• 検索結果がありません。

企業再編による圏銭 139

ドキュメント内 chugoku ni okeru kabushiki gaisha hosei no gendaika (ページ 95-102)

第 三章 現代化と会社の博弈

第一節 企業による現代化の利用 1 新株発行による圏銭 121

2 企業再編による圏銭 139

企業再編法制がまだ整備されていない中国で、「株式交換」、「スピン・オフ」の事例を創 出した TCL グループは、中国で初めて最先端の組織変更手段を使って、グループごとの上 場を実現したと称賛されているが、実際 TCL グループが行った「株式交換」と「スピン・

オフ」は、結合企業法制、事業分割におけるダイナミックな企業再編方策とは程遠いもの であった。

ただ、企業が財務困難を解決するために、証券市場で資金調達しようとして、現行政策 と潮流をうまく利用し、経営陣の内部紛争におけるグループ上場派と分割上場派、二派を 同時に満足させる解決策として、投資銀行の企画により企業再編手段としての「株式交換」

と「スピン・オフ」がほぼ同時に行われただけであった。

法制度が明確でない限り、企業と政府は法政策の解釈をもって、いくらでも馴れ合い行 動を行うことができるのではないかと思う。

親子会社関係を簡易かつ円滑に形成するために、活用される「株式交換」、事業を効率的 に経営するための「スピン・オフ」制度が、今後中国に定着することになると思うが、企 業再編法制の整備の一環としての立法化急務とすることが望ましいところであり、TCL グル ープが企業再編法制にモデルを提供し、先駆性的な意義をもたらしたことは評価すべきで あると思う。

―TCLグループの株式交換事例

株式交換過程

TCLグループ140は、1981年に設立され、家電製品を製造する企業から成長した有名な企 業である。今回TCLグループは、グループ傘下の子会社かつ上場会社であるTCL通信設備有 限公司の株主と株式交換を行ってグループごとの上場を実現して、「TCL新モデル」といわ れるようになった。即ち、TCL通信設備有限公司の流通株を保有している株主は一定の株式 交換比率(比率の算定式=TCL移動通信の流通株の交換価格21.15元/TCLグループIPO価格 である。当該比率141は、今回の吸収合併におけるTCL移動通信の流通株が一株当たり取得可 能なTCLグループの流通株の数に相当する。TCLグループのIPO価格は4.26元/株であり、比 率は4.96であった。)でTCLグループが発行する流通株と交換することとし、一株当たり 21.15元という交換価格は、TCLグループとTCL通信有限公司が協議により確定した価格であ る。TCLグループが同株式交換で発行した株式数は、TCL通信設備有限公司で流通株主全員

139 拙稿、早稲田大学法学大学院、法研論集

111

号「TCLの企業再編新モデル」を参照。

140

TCL集団株式有限公司ホームページ参照。http://www.tcl.com/china/group/brief.jsp

141 中国国際金融有限公司作成「TCL集団財務顧問報告」4-2-10頁以下参照。

が保有していた流通株の総数に上記の比率を乗じた整数とした。そこで、TCLグループが株 式交換で発行した株式総数は404,395,944株となる。株式交換の方法としては、株式交換登 記日最終時にTCL通信設備有限公司の株主名簿に記載されている株主を基準に、株式交換比 率によりTCL通信設備有限公司の株主にTCLグループの流通株に交換させる方法をとった。

TCL通信設備有限公司の端株を有している株主に対しては、小数点以下の端数の大きさによ って序列させ、実際の株式交換数と計画した発行株式数が一致するまで、端株主に一株ず つ与えることにし、端数が同じである端株が余る場合は、コンピュータ抽選により決め、

発行することにした。株式交換の登記日は、TCLグループの目論見書、TCLグループとTCL 通信設備有限公司が合併の報告をした翌日―2004年1月6日にした。同時に、TCLグループは、

人民元1元の価格で子会社TCL通信設備有限公司から25%の株式を譲渡された。そして譲渡 された株券をTCL通信設備有限公司でTCLグループが保有していた31.7%の株券と一緒に消 却し、TCL通信設備株式有限公司は上場を廃止し、TCLグループに吸収合併され、TCLグルー プがTCL通信の資産、負債および株主権利に対して責任をもつことにし、TCL通信有限公司 は消滅することになった。本株式交換142は、単純に一株における純資産を基に行われたの ではなく、両会社の価値について充分評価を行った上で、営利能力、双方株主の利益バラ ンス等の要素を総合的に考慮して株式交換の比率が市場化されることを実現したという。

◎株式交換の企画

実は、TCL グループはグループごとの上場を実現するために、その企画を中国国際金融有 限公司という投資銀行に委託した。TCL グループの委託を受けた中国国際金融有限公司は、

はじめから株式交換を活用しようと思っていた訳ではなかった。

最初の方策143として①まずグループごとに上場させ、その後また一定の方式で傘下に所 属していた会社を消滅させる方式であったが、この方式の場合、一定の期間内に一つの資 産をもって二つの会社を上場させることになるため、証券監督管理部門の認可を得ること が難しくなると中金公司は判断した。証券監督管理部門では、TCLグループが上場する場合、

TCL通信設備株式有限公司は市場から撤退しなければならないと要求していた。そこで、中 国国際金融公司は次の方策を工夫した。②子会社によるグループ企業の買収、即ち、TCL通 信設備株式有限公司は撤退せず、TCLグループに増資することによって、グループの資産を 購入し、最終的にTCLグループ全資産の上場を実現することであるが、この方式だと、上場 子会社とTCLグループの間における大量の関連取引を招く恐れがあった。そうすると、利益 相反取引の防止策としてのグループ全体の上場という名目はなくなる。また、1997 年以来、

TCLグループの所在地広東省恵州市地方政府とTCLグループは経営協定を結び、企業規模を 発展させるとともに、経営陣にインセンティブを与えることにした。そこで、TCLグループ 内部経営陣の持株率は 25%に達し、当該権利と利益はこの方式だと実現できなくなるので

142

http://finance.tom.com/1008 /1012/200435-45186.html

143 財経時報

2004

2

21

日報道「TCLグループ上場の内部事情開示(原語:「TCL集団 上市内情首度披露」)」

ある。更に、政策では、上場企業の毎年の新株発行による資金調達額は、前年度の純資産 値を超えてはならないと規定していた。2002 年末、TCL通信設備株式有限公司の純資産は 4.3 億元であり、同期にTCLグループの総資産は 147.9 億元に達し、純資産は 46 億元であっ た。そこで結論としては、この方式だと時間がかかり、グループ企業を拡大する計画の実 現は益々遅れてしまう恐れがあった。

なお、TCL グループが発行するのは非流通株であるため、TCL 通信設備株式有限公司の流 通株の比率は低くなり、流通株が最低 15%の比率に達しなければならないとする規準を満 たすことができなくなる。

そこで、中金公司が企業の資金調達の目的を達成し、審査認可部門による許可を得られ るようにした方策が「株式交換」であった144

こうした経緯を踏まえて TCL グループは、2004 年1月 30 日に深圳市場に登場したが、最 初の相場が 6.88 元から始まり、市場予測価格の 6 元を超えており、当日最高価格は 7.84 元迄に至った。また上場の初日にその増加幅は 80%に上がり、株価は9元近くなっている。

中国国際金融有限公司の企画により、TCL グループは「法規制の制限」を避けてグループ ごとの上場を実現したのは、法制度の抜け穴と現行の政策規制・潮流をうまく利用したか らである。

◎会社分割(スピン・オフ)

株式交換を行い、グループごとの上場を実現して注目されていたTCLグループは、2004年 4月7日にTCLグループ内のTCL香港国際持株公司を分割し、移動通信事業部門を完全にスピ ン・オフする計画を公表した。今回TCLグループは、主たる事業を専門化するという名目で、

スピン・オフの戦略をとった。今後3~5年内に、カラーテレビ事業と移動電話事業におけ るグローバル市場進出の目的で同部門に対するスピン・オフを行い、フランスの有名なテ レビメーカーと移動電話メーカーとをそれぞれ合併する戦略実現のためであると公表した。

2004年1月28日にTCLグループ、TCL香港国際持株有限公司とフランスのThomsonグループ は合併契約を締結した。TCL国際持株有限公司はThomsonと合弁企業を設立して世界最大の カラーテレビ製造企業にしようとし、同計画を実現するために、TCLグループはTCL香港国 際持株有限公司をTCLグループから分離させるという。

一方、TCLグループは、移動通信事業部門を海外で独立に上場させる計画を立て、投資者 らには事情が分からない中国、香港、BVI、ケイマン島等の地区におよぶ複雑な再編を行っ た。今回の分割計画が公表されてから、世論ではすぐこれは事業分割の目的ではなく、明 らかに資金調達しようとする手段だと判断した。

2004年の5月15日にTCLグループは2003年度株主総会を開いて、「TCL移動電話事業の分割 かつ国外上場に関する方案」を審議した。当該方案は4月6日に取締役会の決議を得ており、

144 財経時報

2004

2

21

日報道参照。

ドキュメント内 chugoku ni okeru kabushiki gaisha hosei no gendaika (ページ 95-102)