第 三章 現代化と会社の博弈
第二節 不正企業に対する制度の対応 1 粉飾決算および会計監査制度
2 破産事件に対する対応
中国証券市場には、ST重実156のように事実上破産の状態にある企業が少なくない。かつて
154 王学軍、「中国会社法における財務会計問題」、財会月刊、2001年第
3
期。155 劉燕、「中国会社法における法定会計監査モデルの選択について論じる」、北京大学法律ネッ ト。
156
ST重実は 2004
年度財務報告を公告したが、その数値は驚くほどであった。徳隆系に占用された資金及担保債務が多い等の原因で一株当たり
14.08
元欠損し、一株当たりの純資産は9.86
元となり、中国の証券市場での記録を突破した。同会社の資産総額は2.97
億元であり、負債は9.4
億元であり、純資産は6.50
億元であった。完全に資産が債務を賄うことができない状態で、鄭百文、猿王株式、済南軽騎等のような破産寸前の企業は多く存在し、一部の会社は債権 者により破産を申立てられているが、債権者との和解、企業再編を通して解決をはかった。
しかし、破産法、企業の清算制度が整備されていない状況の下で、債務を逃れるために破 産を偽る事件も存在していた。
①破産法の状況
―中国では破産制度が整備されていない。1986 年 12 月 2 日に全国人民大会常務委員会の第 6 期第 18 回の会議で審議を通った「企業破産法(試行)」は、その適用範囲が狭く、人民所 有制企業のみにて適用された。全国人民大会第7期第 4 回会議で通した 1991 年 4 月 9 日に
「民事訴訟法」第 19 章で「企業法人破産債務返済手続き」において企業法人の破産問題に ついて規定した。しかし、八つの条文しかなく、上場会社のような複雑な破産に適用する ことは難かった。
新「企業破産法」は上場会社を含む各種の企業に適用されるが、1994 年から 12 年間かけ て 2006 年にいよいよと採択され、2007 年の 6 月より正式に施行された。これほど長い期間 をかけた立法は中々世界のどこにもないといわれている。今後のその実行性については注 目するところである。
― 一般の会社と比べて上場会社の破産はその特殊性をもっている。上場会社は一般の企 業と違って、その株式構造において一部また全てが流通株である可能性がある。その破産 は株主の利益、取引に確実に影響し、上場会社が破産すると、持分は返済の順序に含まれ ず、これは直接社会の公衆の利益と社会の安定に影響すると判断したので上場企業の破産 を極力克服しようとした。
―特に大型企業に対しては、破産を免れ、できれば和解或いは再編の方式を通して救う方 針を講じた。
中国国有資産委員会の統計によると、2004 年 4 月に全国には企業の閉鎖と破産案件が 3,377 件あり、国有銀行の不良債権と金融資産管理会社の債権損失は 2,238 億元に達し、破 産に関わる安置従業員が 620 万人であり、欠損金が 1,341 億元であった。そして、中央政 府からの補助金が 493 億元に達した。中国の国有企業のこれらの特殊的問題に基づいて、
草案では「国務院が規定した期限と範囲内において、国有企業に対し破産を実施した場合、
国務院の関連規定による。期限の満了後、あらゆる国有企業の破産は完全に法律が規定し た原則により執行するものとする」と規定した。
しかし、破産の対象となっている 2,000 社の国有企業は 10 万社くらいの中国の国有企業 の総数に比べるとわずかの数字であると国は判断した。多年間の市場経済の発展により、
国有企業が政策的破産から法による破産に向かっているのは中国の市場経済地位の確立を 意味しているといわれている。
既に「破産」だといえるのではないか。
実際、1994 年から起草した新破産法は、国有企業改革の問題が解決できていないため審 議を通らなかった。そして、大勢の国有企業は、法律の空白を利用して「偽破産・真の債 務逃れ」を行い、一時「破産法」が国有企業「逃債法」であるといわれた時期もあった。
これらの状況に基づいて、2002 年に最高人民法院は、「企業の破産案件における若干の問題 に関する最高人民法院の規定」を公布して対応していた。
ここで、破産法、会社法の清算制度が整備されていない状況の下で生じた典型例を幾つ か取上げて、実際企業の現代化、健全性をはかる道はまだ程遠い問題点を指摘しようとす る。
②債務逃れ・地方政府圏銭―偽破産
157ここで、地方政府と企業ぐるみで倒産を偽った、四川省中江県の偽破産事件を紹介する ことにする。四川省中江県政府および経営陣は国有企業の資産を分けるために、わざと企 業を破産させてしまった事件が起こった。
四川省中江県シルク会社は四川省政府より「1999 年四川貿易企業最大規模 200 強」、「1999 年四川貿易企業業績 50 強」、「2000 年四川貿易企業業績 30 強」企業として表彰され、1999 年には 205.9 万元の利益を上げ、2000 年の 11 月までの利益が 106.71 万元となっているが、
2000 年 12 月 14 日に突然破産した。
中江県委員会、政府、地方の人民法院が違法操作を行い、破産の名義で国有銀行におけ る債務を逃れ、国有資産の流失を招いた事件である。中江県シルク会社は 1982 年に登記を して成立した国有商業貿易企業であり、主にカイコを収集・販売し、特売権を有して中江 県の有名企業となった。1995 年から 1999 年までは営利状態であり、経営状況も良好だった という。1995 年から 2000 年までは地方の所得税、農業特別税合計 1,334.4 万元納付し、1998 年から 1999 年までメインバンクである四川省農業銀行より特級及び一級の信用企業として 評価され、中国銀行四川支店よりも AA 級信用企業だと評価された。破産宣告の前、企業の 帳簿上の資産は 11,964 万元であり、負債は 8,676.57 万元、純資産は 3,887.58 万元であり、
資産負債率は 72.52%であった。期限を超えた貸付金がなく、銀行利息の支払いを遅滞した こともなく、期限到来で未返済の債務というのは、ただ中江県財務局から借り入れた 100 万元の借金のみであった。破産時、企業の帳簿上の貨幣の金額は 79.2 万元であり、全て銀 行に預けてあった。なお、1,215.5 万元の棚卸資産があった。これらの状況からみると、中 江県シルク会社の経営、資産状況は良好であり、資産をもって十分債務を返済することが でき、破産の条件に適合していなかった。同社は経営状況がよく債務超過という破産要件 にも適合していないが、こういう業績が良好である会社を中江県経済委員会、県財政局お よび会社の経営陣が密かに共謀して手会社の資金を移転させ、会計事務担当者に連日残業 をさせて偽帳簿を作成したという。そこで、いよいよ経営が良好であった企業が帳簿上は
「負債だらけ」、「重大な欠損」、「債務超過」の状態に至った。そして、破産申立をし
157
http://www.chinacourt.org/public/detail.php?id=6020、
「偽破産に対する思考」、中国法院ネ ット、2002年7
月2
日報道参照。た県財政局は、破産申立の一ヶ月の間に中江県シルク会社に 9 回も行って計 1582.86 万元 を何らかの名目でもって行ったという。これが、財政局の本当の狙いであった。今回の破 産事件で国はどれくらい損失しているかというと、農業銀行中江県支店の債権が 3149 万元、
県農村信用社の債権が 2280.36 万元であるが、中江県シルク会社の偽破産により回収でき なかった。銀行は国に属し、財政は県に属している。今回の偽破産で国は 5,000 万元損失 し、県財政局は 1500 万元稼ぎ、地方政府が儲かったのである。
しかし、政府の干渉で破産することになった。法律上できないことは、権力の力を借り るしかなかった。この事件では、中江県委員会、県政府は破産条件に適合していない企業 に対して破産を実施した。
2000 年度の上半期から中江県委員会、県政府、県裁判所は中江県シルク企業の破産問題 について企画したという。こうして地方政府が参与した偽破産は数多く現れた。
③株式社債化?
1996 年に吉林省の吉諾尔冷蔵庫家電製品会社(以下「吉諾尔」と略す)による不思議な 株式社債化の現象が生じた158。同社が上場した 1996 年に大勢の人々が当該会社の株式を購 入しようとして手続きを行うため会社を尋ねたところ、会社の前には公告が貼られた。「株 主総会および関連部門の認可を経て、内部従業員持株 3880 万株の内 76%即ち 2948 万元を 1:1の額面価格で二年を期日として 14%の利率をもって社債に転換する」と書いてあっ た。転換社債は常にあるが、株式の社債化はかつてなかった。今回は紙一重で 2948 万株の 従業員持株社債に転換し、一般株主の適法的な権利を侵害した。怒っている一般株主に対 し、吉諾尔会社はこう解釈した。「吉諾尔が取得した上場クォータは 1600 万元であるが、
同金額を超過した部分に対しては社債に転化しないと上場できなくなる。株式を社債に転 換することができるということは、社債を株式に更に転換できると理解していい」ことで あると解釈した。実際、吉諾尔は破産状況に至った。国内で最も大きい破産案件の一つで あった。当該グループの破産報告によると、冷蔵庫の年生産量が 30 万台であった企業が、
銀行に合計 60182 万元の貸し倒れ債務者となった。帳簿上の総資産は 74984 万元とし、欠 損、売掛金などの要素を除いて、実際の総資産は 46194 万元、負債総額は 83468 万元とし た。帳簿の資産負債率は、111.31%、実際の資産負債率が 180.69%、吉林市の大欠損企業 となった。その後、吉諾尔はその保有している 1911 万の国有株を吉林万徳莱通信設備有限 会社に譲渡することに協議し、譲渡金額は 1824.62 万元であり、同譲渡株式は吉諾尔の 30.99%を占めている。1999 年の 4 月 30 日に、再編した吉諾尔会社は「吉林中信科学技術 発展株式有限会社」に改名し、上場銘柄を「中信科技」と称する。協議により、吉諾尔会 社は冷蔵庫生産に関する資産および負債をともに吉諾尔集団に譲渡し、部分的残余資産を 万徳莱と置き換え、会社の主要な業務は冷蔵庫から通信情報製品に変わった。株式会社の 元の債務の中で、社債化した 5000 万株が株式会社の以外にものにより継続保有されている
158 証券導報(新聞)、2005年