第 7 章参考文献
8.1 日常の生活と食事
8.1.1 体格指数
みなさんは自分の生活リズムに合わせてすごす機会が多くなるので,自分自身で日常生活と食事を 管理することが必要です.
一人で生活をすると,朝食を抜いたり,夜食に甘い物や脂肪の多い物を食べるなど健康管理がおろ そかになりがちです.みなさんの年齢は,身体的な発育がほぼ完了し,精神的にも肉体的にも成熟す る段階ともいえます.
さて,国民栄養調査によると,時間の経過とともに男性では年々どの年齢階層でも肥満傾向が顕著 になっています.一方,女性では高齢者では男性と同様の傾向が出ていますが,若い層では逆にやせ 傾向が目立ってきています(図8.1を参照).
自分の栄養状態を簡単に把握する指標として,次の体格指数(Body Mass Index(BMI))があります.
体格指数が18.5以上25未満のときは普通,18.5未満のときはやせており,25以上のときは肥満と 考えられます.
8.1.2 適切な栄養の摂取量とバランスが健康維持に重要
健康な人が1日に必要なエネルギーや栄養素の量のことを栄養所要量といいます.
現在,18歳から29歳までの1日のエネルギーの所要量は,生活活動強度が低い男性は2,000 kcalで 女性は1,550 kcal,やや低い男性は2,300 kcalで女性は1,800 kcal,適度の男性は2,650 kcalで女性は 2,050 kcal,高い男性は2,950 kcalで女性は2,300 kcalとされています.すなわち,体重1 kg当たり では30〜35 kcalが目安となります.
総摂取エネルギー量に占める各栄養素の割合すなわちバランスは,一般成人の場合は炭水化物が
50〜65%,脂肪が20〜25%,蛋白質が10〜15%が良いと考えられています.発育の盛んな青少年
や生活活動が活発で多量のエネルギーを必要とする人の場合は,脂肪摂取の割合は25〜35%が適当 であるとされています.
8.1.3 問題と対策
エネルギーのとりすぎと運動不足に注意
食事の洋風化に伴い,脂肪からのエネルギー摂取量が適正量の上限を上回っている人が多くなって います.さらに,交通機関の発達,職場の機械化,家庭における省力化などにより,からだを動かし
BMI = 体重[kg]
身長[m]×身長[m] (8.1.1)
第8章
て消費するエネルギーは減少する傾向になり,結果的にエネルギー過剰摂取になっています.
このようなエネルギーの過剰摂取によって肥満,心臓病,糖尿病などになる危険があります.また,
運動不足は体力を低下させるだけでなく,成長や健康維持の上からも好ましくないので,運動不足の 状態のまま摂取エネルギーを減らして収支バランスをとるより,むしろ積極的にからだを動かしたう えで,それに見合ったエネルギーを摂取して収支バランスをとることが大切です.
脂肪のとりすぎに注意
脂肪が不足すると,脳卒中や高血圧を起こしやすいなどの問題が生じ,過剰摂取が続けば,高脂血 症,心臓病,糖尿病,大腸がんなどの原因となるので注意が必要です.脂肪摂取量は増加傾向を示し ており,このままでは欧米諸国のように過剰摂取になる危険性があります.
特に,動物性の脂肪(魚類の脂肪を除く)の増加が目立ちます.植物性の油および魚類の脂肪は動 脈硬化を予防する作用があるのに対して,動物性の脂肪は逆に動脈硬化を促進する作用があるので,
量だけでなく質についても考えてとることが大切です.
塩分のとりすぎに注意
一定量の食塩をとることは生理的に必要なことですが,食塩のとり過ぎは高血圧,脳卒中,心臓病,
胃がんをおこします.近年,日本人の食塩摂取量は減少傾向を示していますが,依然として目標とす る1日10g以下を達成できていません.塩分のとりすぎを防ぐためには新鮮な素材を用いてうま味 のある料理をつくり,旬の野菜類の使用,酢やレモン,カボス,スダチなど果実の酸味の利用によっ て食塩が少なくてもおいしく食べられる工夫が必要です.汁物は中身の具を多くしたり,漬物類は一 夜漬,浅漬,酢漬などにして用いるなど調理を工夫することにより食塩を減らすことができます.ま た,塩分の多い加工食品類に対する注意も必要です.
外食や加工食品中心の食事では栄養のアンバランスがおこります
時間がないときに,あまり手をかけないですぐに食べられる加工食品やインスタント食品をいつも 食べると栄養はアンバランスになります.また,外食をする機会も多くなると思いますが,外食料理 の栄養成分をある程度理解して自己管理をする必要があります.
過度のダイエットや朝食を抜くことはやめましょう
食べ過ぎや偏食などの食習慣があるようならぜひ改善して下さい.また,健康を無視してダイエッ
図8.1. 各年齢層における平均BMIの動向(「厚生省国民栄養調査結果」より).
8.1 日常の生活と食事 71
第8章
トをする若い女性が増えています.その結果,貧血,無月経,神経性食欲不振症(拒食症)など健康 を害することになります.体が子供から大人に変わるこの時期は,十分な栄養をとることが必要です.
自分の体格指数BMIを知り,肥満でないかぎりダイエットをするのはやめましょう.
8.1.4 食生活に必要な知識
自分の食事が,どれくらいのエネルギーと栄養素を含んでいるかを知ることは(管理)栄養士の特 技であり,しろうとには非常に難しいことです.しかし,誰でも理解しやすくまとめられているのが「糖 尿病食事療法のための食品交換表:文光堂」があります(図8.2,8.3,8.4を参照).食品を6つのグ
図8.2. 6つの食品グループ(6つの表)(「糖尿病食事療法のための食品交換表:文光堂」より).
第8章 図8.3. 食品分類表.
ループ(6つの表)に分けており,表1には穀物やいもなど,表2にはくだもの,表3は魚介,肉,卵,
大豆製品,表4は牛乳,表5は油脂,表6は野菜が含まれます.同じ表に含まれる食品は,どの食品 でも含まれている栄養素の種類がほぼ同じとしています.
それぞれの食品の1単位は80 kcalの重量(g)で示されています.たとえば卵は1個(50g)が1単位,
白身の魚は1切(80g)が1単位,食パン1斤6枚切りの1枚(60g)が2単位になっています(図8.4 を参照).これらを参考にすると食事のおおよその目安を理解することができます.しかし,これもおっ くうだという人は,1日30食品を目標として食べれば,必要な栄養素をバランスよくとることがで きます.
健康づくりに適した運動としては,自分の持つ運動能力を維持ないしは増加させて,なおかつ安全 な有酸素運動であることが適当です.有酸素運動は,運動中呼吸により酸素を取り込みながらエネル
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第8章
図8.4. いろいろな食品の1単位にあたる量.
ギーを発生させて,運動能力を高めます.運動は健康保持のために継続して行うことが大切で,日 常で行う運動とエネルギー消費量も知っておくと便利です(表8.1を参照).
8.1.5 輝く将来のために
レストラン,自動販売機,グルメブーム,コンパなど,学生生活のあらゆるところに誘惑があります.
動脈硬化は10歳ごろから始まっており,学生時代の健康管理や栄養管理をしていないと,高齢期に 肥満,糖尿病,心臓病,脳卒中,がんに苦しめられる可能性が高くなります.
生活習慣病の発症に遺伝因子と食事を含む環境因子が関与しています.たとえば,糖尿病患者が 自分の家系内に見られる学生は,将来発病する可能性が高いこともあるので特に注意する必要があ ります.これまでの研究で,生活および栄養管理をきっちり行えば発症は予防することができるこ とが明らかになっています.他の生活習慣病でも同じことがいえます.
以上,バランスの取れた食生活,適度な運動,十分な休養を通した健康管理が学生生活を有意義 なものにするための基本と言えます.