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第3章 これまでの環境学習カリキュラムの構成理論

第1節 環境学習カリキュラムの類型

 横軸の「環境問題」に対する認識レベルは3段階で示した。環境問題を目に見える「環 境汚染・自然破壊現象として認識するレベル(1)」,環境問題は生態系や物質循環のシス テムに負荷がかかりすぎたために発生するという「自然システムの問題として認識するレ ベル(H)」,環境問題を南北間の経済格差や貧困,人口増加など「社会システムの問題と

して認識するレベル(皿)」である。

 次に縦軸の環境問題の解決策の志向は,3つに分類した。自己のライフスタイルを反省 し,変更することをめざす「自己反省型(i)」,社会変革の必要性を認め,社会変革に自 らが参加することをめざす「社会変革参加型(i)」,個別の環境政策についての科学的な 研究をめざす「社会工学研究型2(鋤」である。

 したがって,【表3−1−1】では,横軸を右にいくほど,環境問題の認識に広がりが生ま れ,縦軸を下にいくほど,解決策を対象化して分析することが可能な環境学習であること を示している。

【表3−1−1】環境学習の類型

「環境問題.1の認識レベル

1環境汚染・自然破壊現象 H自然システムの問題 皿社会システムの問題

解i泊己麟型決;

1−i 1−i 皿一i

1−i ■一h 皿一五

 …

?縁R会工学研究型 1

1−hi H一血 皿一逝

2.環境学習カリキュラムの類型化と事例

 【表3−1−1】に示したように,環境学習は形式的には,9つに類型化することができ

 このうち,教科としての環境学習カリキュラムは,「環境問題」の認識レベルの皿(社会 システムの問題),または,解決策の志向のii(社会工学研究型)のどちらかを含む場所に 表れる。なぜなら,1−i,1−iの場合,「環境汚1染・自然破壊現象」レベルで環境問 題を認識しつつ,「自己のライフスタイルを反省」したり,「社会変革に参加」するこ

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第3章これまでの環境学習カリキュラムの構成理論

とをめざすことになる。これは,単元レベルや特別活動,あるいは総合的な学習の時 間では想定できても,教科の年間カリキュラムとしては存在しにくい。また,H−i,

H−iの場合も,自然科学の視点から環境問題にアプローチしながら,「自己反省」や

「社会参加」のような態渡形成を最終目標にすることは考えにくい。

 以上のことから,教科・科目としでの環境学習カリキュラムを,①自己反省型(皿一 i),②社会変革参加型(皿一h),③身近な問題型(1−ii),④自然科学型(H−ii),⑤社 会問題研究型(皿一ii)の5つに類型化する。以下,典型事例を取り上げて検討する。原則

として中等学校レベルを対象とした体系的なカリキュラムについて資料を収集した結果,

次の5つのカリキュラムを各類型の典型事例として選定した。

①自己反省型・・… 和歌山県立向陽高等学校「環境科学H」3

②社:会変革参力哩…  授業書「環境政策科学」4

③身近な問題型・… アメリカ活動事例集π75

④自然科学型・・… 授業書「自然環境科学」6

⑤社会問題研究型… イギリス中等地理プロジェクトな3〃θ5加6α邸鋤ア7

 これらを【表3−1−1】環境学習の類型にあてはめると,下の表のように表すことがで

きた8。

【表3一レ2】環境学習カリキュラムの類型化と事例

「環境問題.iの認識レベル

1環境汚染・自然破壊現象 H自然システムの問題 皿社会システムの問題

 ii自己反省型解毎

「環境科学H」

決i鰍会変革二二哩 F環境政策科学」

策i

1猛『   L

のi

ェ紳一 …

「自然環境科学」

趣郷加曲譜収

注)社会工学研究型のうち「自然環境科学」と触α吻6鋼顧7は,それぞれ横軸のn,皿に重点が置かれている。

3。フレームワークによるカリキュラム分析

 それぞれのカリキュラムについての分析結果は,次節以降で詳説するので,本項では分 析フレームワークを使い,その概略を示す。分析フレームワークの視点は次の通りである。

視点1:カリキュラムのねらいは何か

視点2:「環境問題」の認識はどのレベルに達しているか

     環境汚染・自然破壊現象/自然システムの問題/社会システムの問題 視点3:どのような解決策を志向しているか

     自己反省型/社会変革参加型/社会工学研究型 視点4:問題事例はどの地域から選択されているか

     ヨーロッパ/アフリカ/アジア/オセアニア/旧ソ連/北米/中南     米/日本

視点5:問題事例ではどのような社会集団が取り上げられているか     国際機関/国民国家/自治体/地域社会/企業/市民団体・NGO

 まず,視点1では,カリキュラム開発者がどのような意図でそのカリキュラムを開発し たのかを抽出する。これにより,当該カリキュラムを通して,どのような生徒を育成しよ

うとしているかが明らかにできる。同時に,後の詳しい分析によって,カリキュラムの実 体が,実際に開発者のねらいに沿ったものになっているかどうかを検証することができる。

視点2と視点3は,すでに環境学習の類型化の指標として取り上げたものである。

 視点2の分析によって,「環境問題」をどのように認識させようとしているかが明らかに なる。この視点は段階的なものなので,場合によっては複数の項目にまたがる場合もでて

くる。

視点3では,環境学習の目標をどこに置くかを分析する。このことから,そのカリキュ ラムを通して,市民性育成にどのように関わろうとしているかが明らかにできる。

視点4で事例地域の選択の幅をみることによって,環境問題の現状をどのような空間で とらえさせようとするかが明らかになる。

視点5では,問題事例にかかわって,どのような集団が取り上げられているかを分析す る。ポーターとブラウンは,環境の場におけるアクターとして依然として国家は主要な役        一67一

第3章これまでの環境学習カリキュラムの構成理論

割を持つものの,国家以外のアクターが影響力を発揮し,強くなってきているという9。

そして,国家以外のアクターとして,国際機関,NGO,企業について分析をおこなってい る。ただ,ポーターとブラウンは,地球環境における国際環境政治の文脈でのアクターを 想定しているため,本研究では,地域における環境問題にも対応できるように,行政とし ての自治体,および地域社会を加え,NGOの項目に市民団体を含めた。

以上の分析視点をもとに,【表3−1−3】のような分析のフレームワークを作成した。

【表3−1−3】カリキュラム分析のフレームワーク

No, カリキュラム名: 対象:

開発者: 出典:

視点1:ねらい

      視点2

挙̲3

「環境問題」の認識レベル

環境汚染・自然破壊現象  自然システムの問題  社会システムの問題

蟹i自己反鯉

策i社会変革参加型

フi

志i社会工学研究型

?

事例地域の選択

ヨーロツパ アフリカ アジア オセアニア 旧ソ連 北米 中南米 日本

4

事例における社会集団の選択

国際機関 国民国家 自治体  地域仕会 企業 市民団体・NGO 5

全体評価:

Noj カリキュラム名:環境科学皿 対象:高校生 開発者:和歌山県立

向陽高等学校

出典:和歌山県立上陽高等学校『1998(平成10)年度必修専門科目 環境科 学1(自然科学系)・環境科学H(社会科学系)生徒配布資料』,1999他

視点1:ねらい 科学的な見方・考え方と広い視野をもった価櫨観の育成

(環境科学1〈自然科学系〉・H〈社会科学系〉に共通)

視点2 「環境問題」の認識レベル

視点3 湾染・自然破壊現象 自然システムの問題 社会システムの問題

藁白白翻嚢門門種白繭/}

1要因やそ白白影響についで::

自己反省型 ・人口問題南北問題「経済発展

の視点から会析する♂解決策1と..

策i .して 馬、環境政策め理解と≧も.

のi … 忙自舜のライタ客タイノレをみ}

志1 ネ織ζとを強講ずる昼;:、…:

向i社会変革参加型

i社会工学研究型 (同時履修の聯

学1の学習領域)

事例地域の選択

視点4

ヨーロッパ  アフリカ アジア  オセアニア 旧ソ連 北米  中南米 日本 和歌山市

?梼s

事例における社会集団の選択

視点5

国購関    国民国家 自治体 地或仕会

市民団体・NGO

地球サミット 容器包装リサイクル法 和歌山県 (リサイクルセンター) (天神崎を守る会)

注)括弧内は校外研修での学習 全体評価:環境問題と人口問題南北問題などの関連性を指摘している。しかし,その解決の方途とし て,先進国の人間である自己のライフスタイルの反省を求めるという価値注入に陥っており,「科学的 な見方・考え方」の育成という目標との韻鋸をきたしている。また各単元では,地元和歌山市の公害・

ゴミ問題と水俣病をのぞき,事例学習はほとんどない。全体として環境問題を一般化して学習させて おり,抽象的な概念の学習がほとんどを占めている。しかし,生徒が同時に履修する環境科学1では 自然科学的アプローチや体験学習を重視しているので,環境科学Hがもつ欠点を補完しているといえ

る。

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第3章これまでの環境学習カリキュラムの構成理論

②社会変革参加型環境学習カリキュラムー授業書「環境政策科学」

視点1:ねらい 現代資本主義下における環境問題の室吐会経済的分析を前提として,環境二二の根本的な

鰍のた畷絵騨のプロセスを翻耐こと}こよって,絵騨の主体が燗ひとりひとりで

あることを明ら掴こする。

      視点2

挙̲3

「環境問題」の認識レベル

環境汚染・自,い 自然システムの問題 社会システムの問題

劉策跨粥力哩

?o向i

(自然環境科学) ツ境簡題φ祉会経済的発祈を、

A:おごなレ、::根本解決と:ぴζ持続

Iな社会ジスデムパの移行1;(鯵…1 会変革)已…の磐要1生を導ぐよそし…

ト桂会変革を揖う…主体と、もマ::の由、鴬を促すぎ:』』

社会工学研究型

棚4 事例地域の選択

ヨーロッパ アフリカ アジア オセアニア 旧ソ連 北米 中南米 日本

元1 水俣

元2 四日市

元3 フィリピン・イン

h・インドネシア

元4 ンド・フィリピン アメリカ 中海・宍道湖・知床

繍5 事例における社会集団の選択

匡際機関 国民国家   自治体 地域社会     企業 市民団体・NGO

単元1 厚生省 水俣市・熊本県 水俣市 チッソ 相互扶助組織(水俣1

単元2 公害裁判 四日柿 公害反対運動

ス・反対運動

昭和四日市石 禔C三菱油化等 単元3 世堺銀行 ODA(日本) レイテ島,ナルマダ

k谷,スラン川流域 フ地域住民

丸紅ニチメン

単元4 世界銀行

インド敬府 島根県・鳥取県グラジヤード州 中海・宍道湖周辺ダム建設反対運動 淡水化反対運動

ネグロスの貧農層 グロスキャンペーン

全体評価:具体的事例を通して現行の社会を批判的に分析したうえで,根本的な解決策を個人の努力に 還元してしまわず,社会システムの問題に注目させて考えさせている。しかし,社会変革の重要性を強 調しており,その担い手になることを要請するという価値注入に陥っている。事伊蝿減は,アジアと日 本に偏っているものの,多様な社会集団がとりあげられている。