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創成科目とは

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第 2 章アンケート用紙

3.4   創成科目とは

3.4.1 創成科目はデザイン科目の訳語です

 まず,「創成科目」という言葉を説明しなければなりません.広辞苑を開いてみましょう.「創」の 意味は物事をはじめることであり,創始,創造,創立,草創,独創等の熟語があります.すなわち,

これまでになかったことを初めて考え出したり創ったりすることと捉えられるでしょう.「成」はな しとげること,あるいは,しあがることであり,完成,成功,成就等のことばがあります.また,そ だつこと,そだてることでもあり,この意味からは「成長」や「育成」という単語ができます.新し く考え出した種をじっくり育て,中身を熟成させながら目的とするものを創りあげてくことを意味し ます.

 新しいものを創造する場合,知識と知恵が必要になります.「知識」とはあることがらについて体 験的に知っていること,あるいは,学問によって認識した内容を意味します.どちらかといえば,知 識は外から与えられる場合が多いでしょう.

 それに対して「知恵」は単に学問や知識の積み重ねではなく,それらを基にして,真理を求めよう とする意識,および,それを理解する能力ということができるでしょう.知恵は自分から努力して求 めなければ獲得することができません.

3.3 実習とは

第3章

 さて,自ら努力する能力をもつ技術者を育てるために,1990年代より米国でデザイン(design)

を主体とする工学教育の改革が本格化しました.日本でも平成8年度に東京大学をはじめとする8大 学工学部長懇談会の下に「工学における教育プログラムに関する検討委員会」が設置され,21世紀 に羽ばたく技術者を育成する新しい教育方法が検討されました.

 この中でも,デザイン科目が教育の大きな柱として捉えられています.ところで,「デザイン」と いえば下絵,素描,図案等を連想しますが,ここでいうデザインはそういう意味ではなく,人間の生 活に必要な製品を,その材質,機能,技術さらには美的要素をも加味して,生産・消費面から各種の 要求を検討・調整する総合的な「設計」を意味します.一般的には前者の意味が強いので,この「デ ザイン」ということばに対して「創成」という訳語が与えられました.すなわち,「創成科目」とは,

創造力・企画力・人間力を形成する科目,すなわち知恵を育成する科目です.

3.4.2 新しい講義形式

 従来の大学では,教員が学生のみなさんに対して一方的に知識を教授するというタイプの講義が主 流でした.高校の教育もそうだったのではないでしょうか.教員がきれいに黒板に整理して書いた内 容をノートに筆記し,それを何度も反復して記憶し,また,練習することによっていろいろな知識を 得てきました.いろいろな講義を聴くことによって知識の量は格段に増えていきます.また,反復す ることによって知識の度合いは確実に深まります.

 知識の量を増やし,そして,その内容を深めるということは生活や学問の基本になります.知識が なければより高度なことを学ぶ基礎を作り上げることができません.高度な社会技術を使いこなし,

また,それを用いて新しいものを創造しようとするなら,日ごと進歩する知識を常に吸収しようと努 力することが必要です.

 このように,知識が大切であることは否定しようもありません.しかし,知識が増えることだけで 新しいものを創ることができるでしょうか.知識を得るということは,すでに存在している考え方や ものを咀嚼して理解し,吸収するということです.どちらかといえば受け身的な立場ですが,ものを 創造するということは外に向かって働きかけることが基本になります.すなわち,自分自身の手足を 使い,頭を使って行動しなければ創造的な活動はできません.ですから,みなさんはまず知識だけで は新しいものを創造することはできないことを認識すべきです.

3.4.3 創成科目では何をするのか

 創成科目では,従来型の教員から学生のみなさんへの一方向的な授業形式をとりません.みなさん が自らの頭脳と手足を動かして自主的に何かを行う過程を経験することが基本になります.そのこと で動機付けられ,自分からすすんで物事に取り組み新しい考え方やものを創り出す能力,また,チー ムで協力していく能力,さらに,自分の考え方を表現する能力など,将来にわたって有用な根本的な

1その後17の大学が参加し,共同して工学教育プログラムの実施を試行しています.徳島大学工学部も,平成11年から参 加し,活発に改善に取り組んでいます.

表3.1. 創成科目の段階

年次 創成科目 目標 体験

1年次 導入教育としての創成 意欲の導入 体験する,興味をもつ 2〜3年次 創成の訓練 知識の獲得 知る,確かめる

4年次 総合創成としての卒業研究 知恵と技の創造 創る,話す,伝える

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第3章

「ちから」を育てること,すなわち,知恵を育成することを目指しています.

 このような目的で捉えられる科目の総称として「創成科目」という名前が付けられています.つま り,創成科目とは一つの解しか存在しない問題に解答させる教育ではなく,一人ひとりが問題を発見 し,知恵と情報を総動員し,新しい自分自身の解を見出す訓練を通して「自らを創成する」ことを目 的とする教育といってもよいでしょう.

3.4.4 創成科目の目標

 さて,創成科目には表3.1に示すように学年を追ってその目標が異なります.入学した時点では,

みなさんは一般社会や工学技術の知識をそれほど持ち合わせていません.これらを学び取ることと 並行して,導入教育としての創成科目を受講します.ここでは実際の機械や機器を使ったり,あるい は,一枚の紙を用いて創意工夫によりものを創ったりする体験を通して,科学を観察し技術を体験し ます.そこから自分が目指す学問への意欲が導入されればこの過程は合格です.研究や学問はまず興 味をもつことが出発点だからです.

 2年,3年次は創成活動の訓練期といってよいでしょう.蓄えられた広い知識を十分に使って実際 の現象を自分の目で確認します.漫然と現象を見てそれを容認してしまうのではなく,中身を鋭く観 察してそこに何が潜んでいるかを見抜く力を付けることが求められます.

 4年次に行われる卒業研究は,創成科目の集大成とも言えるものです.それまでに学んだ知識を総 合して,知恵と技を創造する壮大なプロジェクトです.研究テーマの目的を把握し,研究の計画・実 施,そして,結果の獲得,結果の意味づけという過程を通して,新しい考え方や新しいものを創り上 げます.

3.4.5 プレゼンテーションも重要

 創成科目では観察力や洞察力のほかに,論理的思考能力,課題解決能力,企画・計画・実行力といっ た能力を養います.また,そのようにしてできあがった考え方やものを第3者に伝える方法を学びま す.プレゼンテーションと呼びますが,自分の考えを他人に効率よく効果的に伝達できなければ社会 に貢献したことになりません.

 日本人はとくにプレゼンテーション力に欠けるといわれますが,世界をリードしていく技術者にな るためにはこの力は大変重要になります.IT(情報技術)を使って各種の情報を収集する能力も必要 になります.さらに,研究室での卒業研究を通してグループ活動力も養成されます.また,自分の専 門だけでなく他の専門領域も理解し,多くの人たちと協力しなければ解決できないような大きな問題 をはらむ時代になることを認識することが大切です.環境問題や人口問題など地球規模的な種々の問 題を認識し,それを国際的な協力の下で解決していく能力を身につけなければなりません.

3.4 創成科目とは

図3.3. 機械基礎実習:エンジンを分解してしくみを知る(a),創造基礎実習の公開発表会(b).

第3章

 工学の領域はいま限りない広がりを見せています.工学が社会全体を包含してしまう時代がそこに 到来しようとしています.そのような社会で,やわらかな思考のもとにいろいろな分野の考え方を総 合して考える力,また,社会に有用な新しい考え方やものを創り上げる力,すなわち,発想力と創造 力を育てるのが創成科目の目指すところです.

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