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第6節 社会問題研究型環境学習カリキュラム
社会問題研究上の事例として,畑召θ団ね6切騨ρ加を取り上げる。緬αθβ掬6勧幽吻 は1987〜91年にかけて,J.ウェスタウェイを中心とするチームによって開発されたイギ リスの中等地理プロジェクトである。本プロジェクトは,姫野によってはじめて紹介され た1。本節では姫野の論文に依拠し,独召お功(三一ρ加の中の環境領域2の分析を通し て,社会問題研究型環境学習カリキュラムの特質を明らかにする。
1.イギリス中等地理プロジェクト185〃θ5加磁解助の教育構想
(D目標
本プロジェクトの目標について,開発の中心であったウェスタウェイは次のように述べ ている3。
プロジェクトの哲学は,対をなす二つの原理に基づいている。一つは,地理の内容が生徒に関わっ たものであり,かつ生徒に影響を及ぼすものであること,もう一つは,生徒が積極的に学習過程に関 わることである。
プロジェクトが基づくこれらの原理の一方は,学校教科の地理が生徒の必要に役立つものであると いうことであって,地理学についての学問的関心を喚起するものであるということではない。
… 中略… プロジェクトのこれら二つの原理は,地理の学習で,問題によるアプローチを強 調することで関連づけられる。
以上のように,趣召θ3加0切騨吻では「生徒の必要性」を強く主張し,そのために
「問題によるアプローチ」を強調している。つまり,本プロジェクトの構想する地理教育 の目標は,「社会が分かり,かつ社会を捉える事ができる,そして社会を生きていくことの できる」ということと解されるという4。このような目標をもつ本プロジェクトについて,
姫野は次のように評価している5。
つまり,このような伝統的一般的地理では生徒にとって意味のある地理を達成できないわけである。
そこで,教科の性格を根本的に転換する必要が出てくる。本プロジェクトは,飽くまでも「社会が
分かる」ことを目的とし地理を手段化すること,すなわち地理によって社会の現実を教えることに 意義があると考える。
それでは,「社会が分かる」ことを目的とした地理では,どのような「問題」が取り上げ られているのだろうか。
(2)社会問題研究としての地理
姫野は,独αθβ加磁。幽吻で扱われる問題が「社会問題」であることを認め,次の ように分析している6。
社会が分かることを目標としそれを達成するには,生徒が日常生活の中で直面する,あるいはこれ から直面していくことになる「社会問題」を内容に設定する必要があるとプロジェクト・チームは 考えるのである。ゆえに,本プロジェクトの構想する教科としての地理は,「社会問題としての地 理」であるということができよう。生徒に社会をとらえさせるために社会問題を扱い,その社会問 題を地理学のアプローチによって分析するのである。
そして社会問題の中でも,本プロジェクトで具体的に取り上げられているのが,「社会的 不平等」の問題である。それでは,なぜ、加〃(碧加0肋騨吻では「社会的不平等」を 取り扱うのカ㌔姫野は次のように説明する。地理で社会問題を扱うには、地理的視点がな ければならない。「社会的不平等」は、豊かな「中核」と貧しい「周辺」という二極に分化 した空間的構造を有する。さらに「中核」と「周辺」の間に「空間的相互作用」(収奪・従 属)という空間的規則性を持つ。つまり趣μ欝面伽高論では、地理学独自の視点を
「空間」に求めることで、地理の内容を「中核一周辺」の「空間的構造」と、「収奪・従属」
という「空間的相互作用」をもつ「社会的不乎等」という「社会問題」に基づいて編成さ れているのである7。
2.カリキュラム編成
本項では,姫野の研究成果に基づき,鋤ロθ5函(油滴晦の内容構成をみていく。
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第3章これまでの環境学習カリキュラムの構成理論
(1)全体計画
趣α偲面(油幽吻の具体的な学習領域は,「環境」「都市」「経済」の3つである。
それぞれの学習には「コア」と「オプション」と設定された2つのモデュール(学習単 位)が配されている。その対応を表に重とめると【表3・6・1】のようになる。
【表3・6・1】Issues in Geographyの学習領域とモデュールならびに不平等の内容
@ 『タイトル』(内容)
オプション・モデュールー 一 冒 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 曽 卿 一 層 冒 一 冒 一 一 一 一 一 騨 一 璽 一 騨 層 畜 一 櫓 畜 ■ 一 冒 冒 一
@ 『タイトル』(内容)
学習領域
環境
1環境の本質』i外部不経済負担の不平等)
1環境問題』
i環境改変の不平等)
経済
『仕事と雇用』i国内の雇用機会の不平等)
『地球的規摸の経済』
i国家間の経済発展の不平等)
都市
『都市のパターンとプロセス』i都市内部の生活水準の不平等)
『都市と農村との繋がり』
i都市一農村問の管理機能の不平等)
姫野毅;社会問題研究としての地哩脇πθ3加6鱗顧7を手掛かりとして一,中国四国教育学会臓一曲学研究 紀要』第41巻第2部1995,p.131)を一部改変し転載,
3つの学習領域は,自然環境の広がりの中でなされる経済活動と,そのような経済活動 の結果生み出された都市内外の現象という視点から設定されていると推察される。この3 つは,いずれも生徒が日常生活の中で直接経験する領域であること,またこれら3領域で 不平等が著しくみられることが特徴として挙げられる。
これらの学習領域で取り上げられるのは,「コア・モデュール」では,イギリスを中心と して局地的な不平等が内容として選ばれている。他方,「オプション・モデュール」におい ては先進地域と後発地域の問の相互作用という不平等の世界的な趨勢を視点にし内容が選 択されている8。
(2)モデュールの内容構成の論理
本項では3つの学習領域のうち,環境問題の地理学的研究にあたる『環境の本質』と『環 境問題』の2つのモデュールについてみていく。
コア・モデュール『環境の本質』の場合一外部不経済の不平等
【表3・6・2】は,『環境の本質』と『環境問題』の中単元と小単元の見出しの一覧であ
る。
【表3・6−2】コア・モデュール『環境の本質』の学習内容と展開
中単元名 小単元名 認識内容 展開
1導入 1宇宙船 ○因果関係としての体系 枠組み
2課目ージ の提示
3システム:役立っイメージ
2生物圏 4世界の森林, ○開発の結果の不平等
5森林問題 6森林の資源
7広葉樹の国,イギリス ・都市開発と森林減少
8生きている熱帯林 ・経済開発と野生生物減少 不平等 9脅威にさらされるイギリスの林 ・産業発展と森林破壊 の 10森林を「開発する」 ・経済発展優先と森林破壊
腿
11木材資源 ○外部不経済負担の不平等
12最後の荒野 ・電源開発と森林破壊
13薪の危機 ・食糧増産と森林伐採
14化学物質の混入 ・電力需要への対応と酸性雨
15管理の疑問 ○国レベルの対策 不平等
16国の計画 への
17地球的なスケール ○世界的環境への世界的対
聯
策/個人的対策
3水圏 18水の循環 ○環境のもつ資源としての
19川は流れ,そして注ぐ 側面,災害要因として研則 不平等
20流域に水がそそぐ 面 の
21洪水の時
撰
22洪水一友,そして敵!
23流量を変える ○開発結果の不平等
24土地利用を変える
25流量を管理する ○環境破壊への対策
26水は土壌を侵食する 不平等
2フロンドンの水 への
28国の水管理 ・地域的対策
聯
29地方の水管理 ・国家的対策 30地球的な水管理 ・世界的対策
姫野毅社会問題砺究としての地理一イギリス中等地理プロジェクトー細ag加6鋼励7を手掛かりに「広島大学 大学院修士論文,1996,p.97・98【表10】, pp99・100【表11】, pp,177・183【巻末資料5】より筆者作成
E環境の本質』では,学習内容として「外部不経済負担の不平等」が設定されている。
具体的には,【表3・6・2】の中単元名と小単元名からわかるように「森林」と「河川」の
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第3章これまでの環境学習カリキュラムの構成理論
経済開発が取り上げられる。
導入部では自然環境が変化した状況が示され、「開発」を行うことと「環境破壊」との関 連性がとらえられている。続く展開部では「開発」の対象を「森林」と「河川」に分けて、
「開発」が「経済断ll益」をもたらした一方で,「環境破壊」,つまり「外部不経済負担の 不平等」をもたらしたこととを探求させている。
内容展開については,【表3−6−2】の右端の欄に示したように,次の3つの段階に分か
れる。
①不平等を把握するための枠組みの提示(小単元1〜3)
②不平等の把握(小単元4〜14と小単元18〜24)
③不平等への対策(小単元15〜17とノ」・単元25から30)
②と③の過程については,生物圏と水圏のそれぞれで展開するように小単元が配分され
ている。
以上のように,『環境の本質』では,外部不経済負担の不平等の構造と,それへの対策を とらえさせる内容構成になっている9。
オプション・モデュール『環境問題』の場合一環境改変の不平等 【表3・6−3】は,『環境問題』の中単元と小単元の見出しの一覧である。
1環境三一においては,『環境の本質』で認識した「経済活動による負の外部性」を 受けて,その「:負の外部性」を招く活動である「環境の改変」を不平等としてとらえてい る。導入部では,われわれの日常生活を構成するさまざまなもの(例えば食糧品、工業製 品、水道供給など)が環境問題と関わっていることがとらえられている。続く展開部では,
例えば食糧品の場合であれば、「食糧生産」とそれが引き起こすことがとらえられる。同 様に「都市化」や「産業化」がどのようなものかが引き続き扱われる。
終結部ではこのような外部不経済を誘発する「環境の改変」が,今後どのようになされ るかを予測させている。