1993 年会社法の実施後、現在まで中国では 1999 年の若干の改正、2005 年の抜本的な改 正作業があった。その改正の過程、内容をみると、資本市場、株式会社法制について、確 実に実務も理論も現代化へ向けて成熟して行くように思われる。
1 1999 年の会社法改正
1993 年の中国会社法は、原則性が強く、執行性がなく、法律の空白が多いという問題を 抱え、実際の応用性がなかった。これらの問題に照らして、1999 年 12 月 25 日に会社法に ついて改正を行ったが、三箇所しか改正されなかった。
改正内容:無形資産の出資比率は 20%を超えてはならないという条文を、ハイテク技術 を営む企業はこの限りではないと規定し、国有独資会社の監査役会の増設とハイテク技術 に関する株式有限会社の新株発行と株式の上場申請の条件について規定した。しかし、実 務においての多くの問題を対象にした修正は行われなかった。その後、2003 年の 11 月に最 高人民法院は「会社紛争案件の審理の若干問題に関する規定(意見徴収稿)」を公布し、実 践において起きた問題について回答をしたが、会社法の改正が全人代常務委員会の正式な 議題となったため、当該規定は結局公布されなかったという。
2004 年 7 月 1 日に実施した「中華人民共和国行政許可法」は正式に効力を生じ、「行政許 可法」の規定により 2004 年 8 月に会社法について更に改正したが、只一つの条文「株券の 発行においてプレミアム発行を行った場合、国務院証券管理部門の認可を得なければなら ない。」という規定を削除しただけであった。
1999 年改正も 2004 年改正もテクニック的な改正に過ぎなかった。1999 年改正が本格的 に行われなかったのは、前述したように国有企業改革に有益か否かが当時法律改正作業の 基準だったことが原因であるといわれている。
2 2005 年新会社法の公布
2003 年 3 月に行われた第十回全人代第一回と 2004 年の第二回会議において、数百名の代 表が多岐にわたる議案を提出したが、即時「会社法」を改正する提案もあった。その後、
会社法の改正は第十回全人代常務委員会の立法計画に入った。2004 年 7 月 5 日に、国務院 は改正草案の起草を終え、意見聴衆稿を関連部門に通達した。2004 年 12 月 15 日に国務院 常務委員会は「中華人民共和国会社法(草案)」を採択し、全人代常務委員会に提出して、
三回にわたる審議を経て、2005 年 10 月 27 日に全人代第十期第十八回会議で会社法が採択 された。胡錦涛主席が第 42 号書類に署名かつ公布し、2006 年 1 月 1 日より施行された。
2005 年会社法は、合計 13 章 219 条(旧会社法は 240 条、条文数自体は減っている)から
なり、その内容は、総則、有限責任会社の設立と組織機構、有限責任会社の持分譲渡、株 式有限会社の設立と組織機構、株式有限会社の株式発行と譲渡、会社の取締役、監査役、
高級管理人員の資格と義務、会社の債券、会社の財務・会計、合併・分立、増資・減資、
会社の解散と清算、外国会社の分支機構、法律責任と附則により構成されている。
新会社法では旧会社法 240 ヶ条の条文中、224 ヶ条に対し削除、増加、語句の書き換えを 行った。そして、新たに増加した条文が 41 ヶ条、削除した条文が 46 ヶ条、修正を加えた のが 137 ヶ条となる。今回の改正においては重要な制度導入および新たな制度設計が行わ れたのは事実である。現在、国中が当新会社法の実施により、今後現代化が確実に定着で きることを期待しているところである。下記において、重要な変化について紹介する。
―新会社法の変化点
①最低資本金について
起業を奨励し、経済発展の促進を目的として、改正会社法は、最低資本金を大幅に下げ ており、株主・社員による出資財産の範囲を拡大した。
有限会社の最低資本金を 10 万元、5 万元から一律 3 万元に下げ、株式会社の資本金を 1,000 万元から 500 万元に下げた。同数字の根拠は何かというと決まった公式はないという。た だ、具体的、客観的な根拠はもっていないが、一般的な立法根拠はもっていた。例えば、
近時一部の地域では最低資本金を 5 万元に下げた地方もあり、なお、中国は地域間の貧富 の差が存在し、5 万元は北京、上海のような地域では比較的低く、3 万元は西部地域にとっ ては合理的な数字であるといえる。他に、例えば会社を設立する場合、基本的に 2、3 万元 は必要であると考えたからである。
しかし、最低資本金を下げた状態で、虚偽の出資行為および資本の払い戻し等の現象が 起こったら、債権者の利益と取引の安全に重大な損害を与えることが懸念される。これに 対し、厳格な会計監査制度および出資検査制度の対応が必要となるであろう。
②分割払込制度
新会社法では、分割払込制度が新設された。払込期日を最長二年(投資会社は五年)と しているが、この期間中に、実際に払い込んだ金額と登記資本額の差額が生じるおそれが ある。、払込期日間において各株主の出資額と時間の差が生じ、それによって、実際の出資 比率と契約約定の出資比率の差が生じ得る。外国紙幣で出資した場合は、為替レートリス クも生じる恐れがあり、財務会計上の処理の対応もまだできていないのである。
③授権資本制度
会社法の改正過程において、会社法の資本主義原則に対する学者らの意見分岐は激しか った。一つ目は、中国会社法は厳格に法定資本制度を維持すべきであるとする主張である。
同見解によると、法定資本制度は、会社の資本確定、会社の債権者の保護に資すると主張
した。これに対し、二つ目の主張としては、中国会社法は厳格な法定資本制度を廃止し、
授権資本制度を導入しなければならないとした見解である。同見解によると、授権資本制 度は市場経済の発展に最大限に適応し、投資者の投資積極性を刺激することができると主 張する。三つ目としては、中国会社法は折衷型の授権資本制度を導入しなければならない という主張である。折衷型をとる場合、法定資本制度と授権資本制度のメリットを吸収し、
資本主義原則の欠点を克服することができると主張した。
その結果、最終的に中国会社法は、折衷型授権資本制度(新会社法 26 条―有限会社の場 合、81 条―株式会社の場合)を導入した。折衷型を導入した理由としては:中国は現在社 会的に信義則を回復・構築する段階に処しており、こういう段階で授権資本制度を採用す るとマイナス効果が生じる恐れがあると考えた。尚、既に構築した会社の資本制度、即ち、
会計照合、財務報告および刑法上規定した資本払戻罪等も授権資本制度の導入により徹底 的に調整しなければならない場面になり、立法のコストが高くなるのみならず、複雑かつ 混乱状態を招くことになる可能性すらあり、資本を核心として構築した統治体系も揺らぐ ことになる可能性があると判断した。しかし、伝統的な法定資本制度の場合、慣例上会社 の定款および営業許可証に会社の資本額を明示し、社会的・取引において会社の安全性を 示すとされる資本の実力の真実性は信用できず、取引のリスク防止において、資産負債表、
損益表およびキャッシュフローの審査に偏ることになる。、また、会社設立の初期段階に全 ての資金を預け入れることは、資金の浪費を招き、高い資本金の設定により見せ金現象等 が生じる可能性すら十分あり得る。
④会社機関に関する整備
新会社法は、会社統治機構について整備したといわれている。 1993 年法は株主総会中 心主義の機関体制をとっているが、2005 年法は同体制を廃止せず、1993 年体制を維持し、
新会社法 28 条と 100 条において、会社の重大な経営事項についての管理権を依然として株 主総会に授権し、取締役会を株主総会決議の執行機関として位置づけている。
社員総会と取締役会制度の整備を目的とし、社員総会、取締役会の招集と議事手続きに ついて充分な規定を設けており、監査役会の職権を増加し、監査役会会議制度を整備し、
監査役会の役割を強化した。なお、上場会社は独立取締役を設けることについて規定を増 加し、取締役と高級管理人員の忠実と勤勉義務および義務違反をした場合の責任について 明確に規定した。これらの修正と補充は、会社の規範的運営と効果的な管理を保障し、国 有企業の会社化を更に促進することができると認識されていた。これに関する具体的な規 定については、現行会社法の機関問題を取上げる時に、既に言及しているので、ここでは 省略する。
④一人有限会社
新会社法は 58 条から 68 条において、一人有限会社の規定を設けている。一人有限会社