:紙,生ゴミ,食用油,タバコの吸殻やチューインガム,食べ物などの残り,
木屑や小さな木製品,小さな布製品,食品トレイ,ラップ・セロファン・袋,プラスチック だけでできている小さなもの等
薬品の廃液などの廃棄に関する一般的注意
● 実験廃液は収納容器の2/3を限度として貯留してください.
● 大量の廃油以外は原則として指定の収納容器に貯留してください.
● 混合時および貯留中に危険が生じることのないように,収納容器は内容物,排出者名を記し たラベルを添付するなどの処置を講じてください.
● 薬品の中には単独ではそれほど危険でないものでも,混合すると発火,爆発などを起こした り,有毒ガスを発生するものがありますので注意してください.
● 有機廃溶剤の貯留中の火災には十分注意してください.
● 貯留中のガス発生,加熱を防ぐ処置を講じてください.
● 廃液の内容が不明なものは,処理にあたって事故につながる可能性があり,処理施設の作業 員が危険にさらされることになるので,原則として処理依頼を受け付けません.
● 実験廃液処理施設では放射性物質等を含む廃液は一切処理しません.
● 試薬,薬品類の空ビン(ポリ容器も含む)は一般のゴミとして捨てないでください.